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ギリシャ神話やローマ神話には、ヒドラ(ハイドラ)という蛇の姿をした怪物が登場する。レルナイアヒドラにちなんで名付けられたそれは多くの頭をもち、その息を吸うだけで人間が絶命するほどの猛毒があった。
しかも不死という正真正銘の怪物だ。
じつは現実にもヒドラという生物がいる。世界中の淡水に住む、ヒドロ虫綱花クラゲ目ヒドラ科に分類される無脊椎動物で、体長1センチ程度の小さな生き物だ。
神話の蛇を連想させる触手を生やしているが、そこまで恐ろしい生き物ではない。だが不死という点では神話顔負けだ。切っても切っても元に戻る驚異の再生能力は、怪物と言っても差し支えないかもしれない。
百聞は一見にしかず。この動画を見て、その不思議な生態に迫ってみよう。
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The Undying Hydra: A Freshwater Mini-Monster That Defies Aging | Deep Look【老化に逆らう淡水のミニモンスター、不死の能力を持つヒドラ】
地球上の生命体における「絶対」は死のみである。どんな生命もいつか死ぬ。だが 例外もある。
それがヒドラだ。
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その名はギリシャ神話の首がたくさんある怪物「ヒドラ」にちなんだもの。その首を1本切り落とせば 首が2本生えてくるという。
そして現実のヒドラの生命力は神話に匹敵する。
ヒドラはクラゲの親戚だ なんか似てない?でもヒドラは淡水の生き物だ。
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体は空洞の柱のようで 壁の厚みは細胞たった2つ分しかない。頭は口の周りに生えた触手だけ 目も脳もない。大きさは米粒程度だ。
お腹が空くと触手を伸ばして 獲物を捕まえる。極小のモリでミジンコをひっかけて 神経毒でまひさせ、あとは丸呑みだ。
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その栄養でヒドラはさらに増える。
ほら見て!脇腹からクローンが誕生しているよ。
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ヒドラは有性生殖もするが 大抵は自分自身のクローンをつくる。
ヒドラは常に体を再生させており 20日で全細胞が入れ替わる。
そんなことができるのも細胞の半分が幹細胞だから 幹細胞の中のどんな細胞にも発達できる。人間の場合 幹細胞はほんの少ししかない。しかも時間が経つと劣化する。だから私たちは歳をとる。
でもヒドラは基本的に永遠にほぼ完璧な幹細胞をコピーできる。
これを不老化という 生物学的な不死のことだ。
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この幹細胞のおかげで ヒドラはどんな傷からも回復する。それではヒドラをナイフでカットしてみよう。さあ行くよ!
体がない? 心配なし。頭がない? 問題なし。
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切れ端に幹細胞があるかぎり すぐ再生する。
数日で 頭から体が生える
体には新しい頭ができた!
どちらもすぐに元通りだ 多少の信用問題は残るかもだけど。
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To test the limits of their ability to recover, researchers came up with an experiment.
再生能力の限界を探るため ちょっとした実験が行われた。こちらのヒドラは遺伝改変によって 紫外線をあびると外側の細胞が紫に 内側が緑に光る 。
こうしたヒドラをぐちゃぐちゃに混ぜて放置してみる。
すると、すぐに再編成が開始される。
紫の外側の細胞は外に移動し、内側の細胞は内へと戻る。
さらに内部の細胞が捨てられて 空洞が再建される。
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幹細胞の分裂・分化が始まり 残りの部分が再生され、まもなく頭部の形成が開始される。 ときおり小さな頭同士が頭部の座をめぐって競争までする。
慌ただしい数日が過ぎると 混ぜられたはずの細胞はお馴染みの姿に元通りだ
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この再生能力を活かせば 人間の老化防止や 内臓の再生治療も可能になるのではと期待されている
小さなヒドラが 伝説の若返りの泉のヒントになることだってあるかもしれない
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Hydra: Stretchy, Speedy, & Probably Immortal
/ written by hiroching / edited by parumo
追記(2021/05/02)誤字を訂正して再送します。
記事全文はこちら:驚異の再生能力を持ちバラバラになっても永遠を生きるヒドラ(水中生物) https://karapaia.com/archives/52301563.html
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