止まると死んでしまうサメはどうやって休むのだろう?その休息方法が明らかに

 サメには意外な弱点がある。それは泳ぎ続けなければ死んでしまうということだ。
外洋性のサメは自分でエラを動かすことができない。だから海水を口に入れてそこから酸素を抽出するためには、絶えず移動する必要があり、止まってしまえば息ができずにすぐ死んでしまうのだ。

 ではどうやって体を休めているのだろう?止まったら死んでしまうのではおちおち休息もとれないじゃないか。

 その答えの1つが明らかとなった。海流に身をゆだねることでエネルギーの消費を抑えている時が、休息の時なのだそうだ。

【オグロメジロザメの不思議な泳ぎに注目】
 アメリカ・フロリダ国際大学のヤニス・パパスタマシュウ氏らは、フランス領ポリネシアのファカラヴァ環礁に生息する「オグロメジロザメ」を調べていた。

 このサメは昼間になると上昇海流に逆らうように泳ぐことがある。興味深いことに、そのときヒレをほとんど動かさない。

 ノロノロと海流の始まりまで潜っていくと、今度はそれに身を任せてスイーッと海面へ流されていく。

 そして元に戻ると、またノロノロと海流の始まりを目指す。それはまるでベルトコンベアに乗っているかのようであるという。
[画像を見る]
オグロメジロザメはインド太平洋のサンゴ礁で見られる最も一般的なサメで全長は2m前後。
他種に対しては攻撃的だが同種には寛容で、日中には大きな群れを作る / image credit:iStock【海のベルトコンベアで消費エネルギーを抑えていた】
 興味を引かれたパパスタマシュウ氏は、サメの体に音響追跡タグと水中カメラを取り付けて、一体何をやっているのか調べてみることにした。

 そのデータと生物力学モデルをベースに、サメが泳ぐときのエネルギー消費量を算出してみると、どうやら通常の泳ぎよりも15%以上省エネできていることが判明したのだ。

 この結果から、同じような海流があるところでは、やはりサメが集まって休憩しているのではないかと推測された。

 そこでマルチビーム・ソナーを使って、上昇海流が発生する場所を予測。その場所を実際に観察してみると、確かにそこでもサメたちが集まって気持ち良さげに海流に乗っていることが確認されたという。

 たとえば、上昇海流が強くなる上げ潮のときは、サメたちは密集して、はっきりとしたベルトコンベアー的行動を見せていた。

 その反対に海流が乱れがちな引き潮になると、サメたちは散らばり、海中のうねりを避けるために水面近くに移動していた。
[画像を見る]
オグロメジロザメの群れ photo by iStock
【鳥が上昇気流に乗るのと同じ原理】
 パパスタマシュウ氏らによれば、こうした行動は、鳥が最小の力で飛ぶために上昇気流を利用するのと似ているという。
海洋環境は海流があるためにダイナミックで、予測が難しくなります。季節によっても違いますし、それどころか1日の間にも、分刻みで変化します。

究極的に省エネは、昼間にサメたちが海流でたむろする理由を説明するでしょう。今、その答えが手に入りました(パパスタマシュウ氏)
 今後は、今回判明したことを手がかりにサメの居場所を特定する方法の開発したり、サメ以外の泳ぎ続けなければならない動物(マグロ、カツオといった回遊魚など)へ応用したりといったことが考えられるそうだ。


 この研究は『Journal of Animal Ecology』(6月13日付)に掲載された。

References:When sharks need a power nap, they go surfing | FIU News - Florida International University / written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:止まると死んでしまうサメはどうやって休むのだろう?その休息方法が明らかに https://karapaia.com/archives/52303491.html
編集部おすすめ