
世界で最初の推理小説を書いたといわれているアメリカの小説家で詩人のエドガー・アラン・ポー(1809年 - 1849年)の生涯は40歳で幕を閉じたが、実際にはそうじゃないのかもしれない。
エドガー・アラン・ポーは、時空を旅するタイムトラベラーだったのでは?という噂が今でもまことしやかにささやかれているのだ。
そう考えるに足りる3つの根拠があるのだという。
■ 謎に包まれているエドガー・アラン・ポー
幼い頃は孤児だったが、推理小説の父となり、暗号学の達人となり、暗黒小説のマエストロとなったエドガー・アラン・ポーの人生には、それ以外にも知られざる一面があった。
彼の死に至る日々の詳細は、今も謎のままだ。投票所近くの路上で、他人の服を着て行き倒れているところを発見され、病院にかつぎこまれて入院している間に、「レイノルズ」という謎の人物について、わけのわからないことを口走っていたという。
さらに、ポーの死後70年間にもわたって、彼の誕生日の早朝に、コニャックのグラスと3本のバラを持った名も知れぬ人物が必ず墓前に現われたという報告にも、困惑するばかりだが、それについては詳しくは述べない。
確かに悲劇的で、好奇心をそそられるポーの人生だが、だからといって、この有名な怪奇小説作家が時空の境界を超えることができるという証拠にはならない。
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■ タイムトラベラーの証拠は作品の中に
ポーがタイムトラベラーだったのではないかという根拠は、彼の作品の中に見られる。彼の作品は、おそらくはこの突拍子もない主張をもっともらしいものにしてくれそうだ。【証拠1:『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』】
1838年のポーの唯一の長編作品で、遭難した捕鯨船での悲劇を描いたもの。食料も底を尽き、自暴自棄になった乗組員たちがついにカニバリズムに走る。
藁をくじ引きがわりにして、犠牲者を選ぶことにしたが、結局、リチャード・パーカーという少年が、貧乏くじを引き、食べられてしまった、という話だ。
ところが、その後ずいぶんたってから奇妙な事件が現実に起こった。
この話が出版されてから46年たった1884年、4人の男たちが乗ったヨットが沈没して漂流してしまった。
船は破損し、食べ物もない。彼らもまた生き延びるためにカニバリズムに走る。給仕として乗り込んでいた17歳の少年を殺して食べたのだ。その少年の名前も、リチャード・パーカーだった。
出版から1世紀近くたって初めて、実在のパーカーの子孫からの手紙が広く知れ渡るようになり、ポーの小説と現実の事件があまりにもそっくりなことが指摘されるようになった。
ジャーナリストのアーサー・ケストラーが、"驚くべき偶然の一致"の物語を募集した結果、遺族の手紙が選ばれて、『サンデータイムズ』紙に掲載されたのがきっかけだった。まさに、信じられないような偶然と思わざるをえない。
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Photo by Albert Sterner/Wikimedia Commons.
【証拠2:『実業家(The Business Man)』】
1848年、鉄道員のフィニアス・ゲージは、鉄の大釘が頭を貫通する事故にあってから、脳の障害に苦しんでいた。なんとか命はとりとめたものの、ゲージの人格は劇的に変わってしまった。
こうした行動の変化を詳しく調べた結果、医学界は初めて、前頭葉が社会的認知において果たす役割を理解することができた。
しかし、ポーはどういうわけかすでに10年近く前に、こうした前頭葉症候群が引き起こす深刻な人格の変化について、理解していたようだ。
1840年、ポーは『実業家(The Business Man)』というぞっとするような話を書いた。少年の頃に頭部に外傷を負った無名の語り手が、常に強迫観念に苛まれ、暴力的で反社会的な荒れた人生を送る話だ。
ポーは、当時は知られていなかったはずの前頭葉症候群について、かなり正確に理解していたようで、神経学者のエリック・アルツシューラーはこのように書いている。
「前頭葉症候群にはたくさんの症状があるが、ポーはそれらをすべて知っていたようだ。この小説には、まだ誰も学んでもいないことが、すべて正確に描かれていた」
アルツシューラーはちゃんとした医学のライセンスをもった神経学者で、決して常軌を逸した人間
ではない。その彼がこんなことを言っている。「この気味が悪いほど正確な描写は、まるで彼がタイムマシンで未来へ行って、見てきたかのように思われるほどだ」
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Image from the collection of Jack and Beverly Wilgus/Wikimedia Commons/Wikimedia Commons.
【証拠3:『ユリイカ 散文詩』】
まだ、納得がいかないだろうか? それでは、もうひとつ。現代科学がビッグバン理論を公式化する80年も前に、ポーが宇宙の起源を予言していたと言ったら?
宇宙論について正式な学問を受けていないアマチュア天文学者は、宇宙の仕組みを正確に説明することなどできないはずだ。
広く知られている誤りを受け入れようとしない一方で、ケプラー以来、天文学者を悩ませてきた理論的なパラドックスを解決してしまうのだ。そんなことがまさに起こった。
『ユリイカ』は、150ページに及ぶ散文詩だが、その複雑さがさんざん批判され、多くの人が狂人の作品だとみなした。
ポーが亡くなる前年に書かれたこの作品は、一瞬の閃光で始まった宇宙の膨張は、たったひとつの原始的な粒子から引き起こされたとしている。
ポーは、「空には無数の星があるのに、なぜ、夜空は暗いのか」という問いを論じる、オルバースのパラドックスに、初めて説得力のある解決をもたらした。
膨張する宇宙からの光が、まだ私たちの太陽系に届いていないからからだと説明したのだ。エドワード・ロバート・ハリソンは、1987年に『Darkness at Night』を出版したとき、ポーの『ユリイカ』が彼の発見を先取りしていたと信じていた。
イタリアの天文学者、アルベルト・カッピは、ポーの予見を驚きをもって見ている。
ポーがダイナミックな宇宙生成論(ビッグバン理論)を認識していたことには驚きを隠せません。当時、そのような可能性を示唆する観測的、理論的証拠はまったくなかったのですから。
ポーの時代には、宇宙は静止しているのではなく、動いているなどと想像する天文学者などひとりもいませんでした
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NASA/Wikimedia Commons.
■ ポーはタイムトラベラーなのか?どう考えるかは、あなた次第
もし、ポーの書いた予言──リチャード・パーカーのカニバリズム事件、前頭葉症候群、ビッグバン理論──が、単なる時間外連続体を旅する報告書にすぎないとしたら?
荒唐無稽?でももしかしたら、ポーの作品全体には、もっと多くの予言がちりばめられているのかもしれない。
ニューヨークタイムズ紙が指摘するように、「ポーは長い間、非常に過小評価されていたので、彼に関する資料があまり出回っていない」という事実によって、よりその可能性は高まっている。
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1844年にポーがジェームズ・ラッセル・ローウェルに宛てた手紙の中で、自分の不在と怠惰を詫びる文面から引用した言葉を紹介しよう。
私は未来の空想の中に住み続けています。私は人間の完全性をまったく信じていません。人間が努力しても、人間性に大きな影響を与えるることはなにもないと考えています。References:3 moments that might convince you Edgar Allan Poe was a time traveler. - Upworthy / written by konohazuku / edited by parumo
人間は、6000年前よりも活動的になっただけで、幸せになったわけでも、賢くなったわけでもありません。
結果は決して変わることはなく、変わると考えるのは、かつて生きていた人間が無駄に生きたと考えることであり、過ぎ去った時間は未来の第一歩にすぎず、死んでしまった大勢の人たちは、私たちとは同等でなかった、そして私たちもまた、後世の人たちと同等ではないと考えることになるのです。
私は、人間は個人で、大衆のひとりであることを見失ってはいけないと思います。あなたは私の人生の評価について話していますが、すでにお話ししたことから、私にはなにもできないことがおわかりになるでしょう。
私は、一時的なものの変わりやすさや儚さを強く意識してきたため、なにかを継続的に努力する、つまり一貫して取り組むことができないのです。私の人生は気まぐれで、衝動的、情熱的で、孤独に憧れ、未来への切実な願望の中で、現在のあらゆるものを軽蔑してきたのです
記事全文はこちら:エドガー・アラン・ポーはタイムトラベラーであるとする3つの根拠 https://karapaia.com/archives/52303762.html
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