
これまで地球外生命を探す天文学者が注目してきたのは地球とよく似た惑星だ。大きさ質量、大気などが地球の環境に近ければ近いほど見つかりやすいと考えられてきた。
英ケンブリッジ大学の研究グループは、生命の存在が期待できる新しいタイプの太陽系外惑星を発見し、『The Astrophysical Journal』(21年8月26日付)で報告している。
研究グループによると、水素の大気と大きな海がある太陽系外惑星なら、今後数年のうちに生命が発見される可能性が極めて高いという。
これまで注目されていなかったミニ・ネプチューン 太陽系の外で初めて惑星が発見されたのは1992年のことだ。それ以来4000個を超える系外惑星が見つかっているが、その多くは地球と海王星の間くらい大きさの「スーパーアース」や「ミニ・ネプチューン」と呼ばれるタイプだ。
大抵のミニ・ネプチューンは地球の1.6倍以上の大きさで、海王星よりは小さいが、地球のように内部が岩石で構成されるには大きすぎる。これまでの研究では、その気圧と気温が高すぎて、生命が生存するには適していないと考えられてきた。
[画像を見る]
photo by Pixabay
水素の大気と広い海があれば生命体は生存できる可能性 ところが、昨年ニック・マドゥスダン氏らがミニ・ネプチューン「K2-18b」を調べたところ、条件さえ揃えばこのタイプでも生命が生存できるらしいことが明らかになった。
そこで同氏らは、そうした条件が揃う可能性がある惑星や恒星の特性をすべて調べ上げ、さらに実際にそれを満たしていると考えられる既知の系外惑星があるかどうか分析。
そして判明したのが、水素をたっぷりと含む大気と広い海におおわれた新しいタイプの惑星の存在だ。水素(hydrogen)と海(ocean)にちなみ、「ハイセアン(hycean)惑星」と名付けられている。
[画像を見る]
K2-18bの想像図。
ハイセアン惑星は地球の2.6倍。恒星次第で気温は200度近くになることもある。普通の生物ではとてもではないが生きてはいられない。だが、その海では、地球でもっとも過酷な水生環境に潜むような微生物なら生存できる。
また地球型の惑星に比べて、ハビタブルゾーン(生命が生存可能な恒星との距離)がはるかに広い。そのため、地球型惑星では生命が存在できない位置にあっても、ハイセアン惑星なら生命の存在が期待できる。
しかも素晴らしいことに、この大きさの惑星は、今までに発見されてきた系外惑星の大半を占めている。これまでの地球外生命探しで注目されてきたのは、主にスーパーアースだ。つまりハイセアン惑星が見つかったことで、捜索候補となる惑星の数がグッと増えたことになる。
[画像を見る]
credit:Cambridge University
ハイセアン惑星なら生命の検出がしやすくなる 遠く離れた系外惑星に生命が存在するかどうか知るためには、生命の存在を示唆するサイン(バイオシグネチャー)を検出できなければならない。
たとえば地球で見られる酸素・オゾン・メタンは、生命の代謝に由来するために、これが検出されれば生命が存在する強力な証拠となる。
あるいは水素が豊富な大気を持つ惑星では、塩化メチルや硫化ジメチルも、そこに生命がいることを示す有力な指標となる。
そして今回の研究では、近い将来、地球からの分光観察でもハイセアン惑星のバイオシグネチャーを簡単に検出できるようになるだろうことがわかっている。
ハイセアン惑星は地球よりも大きく、気温が高く、かつ水素が豊富なために、地球に似た惑星よりも生命の痕跡をはるかに検出しやすいのだ。
[動画を見る]
New Type of Planets, Hycean Worlds, Could Be Best For Finding Alien Life次世代望遠鏡で数年以内に発見なるか? 今年10月、ハッブル宇宙望遠鏡の後継機「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」の打ち上げが予定されているが、今回のグループは詳しく調査すべきハイセアン惑星の候補を特定している。いずれも35~150光年先の赤色矮星を周回しており、天文学的には地球のすぐそばにあるものだ。
またハイセアン惑星発見のきっかけになったK2-18bは、すでにジェームズ・ウェッブによる観測が予定されているとのことだ。
さあ、数年以内に生命の痕跡は発見されるだろうか?
References:New class of habitable exoplanets are 'a big step forward' in the search for life / written by hiroching / edited by parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
だがこれからは、別の基準で探すことが、未知との遭遇の近道になるかもしれない。
英ケンブリッジ大学の研究グループは、生命の存在が期待できる新しいタイプの太陽系外惑星を発見し、『The Astrophysical Journal』(21年8月26日付)で報告している。
研究グループによると、水素の大気と大きな海がある太陽系外惑星なら、今後数年のうちに生命が発見される可能性が極めて高いという。
これまで注目されていなかったミニ・ネプチューン 太陽系の外で初めて惑星が発見されたのは1992年のことだ。それ以来4000個を超える系外惑星が見つかっているが、その多くは地球と海王星の間くらい大きさの「スーパーアース」や「ミニ・ネプチューン」と呼ばれるタイプだ。
大抵のミニ・ネプチューンは地球の1.6倍以上の大きさで、海王星よりは小さいが、地球のように内部が岩石で構成されるには大きすぎる。これまでの研究では、その気圧と気温が高すぎて、生命が生存するには適していないと考えられてきた。
[画像を見る]
photo by Pixabay
水素の大気と広い海があれば生命体は生存できる可能性 ところが、昨年ニック・マドゥスダン氏らがミニ・ネプチューン「K2-18b」を調べたところ、条件さえ揃えばこのタイプでも生命が生存できるらしいことが明らかになった。
そこで同氏らは、そうした条件が揃う可能性がある惑星や恒星の特性をすべて調べ上げ、さらに実際にそれを満たしていると考えられる既知の系外惑星があるかどうか分析。
そして判明したのが、水素をたっぷりと含む大気と広い海におおわれた新しいタイプの惑星の存在だ。水素(hydrogen)と海(ocean)にちなみ、「ハイセアン(hycean)惑星」と名付けられている。
[画像を見る]
K2-18bの想像図。
奥には主星K2-18と、K2-18を公転する別の惑星K2-18cも描かれている / image credit:ESA/Hubble, M. Kornmesser / WIKI commons
ハイセアン惑星は地球の2.6倍。恒星次第で気温は200度近くになることもある。普通の生物ではとてもではないが生きてはいられない。だが、その海では、地球でもっとも過酷な水生環境に潜むような微生物なら生存できる。
また地球型の惑星に比べて、ハビタブルゾーン(生命が生存可能な恒星との距離)がはるかに広い。そのため、地球型惑星では生命が存在できない位置にあっても、ハイセアン惑星なら生命の存在が期待できる。
しかも素晴らしいことに、この大きさの惑星は、今までに発見されてきた系外惑星の大半を占めている。これまでの地球外生命探しで注目されてきたのは、主にスーパーアースだ。つまりハイセアン惑星が見つかったことで、捜索候補となる惑星の数がグッと増えたことになる。
[画像を見る]
credit:Cambridge University
ハイセアン惑星なら生命の検出がしやすくなる 遠く離れた系外惑星に生命が存在するかどうか知るためには、生命の存在を示唆するサイン(バイオシグネチャー)を検出できなければならない。
たとえば地球で見られる酸素・オゾン・メタンは、生命の代謝に由来するために、これが検出されれば生命が存在する強力な証拠となる。
あるいは水素が豊富な大気を持つ惑星では、塩化メチルや硫化ジメチルも、そこに生命がいることを示す有力な指標となる。
そして今回の研究では、近い将来、地球からの分光観察でもハイセアン惑星のバイオシグネチャーを簡単に検出できるようになるだろうことがわかっている。
ハイセアン惑星は地球よりも大きく、気温が高く、かつ水素が豊富なために、地球に似た惑星よりも生命の痕跡をはるかに検出しやすいのだ。
[動画を見る]
New Type of Planets, Hycean Worlds, Could Be Best For Finding Alien Life次世代望遠鏡で数年以内に発見なるか? 今年10月、ハッブル宇宙望遠鏡の後継機「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」の打ち上げが予定されているが、今回のグループは詳しく調査すべきハイセアン惑星の候補を特定している。いずれも35~150光年先の赤色矮星を周回しており、天文学的には地球のすぐそばにあるものだ。
またハイセアン惑星発見のきっかけになったK2-18bは、すでにジェームズ・ウェッブによる観測が予定されているとのことだ。
さあ、数年以内に生命の痕跡は発見されるだろうか?
References:New class of habitable exoplanets are 'a big step forward' in the search for life / written by hiroching / edited by parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
編集部おすすめ