
寿司ネタとして知られているシャコだが、自然界最強のパンチの持ち主であることが知られている。カニの甲羅や貝殻を叩き割るそのパンチの破壊力は22口径の弾丸に匹敵すると言われている。
そんなシャコが高速パンチを生み出す仕組みをモデルにしたパンチングマシンが、米ハーバード大学の研究グループによって開発された。
『PNAS』(21年8月17日付)に掲載された研究によると、そのロボットパンチは、停止している車がわずか0.004秒で58キロにまで加速するのにも相当するそうだ。
自然界最強のハードパンチャー、シャコ およそ450種の種が知られているシャコは、大きく分けると槍のような付属肢で突き刺すタイプ(スピアラー型)と、ハンマーのような爪で叩き潰すタイプ(スマッシャー型)に分けられる。
秒速23メートルで打ち出されるそのパンチは凄まじく、水にキャビテーション(液体の流れの圧力差によって泡ができる現象)を発生させ、泡の衝撃で獲物を失神させたり、殺したりできるほどだ。
その泡が弾ける瞬間、閃光すら生じるというのだから、文字通りの電光石火のパンチである。ちなみに以下の動画は釣ったシャコに一撃を食らった釣り人の末路である。
[動画を見る]
When a MANTIS SHRIMP PUNCHES A HUMAN(it forking hurts!)シャコの高速パンチの秘密 シャコの高速パンチの秘密は、強靭な筋肉ではなく、弓矢のようなバネ構造にある。
ギリギリと引き絞られた弓をパッと手放すと、弓が一瞬で元の形状に戻ろうとする。引き絞るときの仕事量と弓が元に戻るときの仕事量は同じだが、後者は一瞬でそれが起きているので、その分爆発的なエネルギーが生じる。
シャコのパンチも同じだ。その腕には「鞍」という部分があり、それが筋肉によって引っ張られて曲げられ、バネ(つまり弓)の役割を果たす。
また「とめ具」という構造がストッパーになって、鞍のしなりを維持する。
とめ具が外されると、鞍に蓄えられたエネルギーが一気に放出され、高速パンチが飛び出すという仕組みだ。
[画像を見る]
シャコの体の構造 / image credit:超高速運動 - JSCPB wiki
こうしたバネ構造は、カエルの足、カメレオンの舌、アリの顎、弾け飛ぶ植物の種など、ほかの生物でも見ることができる。しかしシャコのそれには少々変わったところがある。
超高速カメラで観察してみると、とめ具が解除されてから、パンチが放たれるまでに時間差があるのだ。言ってみれば、手を離した後で、弓が元に戻ろうとするまでにタイムラグがあるようなものだ。
その理由はよくわからない。しかしとめ具が解除された後で、腕の構造が二次的なとめ具として機能しているのではないかと推測されている。
[動画を見る]
一撃でカニを吹き飛ばすシャコパンチパンチングロボットでシャコの高速パンチを再現 シャコの腕をモデルにしたパンチングロボットは、この仮説を検証するためのものだ。
水中と空気中でその動作実験を行ったところ、実際にとめ具が外れた後で、腕の構造によって急激な加速が生み出されていることが確認されたという。
本物のシャコのパンチには劣るが、それでも空気中なら秒速26メートルの高速パンチを放つことができる。これは静止状態にある車がわずか0.004秒で時速58キロまで加速するのにも相当する速さであるそうだ。
[動画を見る]
ロボットでシャコの高速パンチを再現
なお、あえてパンチの出だしに遅れが出るような構造になっているのは、ハードパンチの負荷から腕を守るためかもしれないそうだ。
接触型のとめ具構造の場合、繰り返し利用すると摩耗してしまう。それを防ぐための二次的なとめ具かもしれないのだ。
なお昨年の研究では、抵抗が少ないはずの空気中では、意外にもシャコのパンチスピードは半分になることが確認されている。
周囲の媒体(水や空気)による抗力が、シャコの高速パンチが進化した秘密かもしれないそうだ。
References:Scientists built a tiny robot to mimic the mantis shrimp’s knock-out punch | Ars Technica / written by hiroching / edited by parumo
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そんなシャコが高速パンチを生み出す仕組みをモデルにしたパンチングマシンが、米ハーバード大学の研究グループによって開発された。
『PNAS』(21年8月17日付)に掲載された研究によると、そのロボットパンチは、停止している車がわずか0.004秒で58キロにまで加速するのにも相当するそうだ。
自然界最強のハードパンチャー、シャコ およそ450種の種が知られているシャコは、大きく分けると槍のような付属肢で突き刺すタイプ(スピアラー型)と、ハンマーのような爪で叩き潰すタイプ(スマッシャー型)に分けられる。
秒速23メートルで打ち出されるそのパンチは凄まじく、水にキャビテーション(液体の流れの圧力差によって泡ができる現象)を発生させ、泡の衝撃で獲物を失神させたり、殺したりできるほどだ。
その泡が弾ける瞬間、閃光すら生じるというのだから、文字通りの電光石火のパンチである。ちなみに以下の動画は釣ったシャコに一撃を食らった釣り人の末路である。
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When a MANTIS SHRIMP PUNCHES A HUMAN(it forking hurts!)シャコの高速パンチの秘密 シャコの高速パンチの秘密は、強靭な筋肉ではなく、弓矢のようなバネ構造にある。
ギリギリと引き絞られた弓をパッと手放すと、弓が一瞬で元の形状に戻ろうとする。引き絞るときの仕事量と弓が元に戻るときの仕事量は同じだが、後者は一瞬でそれが起きているので、その分爆発的なエネルギーが生じる。
シャコのパンチも同じだ。その腕には「鞍」という部分があり、それが筋肉によって引っ張られて曲げられ、バネ(つまり弓)の役割を果たす。
また「とめ具」という構造がストッパーになって、鞍のしなりを維持する。
とめ具が外されると、鞍に蓄えられたエネルギーが一気に放出され、高速パンチが飛び出すという仕組みだ。
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シャコの体の構造 / image credit:超高速運動 - JSCPB wiki
こうしたバネ構造は、カエルの足、カメレオンの舌、アリの顎、弾け飛ぶ植物の種など、ほかの生物でも見ることができる。しかしシャコのそれには少々変わったところがある。
超高速カメラで観察してみると、とめ具が解除されてから、パンチが放たれるまでに時間差があるのだ。言ってみれば、手を離した後で、弓が元に戻ろうとするまでにタイムラグがあるようなものだ。
その理由はよくわからない。しかしとめ具が解除された後で、腕の構造が二次的なとめ具として機能しているのではないかと推測されている。
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一撃でカニを吹き飛ばすシャコパンチパンチングロボットでシャコの高速パンチを再現 シャコの腕をモデルにしたパンチングロボットは、この仮説を検証するためのものだ。
水中と空気中でその動作実験を行ったところ、実際にとめ具が外れた後で、腕の構造によって急激な加速が生み出されていることが確認されたという。
本物のシャコのパンチには劣るが、それでも空気中なら秒速26メートルの高速パンチを放つことができる。これは静止状態にある車がわずか0.004秒で時速58キロまで加速するのにも相当する速さであるそうだ。
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ロボットでシャコの高速パンチを再現
なお、あえてパンチの出だしに遅れが出るような構造になっているのは、ハードパンチの負荷から腕を守るためかもしれないそうだ。
接触型のとめ具構造の場合、繰り返し利用すると摩耗してしまう。それを防ぐための二次的なとめ具かもしれないのだ。
なお昨年の研究では、抵抗が少ないはずの空気中では、意外にもシャコのパンチスピードは半分になることが確認されている。
周囲の媒体(水や空気)による抗力が、シャコの高速パンチが進化した秘密かもしれないそうだ。
References:Scientists built a tiny robot to mimic the mantis shrimp’s knock-out punch | Ars Technica / written by hiroching / edited by parumo
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