雷に強力な空気清浄効果があることが判明、温室効果ガスを除去

photo by Pixabay
 雷は怖い。ぴかっと稲光が閃き、ゴロゴロと凄まじい音が鳴り響くと、思わずおへそを押さえてしまうかもしれない。


 実際に落雷で命を失った人の話もあるし、自然が下す鉄槌のように思えるが、それでも地上に達する雷はほんの一部なのだそうだ。

 かわりに、多くの雷は雲の中でいくつもの化学反応を生じさせ、そのおかげで大気中に含まれるメタンや一酸化炭素といった温室効果ガスを除去し、空気をきれいにしてくれるという。そしてその効果はこれまで考えられていた以上にずっと大きなものかもしれないそうだ。

【雷の空気清浄効果】
 雷は大気に含まれる窒素分子と酸素分子を分解し、「ヒドロキシルラジカル(OH)」や「ヒドロペルオキシルラジカル(HO2)」といった化学物質ををつくり出す。

 雷に空気清浄機能があるのは、これらが大気中に含まれるメタンや一酸化炭素といった温室効果ガスを除去してくれるからだ。

 だが目に見える雷だけではない。『Science』(4月29日付)と『Journal of Geophysical Research: Atmospheres』(4月29日付)に掲載された研究によれば、目に見えない微弱な雷であってもそれらが大量につくられているのだという。
[画像を見る]
photo by Pixabay
【微弱な雷でも大きな空気清浄効果】
 2012年に計測された大気のデータを調べていた米ペンシルベニア州立大学の気象学者ウィリアム・ブリュヌ氏は、まず計測機器の故障を疑ったという。

 そのデータは、NASAが飛ばした飛行機が、コロラド州とオクラホマ州の上空にただよう嵐雲から集めたものだ。奇妙なことに、データが指し示すOHとHO2はあまりにも大量だった。

 ブリュヌ氏らが混乱したのは、大量のOHとHO2が記録されていながら、飛行機や地上から雷が観測されていなかったことだ。

 はっきり目に見える雷が発生するには、オゾンや酸化窒素が必要になる。
だが、周辺にそれらがあったというデータは検出されていない。

 しかし実験の結果、目に見える雷よりもずっとエネルギーが少ない微弱な電流であっても、おなじ化学物質がつくられることが明らかになった。

 データにはまだ不確かな部分も多いという。ごく限られた地域を、ごく限られた期間、観測しただけのものに過ぎないからだ。

 しかし試算によれば、雷によって生成されるOHは、世界中の大気酸化の2~16%を引き起こしているそうだ。

 しかしこうした化学反応は、現在の大気モデルに組み込まれていない。
[画像を見る]
credit:Jena Jenkins, Penn State
【雷は想定以上に地球の空気清浄に役立っている】
 今回、雷に強力な空気清浄効果があることが確認された。今後のステップは、オクラホマ州とコロラド州以外の場所でも計測を進めることであるそうだ。

 「雷をともなう嵐のほとんどは熱帯で発生します。高原と熱帯の嵐では構造が異なります。もっと飛行機で測定を行い、不確かな部分を解明する必要があるのは明らかです」と、ブリュヌ氏は話す。

 温暖化が進むにつれて、雷や落雷は増加するだろうと考えられている。
しかしそれは、これまで研究者が想定していた以上に、大気中に含まれる温室効果ガスを除去してくれているのかもしれない。

References:Lightning and subvisible discharges produce molecules that clean the atmosphere/ written by hiroching / edited by parumo

追記:(2021/05/17)本文を一部訂正して再送します。

記事全文はこちら:雷に強力な空気清浄効果があることが判明、温室効果ガスを除去 https://karapaia.com/archives/52301920.html
編集部おすすめ