
人は、写真の中に映っている写真の中の人物に対して現実感が乏しくなり、普通ならできる配慮がしにくくなる。そんな「心の層」が写真にはあるのだそうだ。
何を言っているかよくわからない人の為に説明しよう。
例えばあなたが、あなたの顔写真の横に立っていたとする。そして誰かがその場面をカメラで撮影したとしよう。すると写真にはあなたの顔と写真の顔が写っている。
ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)の心理学者アラン・キングストン博士によると、人はその顔写真をその横に写っているあなたの顔ほどリアルに感じられないのだという。
【人は現実感に乏しい人物を思いやれない】
人は目の前にいる生身の人間と、人間の写真をはっきり区別することができる。ところが、それだけでなく、写真に写る生身の顔と写真の顔まで区別していたのだ。
そして後者をそれほどリアルなものと感じられない。だから、その人物について真面目に考察したり、注意を向けたりといったことがやり難い。
『PNAS』に掲載される予定の実験では、写真の中の写真の人物にはあまり寄付が集まらないことが明らかになっている。
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【リモートワークに影響を与える可能性】
それの何が問題になってくるのか? 研究グループが懸念しているのは、新型コロナの影響でリモートワークが普及した社会への影響だ。
こうした状況では、写真に写った人物を相手にしなければならないことも多々あるだろう。
たとえばバーチャル裁判が開かれれば、裁判官は動画で被害者の写真を目にするかもしれない。人間が本質的にそうした相手を現実の人間として捉えることが難しいのならば、それは判決に影響するおそれがある。
こうした話は、ほかにもオンライン医療やオンライン教育などにも当てはまる。
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【バーチャルリアリティなら現実感が上がる可能性】
もしかしたらバーチャルリアリティ(VR)などを利用すれば、問題を少しは緩和することができるかもしれない。
たとえ映像であったとしても、徹底的に現実感を演出してやれば、よりリアルな人間として感じられるようになる可能性があるからだ。
「今後の研究では、VRのような没入感ある環境がこうした影響を緩和できるのかどうか調べることが大切でしょう」と、キングストン博士は声明の中で語っている。
Top Photo by ian dooley on Unsplash / References:More to pictures than meets the eye: study / written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:人は写真の中にうつっている写真の人物に対して現実感が乏しくなり、普通ならできる配慮ができなくなる https://karapaia.com/archives/52304650.html
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