中国の軍事衛星、ロシアのロケットが放ったスペースデブリにより崩壊した可能性
 今年3月、米宇宙軍によって中国の軍事衛星「雲海1号02」が崩壊したことが確認された。

 当時、その原因が推進システムの爆発といった故障だったのか、それとも軌道上にあった何かとの衝突だったのかはっきりしなかった。

 だが、米ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの宇宙物理学者の分析によると、ロシアのスパイ衛星用ロケットから放たれたスペースデブリに衝突した可能性が高いという。

ロシアの放ったスペースデブリが中国の軍事衛星に衝突 8月14日、ジョナサン・マクダウェル氏は、宇宙軍が公開しているSpace-Track.orgが更新されていることに気がついた。見てみたところ、そこに「物体48078, 1996-051Qが人工衛星と衝突」という説明が書き込まれていたのだ。

 同氏が物体48078の正体を探るべくその追跡データを調べてみたところ、ロシアのスパイ衛星「ツェリーナ2号」の打ち上げ(1996年)に使われた「ゼニット2ロケット」から発生したスペースデブリ(宇宙ゴミ)であることが判明したという。 ロシアのロケットから発生したスペースデブリの軌道 ロシアの打ち上げたロケットからは幅10~50センチの8つのデブリが発生し、長年追跡されてきた。しかし奇妙なことに、物体48078については今年3月に収集されたたった1つの軌道データしかないのだという。

 このことからマクダウェル氏は、それが”何か”との衝突直後に発見されたものなのではないかと推測している。

 その”何か”がおそらくは3月18日に壊れてしまった雲海1号02だという。

 雲海1号02が高度780キロで崩壊したとされるその時間、人工衛星と物体48078は、追跡システムにしてみれば誤差の範囲内でしかない1キロ以内にまで接近していたのだ。

 これによって確認されたものだけでも37個のデブリが発生している。信号が今でも検出されていることから、雲海1号02は完全に死んでしまったわけではないようだ。しかしこれまで通りに機能するかどうかはわからないとマクダウェル氏は語る。

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雲海1号02の打ち上げ時の映像2009年以来の大規模な事故 今回の衝突事故は、2009年2月にロシアの軍事衛星「コスモス2251号」が通信衛星と衝突したとき以来の大きなものであるという。コスモス2251号の衝突では、翌年10月までに1800個ものデブリが発生している。

 だが今後、人工衛星や宇宙船が増えるにつれて、こうした衝突事故はますます増えるかもしれない。

 マクダウェル氏の説明によると、衝突が発生する確率は軌道上にある物体の数の2乗に比例するのだという。つまり人工衛星の数が10倍になれば、衝突事故は100倍になるということだ。

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ケスラー・シンドロームの脅威 宇宙の専門家は将来起こりうる最悪の事態として「ケスラー・シンドローム」を懸念している。これは人工衛星などの衝突によって発生したデブリが、また別の衝突を引き起こし、やがて連鎖的に事故が広まる状態を指す。

 これによって軌道上がデブリであふれてしまえば、人類にとってそこはもはや利用できない空間になってしまう。

 ESAの推定によると、地球の周囲にはすでに1~10センチのデブリが90万個、1ミリ~1センチのものなら1億2800万個存在している。

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 そうしたデブリは国際宇宙ステーションが周回している高度では、弾丸どころではない時速2万7600キロもの猛スピードで移動している。それは広大な宇宙でいまだに宇宙人が見つからない原因なのかもしれない。

References:Space junk collision: Chinese satellite got whacked by hunk of Russian rocket in March | Space / written by hiroching / edited by parumo

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