
太陽で大規模な太陽フレアが発生すると、太陽風が爆発的に放出される。「太陽嵐」は、太陽風に含まれる電磁波・粒子線・粒子が地球上に到達し、甚大な被害をもたらす現象を意味する。
次に大きな太陽嵐が発生した場合、地球全土のインターネットが壊滅し、数週から数ヶ月も機能しなくなる恐れがあるという。
そんな「インターネット・アポカリプス」を防ぐために、通信事業者はその脅威を真剣に受け止めるべきだと、アメリカの研究者が警鐘を鳴らしている。
新型コロナが地球を襲ったように、太陽嵐がインターネットを襲う 米カリフォルニア大学アーバイン校のサンギータ・アブドゥ・ジョティ助教がこの問題に関心を抱くようになったのは、世界がいかに新型コロナへの準備を怠っていたのか目の当たりにしたことがきっかけだったという。
ビル・ゲイツ氏などによって、感染症の危険性は以前から指摘されていた。それなのに国際社会は、新型コロナの出現になんら備えることなく、結局その大流行を許してしまった。
そして、それはインターネットについても同じである。インターネットのインフラは、大規模な太陽現象に対する備えがまったく欠けているのだ。
ジョティ助教が懸念しているのは、大規模な「太陽嵐」だ。SIGCOMM 2021で発表した未査読の論文によると、激しい太陽嵐が発生すれば、社会が長期間ネットに接続できなくなる「インターネットの終末」がもたらされる恐れがあると警告している。
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過去に起きた大規模な太陽嵐から学ぶべきこと 太陽嵐が厄介なのは、それが滅多に起きないことだ。それが発生する確率は10年に1.6~12%程度でしかないと彼女は論文内で指摘する。
だが確かに起きる。
また1989年3月に発生した太陽嵐は、それより小型だったが、カナダのケベック州全土を9時間にわたり停電させた。
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The Geomagnetic Storm of 1989陽嵐で大陸全土のインターネットが接続不能に 当時と現在で大きく違うのは、今日の社会がインターネットに大きく依然しているという点だ。そこでジョティ助教は、インターネットが太陽嵐に対してどのくらい弱いのか調べている。
それによると、インターネットを支える光ファイバー自体は、地磁気によって生じる電流の影響を受けないため、局地的なインターネット接続が壊滅するような危険性は低いだろうという。
問題になるのは、大陸間を結ぶ、長い海底ケーブルだ。これらには50~150キロ間隔で、光信号を増幅するための中継器が設置されている。中継器は地磁気の乱れに弱く、万が一1つでも故障してしまえば、海底ケーブル全体が使えなくなる恐れがある。
そして、ある地域で複数の海底ケーブルが通信不能になってしまえば、大陸全土がインターネットに接続できなくなるような事態も起こりうるのだという。
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日本にも影響が。特に高緯度の国が危険 また低緯度にある国々(赤道寄りの国)に比べて、高緯度にある国々(北・南極寄りの国)は特に影響を受けやすいという。
したがって大規模な太陽嵐が地球に直撃した場合、真っ先にインターネットから遮断されてしまう可能性が高いのは、アメリカやイギリスといった高緯度にある地域となる。
そうなった場合、インフラが復旧するまでにどのくらいの時間を要するのか正確に予測することは難しいとしながらも、ジョティ助教は、数週間から数ヶ月にわたってインターネットに接続できなくなることもありうるだろうと述べている。
それが社会に与える影響は甚大なものになる。たとえば、仮にアメリカで1日だけネットが使えなくなっただけで、70億ドル(7700億円)以上の経済的影響が出ると推定されている。
もしそれが数ヶ月続いたとしたら? それはただネットショッピングができなくて不便ですむ話ではない。
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Massive solar storms may shut down the Internet across the world次の太陽嵐に備えなければならない そのような事態を避けるために、通信網の運用業者は太陽からの脅威をもっと真剣に受け止める必要がある。
たとえば手始めに、影響を受けやすい高緯度地域のケーブルを増やしたり、大規模ネットワーク障害を念頭に置いた耐久性試験などを開発するのがいいだろうとジョティ助教は提案する。
もし太陽嵐が発生してしまったとき、それが地球に到来するまでには13時間の猶予があるという。
次に大きな太陽嵐が到来したとき、私たちはその猶予を活かして人々の暮らしを守ることができるだろうか?
References:_SIGCOMM_21__Internet_Resilience / An 'Internet apocalypse' could ride to Earth with the next solar storm, new research warns | Live Science / written by hiroching / edited by parumo
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次に大きな太陽嵐が発生した場合、地球全土のインターネットが壊滅し、数週から数ヶ月も機能しなくなる恐れがあるという。
そんな「インターネット・アポカリプス」を防ぐために、通信事業者はその脅威を真剣に受け止めるべきだと、アメリカの研究者が警鐘を鳴らしている。
新型コロナが地球を襲ったように、太陽嵐がインターネットを襲う 米カリフォルニア大学アーバイン校のサンギータ・アブドゥ・ジョティ助教がこの問題に関心を抱くようになったのは、世界がいかに新型コロナへの準備を怠っていたのか目の当たりにしたことがきっかけだったという。
ビル・ゲイツ氏などによって、感染症の危険性は以前から指摘されていた。それなのに国際社会は、新型コロナの出現になんら備えることなく、結局その大流行を許してしまった。
そして、それはインターネットについても同じである。インターネットのインフラは、大規模な太陽現象に対する備えがまったく欠けているのだ。
ジョティ助教が懸念しているのは、大規模な「太陽嵐」だ。SIGCOMM 2021で発表した未査読の論文によると、激しい太陽嵐が発生すれば、社会が長期間ネットに接続できなくなる「インターネットの終末」がもたらされる恐れがあると警告している。
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過去に起きた大規模な太陽嵐から学ぶべきこと 太陽嵐が厄介なのは、それが滅多に起きないことだ。それが発生する確率は10年に1.6~12%程度でしかないと彼女は論文内で指摘する。
だが確かに起きる。
1859年に起きた「キャリントン事象」と呼ばれる太陽嵐では、地球の地磁気が激しく乱れて、電線が燃え上がったり、赤道直下のコロンビアでオーロラが観察されたりした。
また1989年3月に発生した太陽嵐は、それより小型だったが、カナダのケベック州全土を9時間にわたり停電させた。
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The Geomagnetic Storm of 1989陽嵐で大陸全土のインターネットが接続不能に 当時と現在で大きく違うのは、今日の社会がインターネットに大きく依然しているという点だ。そこでジョティ助教は、インターネットが太陽嵐に対してどのくらい弱いのか調べている。
それによると、インターネットを支える光ファイバー自体は、地磁気によって生じる電流の影響を受けないため、局地的なインターネット接続が壊滅するような危険性は低いだろうという。
問題になるのは、大陸間を結ぶ、長い海底ケーブルだ。これらには50~150キロ間隔で、光信号を増幅するための中継器が設置されている。中継器は地磁気の乱れに弱く、万が一1つでも故障してしまえば、海底ケーブル全体が使えなくなる恐れがある。
そして、ある地域で複数の海底ケーブルが通信不能になってしまえば、大陸全土がインターネットに接続できなくなるような事態も起こりうるのだという。
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日本にも影響が。特に高緯度の国が危険 また低緯度にある国々(赤道寄りの国)に比べて、高緯度にある国々(北・南極寄りの国)は特に影響を受けやすいという。
したがって大規模な太陽嵐が地球に直撃した場合、真っ先にインターネットから遮断されてしまう可能性が高いのは、アメリカやイギリスといった高緯度にある地域となる。
緯度から推測すると、おそらくは日本の北部も影響を受けやすい部類だろう。
そうなった場合、インフラが復旧するまでにどのくらいの時間を要するのか正確に予測することは難しいとしながらも、ジョティ助教は、数週間から数ヶ月にわたってインターネットに接続できなくなることもありうるだろうと述べている。
それが社会に与える影響は甚大なものになる。たとえば、仮にアメリカで1日だけネットが使えなくなっただけで、70億ドル(7700億円)以上の経済的影響が出ると推定されている。
もしそれが数ヶ月続いたとしたら? それはただネットショッピングができなくて不便ですむ話ではない。
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Massive solar storms may shut down the Internet across the world次の太陽嵐に備えなければならない そのような事態を避けるために、通信網の運用業者は太陽からの脅威をもっと真剣に受け止める必要がある。
たとえば手始めに、影響を受けやすい高緯度地域のケーブルを増やしたり、大規模ネットワーク障害を念頭に置いた耐久性試験などを開発するのがいいだろうとジョティ助教は提案する。
もし太陽嵐が発生してしまったとき、それが地球に到来するまでには13時間の猶予があるという。
次に大きな太陽嵐が到来したとき、私たちはその猶予を活かして人々の暮らしを守ることができるだろうか?
References:_SIGCOMM_21__Internet_Resilience / An 'Internet apocalypse' could ride to Earth with the next solar storm, new research warns | Live Science / written by hiroching / edited by parumo
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