
男性は下半身でものを考えると言われることがあったりなかったりするが、あながち間違っていないのかもしれない。新たなる研究によると、脳と睾丸は、他のどの器官よりも一番良く似ていることがわかったというのだ。
それは見た目の話ではなく、両者を構成する組織、タンパク質の話だ。
脳と睾丸は1万3442種の共通したタンパク質があり、すべての器官の中で最も多くの遺伝子を共有しているという。
【脳に一番近いのは睾丸】
ポルトガル、アベイロ大学とポルト大学などの研究グループは、脳・心臓・肝臓・腎臓・卵巣、そして精巣などの臓器のプロテオーム(細胞に発現するタンパク質)を比較分析してみた。
その結果明らかになったのは、脳に一番よく似ていたのが精巣(睾丸)だったということだ。
『Open Biology』(6月2日付)に掲載された研究によれば、脳は1万4315種類のタンパク質で構成されている。一方、精巣は1万5687万種だ。そしてじつに1万3442種が共通していたのである。
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【遺伝子も機能もよく似ている】
ただそれを構成するタンパク質が似ているというだけではない。研究者によれば、遺伝子もまたもっともよく似ているということなのだという。
脳と睾丸には機能的に共通する部分がたくさんある。
たとえば脳も精巣も非常にたくさんのエネルギーを消費する。片や思考を処理するために、片や日々数百万という大量の精子をつくり出すためにだ。
そうしたエネルギーを供給するために、神経細胞には「グリア細胞」が、精巣には「セルトリ細胞」がある。どちらも「乳酸」をつくり出し、これがエネルギー源として使われている。
またそうしたエネルギー消費量の多さゆえに、脳も精巣も酸化のストレスに弱い。そしてこの弱点を克服するために、似たような保護障壁が備わっている(脳は「血液脳関門」、精巣は「血液精巣隔壁」)。
さらに、どちらも細胞内でつくり出された物質を外へと送り出す機能がある。これを「エキソサイトーシス(開口分泌)」といい、精細胞なら精子を放出するし、神経細胞なら神経伝達物質を放出する。
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牛の睾丸 photo by Pixabay
【同じ選択圧が脳と睾丸を形成した?】
じつはこれまでも脳と精巣との関係をうかがわせる事例は知られていた。たとえば脳障害と性機能障害、あるいは精子の質と知能に関連があることが明らかにされている。
脳と精巣がこれほどまでそっくりに仕上がったプロセスは定かではないが、研究グループの推測によれば、「種分化」というプロセスが背景にあるようだ。
それによると、人類を独立した種に形成したものと同じ選択圧が、両器官の発達形成をもうながした。そのために一見まったく無関係に思える組織が似たようなつくりになったのだという。
ちなみにタンパク質の構成という点では女性の脳も精巣と同じであるそうだ。
なので女性の場合には、自分の頭の中に精巣があると想像してみれば、理解に苦しむ男性の気持ちがわかったり、わからなかったりするかもだ。
References:Human brain and testis found to have the highest number of common proteins / Human brain and testis found to have the highest number of common proteins/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:脳と睾丸の組織は他のどの器官よりも良く似ていることが判明 https://karapaia.com/archives/52302868.html
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