水中最強のシャチが獲物であるクジラを助ける。体に絡みついたロープをほどいて去っていく
 時に陸上の捕食獣が草食動物の子供を助けるかのように、水中最強の捕食獣シャチも、本来なら獲物であるはずのクジラを助けることもあるようだ。

 シャチにも苦境にある他者を助けようという気持ちがあるのかもしれない。


 オーストラリアのブレマー湾で、シャチの群れがロープに絡んで弱っていたザトウクジラから、ロープをほどいてあげている場面が目撃されたのだ。

 

ロープが絡まり弱っているクジラを発見 それは1月10日の朝のこと。オーストラリア南西部、西オーストラリア州にあるブレマー湾を船で航行していたホエール・ウォッチ・ウェスタン・オーストラリアの調査隊の船は長さ白く大きい影が駆け抜けていくのを目撃した。

 7メートルほどの白い影がくるっと反転すると、背びれと尾びれが見えた。 ザトウクジラだ。

 南半球は今、夏真っ盛りだ。本来なら南極でエサを食べているはずのザトウクジラが、夏のブレマー湾を泳いでいる理由は不明だった。

 よく観察してみると、体に付着したクジラジラミや痩せた体つきから、あまり健康ではないらしいことがわかった。

 その原因はすぐに判明する。ザトウクジラが尾びれを持ち上げたとき、漁業用ロープが絡まっているのが見えたからだ。

 調査隊は、背後にオスのシャチが迫っていることに気がついた。更に別のオスのシャチも現れた。


 ロープで動けないクジラはここでシャチの餌食となり人生を終えるのか...調査隊の誰もがそう思っていた矢先、事態は意外な展開を見せる。

[画像を見る]

シャチがクジラのロープを外した? なんと、2頭目のシャチが猛スピードでクジラに接近すると、尾びれの真下に入って、絡んだロープを見たのだ。

 さらに別のシャチも集まり、クジラに接近しては同じようなことを行なっていた。

[画像を見る]

 ついに群れのリーダーと思われるメスがやってきて、ザトウクジラに近づくと白波を立てた。すると信じられないことが起きた。

 体に絡まっていたロープが外れたのだ。

 さらに驚くべきことが起きる。ロープが外れると、シャチたちはクジラに何もせず、そこから去っていったのである。

[動画を見る]

Orca Approach Entangled Humpback Whaleシャチは本当にクジラを救いたかったのか? シャチがいなくなった後、ザトウクジラはしばらく船の近くを周回していた。

 その体を見てみると、ロープによる傷がかなり酷いものであることがわかったが、それでもロープはほとんど取れていたという。

 本当にシャチはザトウクジラを助けたのだろうか?

 もしかしたら、痩せ衰えたザトウクジラを狩っても、それに見合う栄養を取ることはできないと判断した可能性はある。

 それでも調査グループとっては、忘れられない印象的な出来事だったとのことだ。


 自然界では時として動物たちが人間の思いもよらない行動を示すことがある。特に高度な社会性と知能を持つ動物の行動は、驚くものばかりだ。

References:Did Orca Rescue Humpback Whale? - Whale Watch Western Australia / written by hiroching / edited by parumo

画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。
編集部おすすめ