
8世紀から11世紀にかけて暗躍したスカンジナビアの武装集団「バイキング」は海上からヨーロッパ各地に侵入し、歴史に大きな影響を残したと言われている。
中世アイスランドの古い韻文詩には、彼らが儀式的に行っていたとされる猟奇的で残忍な処刑法「血のワシ」についての記述がある。
まだ息のある処刑者の肺を引きずり出して鷲の翼のように広げるというもので、この処刑法が作り話なのか、実際に行われていたのかは不明だった。
だが、解剖学的な知見に基づき行われた新しい研究によれば、血のワシは当時の技術レベルでも実行可能であり、バイキングの文化に照らし合わせた結果、実際に実行されてもおかしくはないという結論に達したようだ。
猟奇的な処刑の儀式「血のワシ」 もっとも憎むべき敵に対して行われたとされる処刑の儀式「血のワシ」は、残忍さや血生臭さで知られるバイキングでもとりわけ酷い処刑法だ。
この処刑法では、犠牲者の背中を切り開き、背骨から肋骨を切り離す。さらに、その傷口から肺を取り出して、外に広げる。
血のワシと呼ばれているのは、取り出された肺が最後にふくらむ様子が、羽ばたく鷲の翼を思わせるからだ。
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image credit:Vikings - King Aelle's Death Blood Eagle / Ending Scene
ただの伝説なのか?それとも実際に行われていたのか? 強烈なインパクトゆえに、最近ではゲーム『アサシンクリード』やスウェーデンのホラー映画『ミッドサマー』にも取り上げられた。
しかし専門家はそれが実際に行われていたかどうかを疑っているという。
考古学的な証拠は見つかっていないし、バイキングが残した記録もない。ただ北欧のスカルド詩に詠まれているだけなのだ。
それゆえに、難解な詩が誤解されて伝わったか、北欧の異端者を野蛮人と貶めるためにキリスト教徒によって語られたに過ぎないと考える専門家もいる。
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image credit:blood eagle
解剖学的に血のワシは可能なのかを検証 そこで今回、アイスランド大学のルーク・ジョン・マーフィー氏らの研究チームが、の恐るべき処刑法について、新しい視点から調査を行なっている。
つまり、「現実に行われていたかどうか?」ではなく、「可能だったかどうか?」という視点だ。
『Speculum』(22年1月号)に掲載された研究では、現代の解剖学と生理学の知識に基づいて、中世の儀式に関する9つの記述を分析。
その結果、簡単な儀式ではないが、当時の技術であれば実行は可能だったろうと結論づけている。
マーフィー氏らは、背中から肋骨を切り離す手術道具には、ヤリの穂先が使われたと考えている。
それらしい武器なら、スウェーデンのゴットランド島で発見された血のワシを描写したらしき石碑にも刻まれている。
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ゴットランド島で発見された血のワシを描写したかのような石碑 / image credit:WIKI commons
だが残念(?)ながら、摘出された肺が翼のように羽ばたく瞬間は見られなかったはずだ。どんなに慎重に処刑を行ったとしても、犠牲者はすぐに死んでしまっただろうからだ。
そのため、肺を取り出し、翼のように広げるというプロセスは、死体に対して行われたと考えられる。バイキングが死体に行っていた恐ろしい儀式 たとえ生きていなくても、人間の内臓を引き摺り出して広げるなど、現代人の感覚では考えられないことだ。
だが、考古学的・歴史的な証拠から考えれば、バイキングが血のワシを行なっていたとしても、特に不自然ではないのだという。彼らは、派手な儀式を通じて、人間や動物の死体に手を加えることがあったという。
たとえば、ストックホルムから30キロ西にあるバイキングの都市遺跡「ビルカ」では、身なりのいい貴婦人の骸骨が発見されている。
発見当時、貴婦人の首は切断され、腕と胴体の間に挟んでおかれていた。どうやら斬首によってアゴが破壊されたらしく、その部分はブタのもので代用されていた。
バイキングにこうした猟奇的な習慣があったのは、彼らが自分たちのイメージを重んじていたからだ。それを守るためなら、猟奇的な行為も厭わなかった。
そんな彼らにとっても、血のワシはとりわけ恐ろしい処刑だったかもしれない。血のワシのターゲットになるのは、自分の父親を屈辱的な方法で殺した相手だったと伝えられている。
中世アイスランドの古ノルド語による散文作品群「サガ」は、蛇の穴に投げ込む、建物に火をつける、腸を取り出して釘で柱に打ち付けるなど、いくつか恐るべき処刑法を伝えているが、血のワシについては身内が失った名誉を回復するための手段と描かれている。
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蛇の穴に投げ込まれて死ぬ人を描いた彫刻 image credit:WIKI commons
血のワシが現実に行われていた可能性は高い 血のワシは、当時の技術で実行可能だったし、バイキングの文化や習慣に照らしても何ら違和感はない。
こうしたことを踏まえ、マーフィー氏らは、血の鷲が実際に行われていた可能性は高いと主張する。
それは名誉を重んじるバイキングの、文化的執着を反映したもので、一度目にすれば語らずにはいられない血生臭い処刑法であったとのことだ。
References:Brutal Viking 'blood eagle' ritual execution was anatomically possible –new research / written by hiroching / edited by parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
中世アイスランドの古い韻文詩には、彼らが儀式的に行っていたとされる猟奇的で残忍な処刑法「血のワシ」についての記述がある。
まだ息のある処刑者の肺を引きずり出して鷲の翼のように広げるというもので、この処刑法が作り話なのか、実際に行われていたのかは不明だった。
だが、解剖学的な知見に基づき行われた新しい研究によれば、血のワシは当時の技術レベルでも実行可能であり、バイキングの文化に照らし合わせた結果、実際に実行されてもおかしくはないという結論に達したようだ。
猟奇的な処刑の儀式「血のワシ」 もっとも憎むべき敵に対して行われたとされる処刑の儀式「血のワシ」は、残忍さや血生臭さで知られるバイキングでもとりわけ酷い処刑法だ。
この処刑法では、犠牲者の背中を切り開き、背骨から肋骨を切り離す。さらに、その傷口から肺を取り出して、外に広げる。
血のワシと呼ばれているのは、取り出された肺が最後にふくらむ様子が、羽ばたく鷲の翼を思わせるからだ。
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image credit:Vikings - King Aelle's Death Blood Eagle / Ending Scene
ただの伝説なのか?それとも実際に行われていたのか? 強烈なインパクトゆえに、最近ではゲーム『アサシンクリード』やスウェーデンのホラー映画『ミッドサマー』にも取り上げられた。
しかし専門家はそれが実際に行われていたかどうかを疑っているという。
考古学的な証拠は見つかっていないし、バイキングが残した記録もない。ただ北欧のスカルド詩に詠まれているだけなのだ。
それゆえに、難解な詩が誤解されて伝わったか、北欧の異端者を野蛮人と貶めるためにキリスト教徒によって語られたに過ぎないと考える専門家もいる。
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image credit:blood eagle
解剖学的に血のワシは可能なのかを検証 そこで今回、アイスランド大学のルーク・ジョン・マーフィー氏らの研究チームが、の恐るべき処刑法について、新しい視点から調査を行なっている。
つまり、「現実に行われていたかどうか?」ではなく、「可能だったかどうか?」という視点だ。
『Speculum』(22年1月号)に掲載された研究では、現代の解剖学と生理学の知識に基づいて、中世の儀式に関する9つの記述を分析。
その結果、簡単な儀式ではないが、当時の技術であれば実行は可能だったろうと結論づけている。
マーフィー氏らは、背中から肋骨を切り離す手術道具には、ヤリの穂先が使われたと考えている。
それらしい武器なら、スウェーデンのゴットランド島で発見された血のワシを描写したらしき石碑にも刻まれている。
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ゴットランド島で発見された血のワシを描写したかのような石碑 / image credit:WIKI commons
だが残念(?)ながら、摘出された肺が翼のように羽ばたく瞬間は見られなかったはずだ。どんなに慎重に処刑を行ったとしても、犠牲者はすぐに死んでしまっただろうからだ。
そのため、肺を取り出し、翼のように広げるというプロセスは、死体に対して行われたと考えられる。バイキングが死体に行っていた恐ろしい儀式 たとえ生きていなくても、人間の内臓を引き摺り出して広げるなど、現代人の感覚では考えられないことだ。
だが、考古学的・歴史的な証拠から考えれば、バイキングが血のワシを行なっていたとしても、特に不自然ではないのだという。彼らは、派手な儀式を通じて、人間や動物の死体に手を加えることがあったという。
たとえば、ストックホルムから30キロ西にあるバイキングの都市遺跡「ビルカ」では、身なりのいい貴婦人の骸骨が発見されている。
発見当時、貴婦人の首は切断され、腕と胴体の間に挟んでおかれていた。どうやら斬首によってアゴが破壊されたらしく、その部分はブタのもので代用されていた。
バイキングにこうした猟奇的な習慣があったのは、彼らが自分たちのイメージを重んじていたからだ。それを守るためなら、猟奇的な行為も厭わなかった。
そんな彼らにとっても、血のワシはとりわけ恐ろしい処刑だったかもしれない。血のワシのターゲットになるのは、自分の父親を屈辱的な方法で殺した相手だったと伝えられている。
中世アイスランドの古ノルド語による散文作品群「サガ」は、蛇の穴に投げ込む、建物に火をつける、腸を取り出して釘で柱に打ち付けるなど、いくつか恐るべき処刑法を伝えているが、血のワシについては身内が失った名誉を回復するための手段と描かれている。
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蛇の穴に投げ込まれて死ぬ人を描いた彫刻 image credit:WIKI commons
血のワシが現実に行われていた可能性は高い 血のワシは、当時の技術で実行可能だったし、バイキングの文化や習慣に照らしても何ら違和感はない。
こうしたことを踏まえ、マーフィー氏らは、血の鷲が実際に行われていた可能性は高いと主張する。
それは名誉を重んじるバイキングの、文化的執着を反映したもので、一度目にすれば語らずにはいられない血生臭い処刑法であったとのことだ。
References:Brutal Viking 'blood eagle' ritual execution was anatomically possible –new research / written by hiroching / edited by parumo
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