我々の宇宙は高度な文明を持つ知的生命体の実験により作られたものであると推測するハーバード大学の科学者
 天文学における最大の謎は「ビッグバンの前に何が起きたのか?」だ。

 現在の一般的な宇宙論によれば、この宇宙はビッグバン(約150億年前に起こった大爆発)によって始まったとされているが、他にも宇宙の始まりに関する様々な仮説が提唱されている。


 真空のゆらぎから生まれたという説、収縮と膨張を繰り返しているという説、ブラックホール内部で物質が崩壊して誕生したとする説などなど。

 だが、ハーバード大学の科学者の推測はかなりドラマチックだ。どこかの高度な知的生命体によって我々の宇宙が人工的につくり出されたというのだ。

地球外知的生命体が宇宙を作りだしたという説 いくら高度な文明を持った知的生命体とは言え、宇宙を作り出すことなど本当に可能なのか?

 だがハーバード大学の天文学者アヴィ・ローブ教授は、「宇宙をつくる力は、文明の発達レベルを測る新しい尺度」であると『Scientific American』で論じている。

 この視点に照らすなら、私たち地球人の文明はほとんど最低レベルだ。だから星空を見上げるときは、謙虚な気持ちになるべきかもしれない。

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遺伝子システムのような人工宇宙 仮に、宇宙のどこかに、人工的に宇宙を生み出せるくらいにまで科学技術が進んだ文明があったとしよう。

 そう考えると、私たちが暮らしている宇宙の起源を説明できるばかりか、宇宙(つまり人工宇宙をつくれる文明がある宇宙)は、遺伝子を伝えることで何世代にもわたり維持される生物学的システムのようなものということになる。

 そうしたダーウィンの自然選択を思わせる宇宙のシステムは、高度文明の宇宙を生み出す力が原動力となって動き続けている。

 今の私たちにそのような芸当は到底真似できず、その意味で地球文明は”不毛”ということになる。

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文明レベルの新しい指標 1964年、ソ連の天文学者ニコライ・カルダシェフは、「宇宙文明の発達レベルは、その文明が利用できるエネルギーによって測ることができる」と提唱した。

 この「カルダシェフ・スケール」によれば、人類のように惑星のエネルギーを利用できたところで、最低レベルの文明でしかない。


 銀河全体のエネルギーを利用できるようになって、ようやく最高クラスの文明に到達したとみなされるのだ。

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カルダシェフ・スケール / image credit:WIKI commons

 だがローブ教授は、先ほどの議論を踏まえて、ある文明の発達レベルは、「それを誕生させた物理的条件を再現できるかどうか」で測るべきだと提唱する。

 今のところ地球文明は未熟でCクラスだ。それどころか、地球を汚染し、自らの首を絞めている状態では、それ以下のDクラスに分類されるかもしれない。

 Bクラスの文明なら、太陽などの恒星に頼ることなく、自分たちが暮らしている環境を再現することができる。

 そして最高のAクラスの文明は、自分たちが誕生した宇宙的条件を再現できる。つまり人工的に宇宙をつくり出せるのだ(なお、小さな領域に高密度のダークエネルギーを生成するなど、これに関連する物理学的議論はあるとのことだ)。

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Aクラス文明は宇宙にたった1つ ローブ教授によると、宇宙にAクラス文明はたった1つしかない可能性が濃厚であるという。

 そうした文明1つが出現する条件すら滅多なことでは揃わないと考えられるのに、複数となればさらに確率は低くなるし、そもそも宇宙をつくり出せる文明は1つあれば事足りるのだ。

 宇宙のダーウィン的自然選択にとってのメリットがない以上、もっとも一般的な宇宙はAクラス文明たった1つをかろうじて誕生させられるものだろうと、ローブ教授は推測する。

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地球文明レベルは思っているより低かった 地球文明レベルはAクラスには程遠い。私たちがそれほど傑出した存在ではないという話は驚きだろうか?

 ローブ教授が教鞭をとるハーバード大学で、学生に「あなたたちの半分は平均以下だ」と話すと、非常に動揺するのだという。


 だが統計学的に考えるのなら、どんな文明も、宇宙に存在する全文明の平均レベル付近である可能性が高い。それが現実なのだ。

 ローブ教授は最近、AIなどの最先端テクノロジーを利用して地球外文明の存在を証明する「ガリレオ・プロジェクト」を発足させた。それは、私たちをはるかに凌駕する高度文明が見つかる可能性を認めるということだ。

 でなければ、かつて地上を支配しながら宇宙から飛来した小惑星によって滅んだ恐竜のように、プロジェクトはハッピーエンドを迎えられないかもしれない。

References:Was Our Universe Created in a Laboratory? - Scientific American / written by hiroching / edited by parumo

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