
回復不能な病となり、苦しむだけの人生しか残されていないのであれば、人としての尊厳を保ったまま死を迎えたいと願う人も存在する。事実、海外では死ぬ権利を認め、医師の自殺幇助などによる「積極的安楽死」を認める国が増えている。
2016年、オーストラリア、ビクトリア州で積極的安楽死の合法化が可決された際、同国のフィリップ・ニッツチク医師は、苦しむことなく安らかに、速やかに死の眠りにつける自殺幇助マシーン「サルコ(Sarco)」を開発したことは前回お伝えしたとおりだ。
3Dプリンターで印刷でき、どこにでも持ち運び可能な冬眠ポッドのようなサルコが、今回、スイスで一般人による運用が法的に承認されたそうだ。
積極的安楽死とは? 一口に安楽死と言ってもいくつか種類がある。
たとえば、治る見込みのない病気の延命治療をやめて、死を早めるのが「消極的安楽死」だ。苦痛を和らげる措置を行うことで、結果的に死が早まるのが「間接的安楽死」。そして医師などの幇助によって意図的に死にいたる処置がとられることを、「積極的安楽死」という。
1942年より積極的安楽死が認められていたスイスでは、医師による自殺幇助は決して特別なことではない。
安楽死を認められた患者は、医師は液体の薬剤を注入してもらう。数分で昏睡状態となり、その後死に至る。
ただし誰でも積極的安楽死を認められるというわけではなく、治る見込みのない末期の病に苦しんでいるなどの条件がある。
限られた国々であるとはいえ、積極的安楽死が認められているのはスイスだけではない。オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、カナダ、アメリカ(6つの州)、オーストラリア(ビクトリア州)に続き、2021年6月にスペイン、11月にニュージーランドで合法となった。
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photo by iStock
速やかで安らかな死を約束する自殺幇助マシーン「サルコ」 サルコ(Sarco)は、自らの手で積極的安楽死を迎えるための装置だ。それを作動させるには、内側に入り、本人が自らの手でスイッチを入れなければならない。
一度作動すれば、ポッド内部には窒素が充満し、30秒ほどで酸素濃度が1%にまで低下。使用者は5~10分ほどで意識を失い、死にいたる。
非営利団体「Exit International」のフィリップ・ニッチェ博士によると、直接の死因は、「低酸素症」と「低炭酸症」によるものだが、息苦しさは特に感じないそうだ。
それどころか意識を失う前、使用者はやや混乱し、軽い多幸感を感じる場合もあるという。
3Dプリンターで作れるサルコはどこにでも設置できる。その気になれば、平和的な風景が広がる自然の中で、人生の最後を迎えることもできるということだ。
[動画を見る]
(Re)design Death: Sarcoサルコのスイス国内での使用が法的に認められる Exit Internationalによると、これをスイス国内で使用することについて法的な問題がないか、医療審査委員会に問い合わせていたが、最近になって特に問題はないことがわかり、法的な審査に合格したという。
ただし、サルコが実際に使われるのは2022年以降のことで、コミュニケーションやインフォームド・コンセントに必要なカメラなどの機器は、これから取り付けられることになるという。
また将来的にはAIを導入することで、専門の医師が立ち会わなくても、使用希望者の精神状態を診断できるようにする予定であるという。
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なおスイスでは、2020年におよそ1300件の積極的安楽死(自殺幇助)が行われている。
治る見込みのない病に冒されたとき、己の尊厳を保つための選択肢として、安楽死を受け入れる人々が増えているようだ。
誰にでも必ず死は訪れる。それがどんな形になるのかはわからないが、人生の最期をどう迎えたいのか?また、人の終末期にどこまで治療を行うのが正解なのか?人間の根源に関わる問題なだけに、闊達に議論されるべきだろう。
References:Assisted-Suicide Chamber Approved by Authorities in Switzerland / written by hiroching / edited by parumo
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2016年、オーストラリア、ビクトリア州で積極的安楽死の合法化が可決された際、同国のフィリップ・ニッツチク医師は、苦しむことなく安らかに、速やかに死の眠りにつける自殺幇助マシーン「サルコ(Sarco)」を開発したことは前回お伝えしたとおりだ。
3Dプリンターで印刷でき、どこにでも持ち運び可能な冬眠ポッドのようなサルコが、今回、スイスで一般人による運用が法的に承認されたそうだ。
積極的安楽死とは? 一口に安楽死と言ってもいくつか種類がある。
たとえば、治る見込みのない病気の延命治療をやめて、死を早めるのが「消極的安楽死」だ。苦痛を和らげる措置を行うことで、結果的に死が早まるのが「間接的安楽死」。そして医師などの幇助によって意図的に死にいたる処置がとられることを、「積極的安楽死」という。
1942年より積極的安楽死が認められていたスイスでは、医師による自殺幇助は決して特別なことではない。
安楽死を認められた患者は、医師は液体の薬剤を注入してもらう。数分で昏睡状態となり、その後死に至る。
ただし誰でも積極的安楽死を認められるというわけではなく、治る見込みのない末期の病に苦しんでいるなどの条件がある。
限られた国々であるとはいえ、積極的安楽死が認められているのはスイスだけではない。オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、カナダ、アメリカ(6つの州)、オーストラリア(ビクトリア州)に続き、2021年6月にスペイン、11月にニュージーランドで合法となった。
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速やかで安らかな死を約束する自殺幇助マシーン「サルコ」 サルコ(Sarco)は、自らの手で積極的安楽死を迎えるための装置だ。それを作動させるには、内側に入り、本人が自らの手でスイッチを入れなければならない。
一度作動すれば、ポッド内部には窒素が充満し、30秒ほどで酸素濃度が1%にまで低下。使用者は5~10分ほどで意識を失い、死にいたる。
非営利団体「Exit International」のフィリップ・ニッチェ博士によると、直接の死因は、「低酸素症」と「低炭酸症」によるものだが、息苦しさは特に感じないそうだ。
それどころか意識を失う前、使用者はやや混乱し、軽い多幸感を感じる場合もあるという。
3Dプリンターで作れるサルコはどこにでも設置できる。その気になれば、平和的な風景が広がる自然の中で、人生の最後を迎えることもできるということだ。
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(Re)design Death: Sarcoサルコのスイス国内での使用が法的に認められる Exit Internationalによると、これをスイス国内で使用することについて法的な問題がないか、医療審査委員会に問い合わせていたが、最近になって特に問題はないことがわかり、法的な審査に合格したという。
ただし、サルコが実際に使われるのは2022年以降のことで、コミュニケーションやインフォームド・コンセントに必要なカメラなどの機器は、これから取り付けられることになるという。
また将来的にはAIを導入することで、専門の医師が立ち会わなくても、使用希望者の精神状態を診断できるようにする予定であるという。
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なおスイスでは、2020年におよそ1300件の積極的安楽死(自殺幇助)が行われている。
治る見込みのない病に冒されたとき、己の尊厳を保つための選択肢として、安楽死を受け入れる人々が増えているようだ。
誰にでも必ず死は訪れる。それがどんな形になるのかはわからないが、人生の最期をどう迎えたいのか?また、人の終末期にどこまで治療を行うのが正解なのか?人間の根源に関わる問題なだけに、闊達に議論されるべきだろう。
References:Assisted-Suicide Chamber Approved by Authorities in Switzerland / written by hiroching / edited by parumo
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