アメリカ人がようやく進化論を信じ始めた。過去10年で増加し過半数に達する
 「進化論」とは、生物は長い時間をかけて通して進化したことを説明する理論で、共通祖先から自然選択というプロセスを通して行われるというチャールズ・ダーウィンの進化論が有名だ。

 日本人の多くがこの理論を当たり前のように学んでいるが、キリスト教信者が多い米国では、創造主なる神によって天地万物の全てが創造されたという「創造論」が社会の基礎になっていた。


 だがようやくアメリカでも、ここ10年の間で、過半数の人が進化論を信じるようになったそうだ。 『Public Understanding of Science』に掲載された研究によると、どうやらその要因は教育や若い世代の宗教離れにあるようだ。それでもまだ過半数だが。
 

ここ10年で進化論を信じるアメリカ人が過半数を超える 意外なことかもしれないが、世界トップレベルの先進国で、科学技術が発達したアメリカでは、進化論を信じている人が案外少ない。

 「現在の人類は大昔の動物から発達した存在である。」

 こう質問された日本人ならば、おそらく「はい」と答えるのではないだろうか? しかしアメリカで1985年から2010年までに行われた調査では、「はい」と答えたのは40%程度でしかなかった。つまり過半数にも満たなかったのである。

 しかし米ミシガン大学をはじめとするグループの調査では、2016年にはその割合が54%となり、ついに過半数を超えたことが明らかになっている。

 その要因はいったい何なのか?3つの観点が考えられるという。

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1.教育の質の変化 同グループによれば、こうした変化には教育が重要な役割を果たしているという。過去30年間の回答者を調べてみたところ、大学で科学の単位を取得したかどうかが、進化論を信じるかどうかと関連していたからだ。

 たとえば2018年に大学の学位を持っているアメリカ人は、1988年当時に比べてほぼ2倍に増えている。また科学的リテラシーを持つアメリカ人成人の割合は、1988年の11%から2019年の31%にまで増えた。


 この傾向は教育にも波及する。神が世界を創ったと説く創造論を教える教師のかわりに、進化論を教える教師が増えれば、それだけ生徒が進化論に触れる機会も増えるだろう。

 これはかなりの進歩である。米国史において、学校で進化論を教えることを禁じる法律(バトラー法など)が存在していたのだから。

 だが教育の影響だけではなさそうだ。高い教育を受けていても、敬虔なクリスチャンと呼ばれる人たちは今でも真剣に創造論を口にする。

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2.共和党の支持者に多い原理主義者 2019年の時点で、民主党の支持者では83%が進化論を信じていたのに対して、キリスト教福音主義的な政策をとる共和党の支持者では34%でしかないことが明らかになっている。

 これほど大きな隔たりがある理由は、政治的イデオロギーというよりも、むしろ共和党の支持者に見られる原理主義的な信仰であると考えられるのだという。

 アメリカ成人のおよそ30%が進化論を直接否定するような信仰を持っているが、これは今回の調査で進化論を信じないと答えた保守的な共和党支持者の割合と同じだ。

 それでも研究グループは、教育も進化論を受け入れるかどうかを左右する要因であると考えている。

 実際、1988年当時、宗教的原理主義者で進化論を受け入れていたのはわずか8%のみだったが、2019年ではおよそ3分の1にも増えていたのだ。

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3.若者の宗教離れ アメリカでは、若い世代を中心に宗教離れが進んでいるという。
2014年に行われたピュー・リサーチ・センターの世論調査によると、約5600万人の市民が無神論者か無宗教と回答した。2007年の同調査と比べると約3倍に増えたことになる。

 さらに2014年調査によると「進化論を信じる」と「どちらかと言えば進化論を信じたい」を合わせると、30歳以下の割合が約70%だったそうだ。

 明確に進化論を信じるというわけではなく、「信じたい」という曖昧な表現なのは、神の概念を否定することを避けるためと考えられる。

 21世紀にいたっても、アメリカでは神は穢すことのできない聖域なのだ。

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先進国の中ではまだまだ低い水準 進化論を信じるアメリカ人が増えているとはいえ、進化論が圧倒的に有利というわけではない。先進国の中ではまだまだ低い水準だ。

 昨年アメリカのシンクタンク、ピュー研究所が世界各国で行った調査では、進化論を信じるアメリカ人は64%と、今回の結果よりもやや高い割合だった。

 それでも日本(88%)、スウェーデン(85%)、ドイツ(81%)、フランス(81%)といった国に比べればまだ低い。

 Google、Apple、マイクロソフト、Facebookといったハイテク企業が生まれた国の意外な側面と言えるかもしれない。

 だが現在、進化論を教えることを禁じる法律は徐々に廃止に追い込まれており、世代が変わるごとに進化論を信じる人は増えていくことになるかもしれない。

 とは言え、敬虔な教会に通えば今も熱心に、神による人間の創造にまつわる話が語られている。


References:Public acceptance of evolution in the United States, 1985–2020 - Jon D. Miller, Eugenie C. Scott, Mark S. Ackerman, Belen Laspra, Glenn Branch, Carmelo Polino, Jordan S. Huffaker, 2021 / Study: Evolution now accepted by majority of | EurekAlert! / written by hiroching / edited by parumo

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