アメリカ人の21%が読み書きを満足に使いこなせていない。それを支援する女性の活動
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 アメリカ教育省の全米教育統計センター(NCES)によると、アメリカの成人の21%(約4,300万人)が読み書きが満足にできない「非識字」や、読むことはできても文章の意味や内容が理解出来ない「機能的非識字」のカテゴリーに分類されるという。

 テキサス州に拠点を置く非営利団体『Reading To New Heights』の創設者ディードラ・メイベリーさんは、自身も子供の頃読み書きが満足にできないという辛い経験を抱えて育ってきた。


 自身の経験から、現在メイベリーさんは困難に直面している多くの人に、学ぶことができるチャンスを与えることができるよう組織を設立し、献身的な支援を提供している。

子供の頃、読み書きに苦労していた女性 7人きょうだいの1人として生まれたディードラ・メイベリーさんは、両親が軍事基地で兵士たちの世話をする仕事をしていたことから、何度も引っ越しをする生活を余儀なくされた。

 読み書きが十分にできず苦労していたメイベリーさんは、その事実を恥ずかしく思い、周りに悟られてからかわれたりしないよう、必死で隠し続けたという。

 特殊教育を受け、高校卒業後は更なる読解力向上のために組織の助けを求めたが、小学生を対象とする組織の支援は提供してもらうことができなかった。

 かといって、1対1の個別指導は高額となるため、当時のメイベリーさんにとって経済的に手が届かなかった。

 「いつかきっと、普通にできるようになってみせる」そう決心しながら、メイベリーさんは何年にもわたり努力を続けた。

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大学で初めて機能的非識字を理解 大学に入学したメイベリーさんは、初めて「機能的非識字」とは何かを知り、理解した。

 非識字はごく簡単な文章の読み書きや計算もできない状態を指すが、「機能的非識字」は文字読むことはできても文章の意味や内容が理解出来ない状態、ある程度の読解力があっても完全に理解することが困難な状態のことだ。

 メイベリーさんは、自身の機能的非識字状態を克服するため、父親の大きな助けを得て大学で猛勉強をした。

 そして、なんとか大学を卒業。コンプレックスを抱えていたメイベリーさんにとって、これほど自分を誇りに思えた瞬間はなかったという。

 しかし、大学を卒業後も読み書きでは苦労し続けた。


 仕事やその他の機会を逃し、再び自分の能力に限界を感じたメイベリーさん。そんな時、1人の友人(認定教育者)との出会いが彼女を変えた。

 メイベリーさんが、自分の問題について勇気を出して打ち明けると、彼女は読み書きの指導を提供してくれたのだ。数年後には、彼女に個人的なレッスンを受ける余裕もできた。

 「他人より読み書きが不十分」という自尊心の欠如によって、心が折れそうになったり社会生活を送ることに不安を覚えた気持ちを癒すために、メイベリーさんはいつも映画鑑賞をして、人との関係の築き方や恐怖・限界・絶望に立ち向かう勇気を得ていたそうだ。

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image credit:Reading To New Heights

成人した読み書きが不十分な人を助けるための組織を設立 自分を指導してくれる友人によって、希望や自信を与えられたメイベリーさんは、自分と同じように機能的に読み書きができない大人のために、助けになる何かをしたいと強く思うようになり、2020年3月に別の友人と一緒に非営利団体『Reading To New Heights』を立ち上げた。

 コロナによるパンデミックの間は事業の閉鎖を余儀なくされたが、メイベリーさんの活動意志は固い。

 『Reading To New Heights』は、認定された教育者との1対1による個別指導セッションで、大人に読書の基礎を教える組織であり、コロナ禍の現在はリモートレッスンも行っているという。

 これらのサービスは無料で提供されており、それらを必要とする人は誰でもアクセスできる。
非識字や機能的非識字は誰にでも起こりうることですが、低所得者や十分な支援を受けていない有色人種のコミュニティでは、それが原因で教育や収入、職場での昇進の機会が制限される可能性が高くなります。

読書の基礎を身に着けることを支援していくことによって、成人学習者は非識字による心理的・環境的な制約を克服することができるのです。
 『Reading To New Heights』の活動が米メディア「Fox 4 News」で取り上げられてからは、これまで3人だった成人プログラム参加者が20人に増加した。


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 全米に4300万人いると推定されている読み書きが不十分な成人を、今後も助けていくことに尽力し、組織が成長を続けることを望んでいるメイベリーさんは、今年のTory Burch Foundationトリー・バーチ財団)のエンパワードウーマンの1人に選ばれたそうだ。

 メイベリーさんが受け取る寄付は、『Reading To New Heights』に授与されることになる。これについて、メイベリーさんはこのように話している。
皮肉なことです。私が恥ずかしくて何年も隠さなければならないと思っていたことをオープンにしたことで、私自身が解放され、希望をもたらし、他の人を助ける方法を提供してくれたのです

私の体験談が、他の人が勇気をもって一歩を踏み出す手助けになればと思っています。
written by Scarlet / edited by parumo

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