爆発炎上したドイツの飛行船「ヒンデンブルク号の悲劇」の謎に迫る新たな映像が公開される

 1937年5月6日、アメリカ・ニュージャージー州レイクハーストで、ドイツの硬式飛行船ヒンデンブルク号が爆発・炎上して墜落した。今から84年前のことだ。


 事故発生当時は、浮揚のための水素ガスが引火したことが原因だと考えられた。だが、その後の検証から、飛行船の外装に蓄積された静電気のせいで放電が起こり、発火・炎上したことが原因ではないかとされ、現在ではこちらの説のほうが有力だ。

 最近になって、この爆発事故をべつの角度から撮影した新たな動画が発見され、アメリカPBS(公共放送サービス)のNOVAテレビが、事故原因の手がかりになるのではとした新しいドキュメンタリー番組を制作した。

【なぜ爆発したのか?ヒンデンブルク号爆発事故の謎】
 『ヒンデンブルク:新たな証拠(Hindenburg: The New Evidence)』というこのドキュメンタリー番組では、1937年の事故後、初めての調査を完了した米空軍の退役軍人ジェイソン・O・ハリスが登場する。

 中佐だったハリスは、歴史家のダン・グロスマンと協力して、36人もの死者を出したこの火災がなぜ発生したのかを探った。

 これまで、ヒンデンブルク号爆発事故の原因については、さまざまな説があるものの、はっきりわからないとされ、歴史の中に埋もれてきた。

 だが、当時、現場にいたアマチュアカメラマンが撮った新たな動画は、べつの角度から事故を映していて、炎上直前の様子など、これまで誰も見たことのない場面がおさめられており、制作されたドキュメンタリー番組の中で紹介されている。
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Newly Analyzed Footage Helps Solve Hindenburg Mystery【新たな映像で爆発の真相が解明されるか?】
 事故調査の訓練を受けた民間航空機のパイロットでもあるハリスは、新たな映像が出てきたうえに、現代の事故調査方法が使えるとあって、再び事故原因を調べるこのチャンスに飛びついた。

「歴史やそこにまつわる話を見ても、たいていは間近で詳しく見ることはできないものです」ハリスは言う。

 ヒンデンブルク号の歴史に関わるチャンスを得て、ハリスは自分の軍隊経験、訓練を積んだプロとして観点から事故を考える。とくに、飛行船の乗組員の責任者や、乗組員たちの動きに注目している。

 1930年代の飛行船クルーは、現在のような意思決定のための徹底した訓練は受けていなかった。
到着予定日、レイクハーストは雨が降り続いていて、ヒンデンブルク号の着陸はすでに遅れていた。

 飛行船がニュージャージー州に近づき、着陸のためのケーブルを下ろしたとき、雨が再び強くなった。

 船内のドイツ人クルーたちは、到着がずいぶん遅れていたため、かなりのストレスを感じていたと思われる。これ以上遅らせたくなかったため、すぐに着陸したかったことだろう。

 上官がクルーたちを監督していたことも、さらにストレスを増やしたのかもしれないと、ハリスは指摘する。

「あらゆる事故は、一連の出来事、つまりある時間帯の中で行われた判断の連鎖が、なにか致命的なことを引き起こしたか、あるいは誰かがその連鎖を断ち切って別の決断をしたかという結果にすぎません」ハリスは言う。

 ストレスのかかる難しい判断という観点を通して事故を見てみると、墜落に至るまでになにが起こったのか、新たな見方ができるという。
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ヒンデンブルク号爆発後の残骸 credit:public domain/wikimedia
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 ヒンデンブルク号の墜落は、まるで予想外の出来事だった。マスコミは、飛行船が着陸し、乗客・乗員が下船してくる様子を撮影するために、現場で待機していた。

 そのため、よく知られている映像のほとんどは、飛行船が炎上した後の様子をとらえた同じようなものになった、と新たなドキュメンタリー番組の脚本・プロデューサーを務めたラシュモア・デニューアは言う。
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Hindenburg Disaster: Real Zeppelin Explosion Footage (1937) | British Pathe

 このたび新たに見つかった映像を撮ったのは、アマチュアカメラマンのハロルド・シェンク。とはいえ、このドイツの飛行船の悲劇の原因を具体的にとらえているわけではない。


「ミスター・シェンクの映像は、ほかのマスコミが撮っていない場面をとらえていますが、そんな彼でも火花が散ったまさにその瞬間は見逃していました」デニューアは言う。

「ヒンデンブルクは、たった60秒で普通の飛行船が、黒焦げの残骸になって地面に落下してしまったのです」

 シェンクや家族は、事故直後に調査に協力するため映像を提出しようとしたが、当時、調査員はそれを見ようとしなかった。最近になって、この映像が新たに掘り起こされ、本物であることが確認されたため、NOVAテレビが炎上の原因を解明するために、新たな科学的実験に乗り出した。

「この新たなすばらしい映像のおかげで、お蔵入りになっていた20世紀最大の悲劇のひとつである事故の調査をよみがえらせることができました」ドキュメンタリー番組のプロデューサー、ゲイリー・ターピニアンは言う。

 映像は、ハリスとグロスマンがニュージャージーの墜落現場から、ドイツ、フリードリヒスハーフェンにあるツェッペリン博物館、さらにはカリフォルニア州パサデナのカリフォルニア工科大学のラボまで追っている。

 このドキュメンタリーは5月19日に放映され、PBSのサイトやアプリでもストリーミング配信された。
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NOVA: Hindenburg the New Evidence (2021) - Documentary
References:New Hindenburg documentary sheds light on the decades-old disaster/ written by konohazuku / edited by parumo

記事全文はこちら:爆発炎上したドイツの飛行船「ヒンデンブルク号の悲劇」の謎に迫る新たな映像が公開される https://karapaia.com/archives/52302866.html
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