
image by:OpenSpace/American Museum of Natural History
「深淵をのぞくとき、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」とは、有名な哲学者、フリードリヒ・ニーチェの言葉だ。
私たち人類は、宇宙のどこかに生命がいないかと、何世紀も夜空を見上げてきた。
だが、逆に自分たちもどこかで異星人に見られている可能性だってあるのだ。
『Nature』(6月23日付)に掲載された研究では、向こう側から地球を観察することができる1715の星系を特定した。その中にある29の惑星は、地球人が放った電波を傍受できてしまうような位置にあることもわかったそうだ。
【太陽系外惑星をトランジット法で検出】
2021月6月の段階で、4700以上もの太陽系外惑星が発見されている。そうした遠く離れた系外惑星の多くは、「トランジット法」によって検出される。
ある惑星がそれが公転している恒星の前を横切る(トランジット)とき、恒星の光をさえぎることになる。すると地球からは恒星が陰ったように見えるので、これを手がかりに惑星の存在を推定するのだ。
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トランジット法の解説動画 Detecting exoplanets with the transit method【地球を発見できる位置にある太陽系外惑星を調査】
米コーネル大学とアメリカ自然史博物館の研究グループは、13億個以上の恒星の距離などをまとめたESAのGaiaデータに基づいて、”地球を"トランジット法で発見することができる位置にある系外惑星を調査した。
そして特定されたのが100パーセク(326光年)の範囲にある2034の星系だ。仮にそれらに知的生命体が存在していたとしたら、過去5000年間あるいは今後5000年間で、太陽の前を横切る地球を発見できた(できる)と考えられるのだという。
しかもそのうち46の星系は地球に非常に近く、ここ100年で人間が放つようになったラジオやテレビの電波を傍受することすらできる可能性がある。そこまでできれば、相手は地球に知的生命が存在することを確信するだろう。
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【29の惑星から地球を観察できることが判明】
そうした星のハビタブルゾーンには合わせて29個の惑星が存在するとされる。
たとえば、おとめ座の方角にある赤色矮星「ロス128」だ。この星は私たちからたったの11光年しか離れておらず、そのハビタブルゾーンには地球の2倍ほどの大きさの惑星がある。
もしそこに適切な観測機器を持つ知的生命がいたとすれば、900年前までの2000年の間、地球が太陽をトランジットする様子を観察できたに違いないという。
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ロス128と惑星ロス128bの想像図 / image credit:ESO/M. Kornmesser / WIKI commons
おひつじ座の方角、12.5光年先の赤色矮星「ティーガーデン星」のハビタブルゾーンには2つの惑星があるが、これらは29年後に絶好の地球観測ポジションに移動するという。
赤色矮星は頻繁にフレアを吹き上げる傾向にあるため、周辺環境は生命には厳しいだろうと推測されているが、ティーガーデン星にはほとんどフレアがなく、生命が進化するには都合がいいとされている星だ。
みずがめ座の方向にある「トラピスト1」は、7つも惑星を従えており、うち4つはハビタブルゾーンにある。地球との距離も45光年と目と鼻の先で、人類の電波を十分に受信できる。
ただし、トラピスト1の惑星が地球を観測できる位置に移動するまでには、あと1642年待たねばならないとのことだ。
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【深淵もまたこちらをのぞいているのかも】
今年10月に打ち上げが予定されているNASAジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のような次世代望遠鏡ならば、遠く離れた系外惑星の大気を分析して、そこに生命の存在を示す痕跡がないか調べることができる。
だが、それは相手もまた同じことができるということだ。
地球外文明からよく見えるよう、にこやかに手でも振ってやりたいところだが、人類をはるかにしのぐ科学技術を持つ文明に見つかるとどうなってしまうのか?恐ろしくもあり、すごく興味があるところではある。
References:Life in these star-systems could have spotted Earth | EurekAlert! Science News / written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:深淵を覗いていたつもりが覗かれていた?異星人が地球を観察できる29の惑星を特定 https://karapaia.com/archives/52303489.html
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