
image credit:artwork by F. Anthony
多種多様な地球の生物群がほぼ出揃ったとされるカンブリア紀には、「カンブリアンモンスター」と呼ばれる奇妙な生物が登場した。
アノマロカリスやハルキゲニア、マーレラにウィワクシアなどなど、ユニークな生物が盛りだくさんだ。
これまでオパビニア類に属する種は、唯一「オパビニア・レガリス」だけとされてきた。だがこのほど、1世紀以上ぶりに新たなオパビニア類が発見された。
2番目のオパビニア類の仲間は、これまでアノマロカリスと同じ「ラディオドンタ類」に分類されていた「ウタウロラ・コモサ(Utaurora comosa)」だ。
これまではラディオドンタ類に分類されていたウタウロラ・コモサ 新たにオパビニア類と認定されたウタウロラ・コモサは、米ユタ州にある5億年前の地層(カンブリア紀ウィーラー層)から発見された。
その調査結果が報告された2008年当時、化石の特徴からラディオドンタ類に分類され、現在にいたっていた。
アノマロカリスをはじめとするラディオドンタ類(放射歯目)は、その名称の由来となった放射状の歯を特徴とする奇妙な姿の生物だ。
一方、オパビニア類は、生物として初めて後ろ向きの口を発達させたグループだ。それ以外にも、全身分節化の萌芽とされる背中の節の溝や、付属肢の萌芽とされる側面のヒレなど、興味深い特徴がある。
両グループは合わせて「ディノカリダ綱(dinocarids)」という単系統グループを形成するとされており、ウタウロラにはラディオドンタ類とオパビニア類両方の特徴がある。
しかし今回の研究に参加したハーバード大学のスティーブン・ペイツ氏は、学生時代にウタウロラの標本を目にしたとき、ラディオドンタ類とは違うのではと感じていたという。
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5億年前の地層から発見されたウタウロラ・コモサの化石 / image credit: Stephen Pates et al., Proceedings Of The Royal Society B(2022)分類が変更されウタウロラ・コモサはオパビニア類に これまでのところ、前部と目の構造がきちんと保存されたウタウロラの化石は見つかっていない。
これは重要なことだ。なぜならオパビニア類の大きな特徴が、5つの目と頭部の吻だからだ。その代わりに、背中に沿った体節の溝や1対のノコギリ状の尾ビレはよく保存されている。
そこでペイツ氏らは系統学的な分析法で、ウタウロラを節足動物やラディオドンタ類などの化石43点と現生11種の標本を比較。その結果、ウラウロラがもっとも近いのはオパビニア類であることが明らかになった。
幸いなことに、ここ10数年でいくつか新たなラディオドンタ類の化石が発見され、生物種の系統学的ツールも充実した。両グループのわずかな違いを確認できるようになったのは、そのおかげだ。
形態だけで考えるなら、ウタウロラはラディオドンタ類かもしれない。だが今回の分析では、ウタウロラがオパビニア類である可能性は68%裏付けられた一方、ラディオドンタ類である可能性は0.04%しか裏付けられなかったという。
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5億年前の地層から発見されたウタウロラ・コモサの化石 / image credit: Stephen Pates et al., Proceedings Of The Royal Society B(2022)
これまで、唯一無二のオパビニア類に分類されていた、「オパビニア・レガリス」はカナダ、ブリティッシュコロンビア州のカンブリア紀バージェス頁岩で発掘された。
一方、ウタウロラもまたカンブリア紀の地層から発見されたが、オパビニア・レガリスより数百万年後の時代の生物であることがわかっている。
ペイツ氏によると、このことはオパビニア・レガリスはオパビニア類唯一の種ではなく、実際には複数の種が存在していると考えられるという。
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オパビニア・レガリス
この研究は『Proceedings of the Royal Society B Biological Sciences』(2022年2月9日付)に掲載された。
古代生物って本当に魅力的で、興味深い造形が多いから、今後も様々な発見を待ちのぞむと共に新たな真実が解明されるといいね。
References:New opabiniid diversifies the weirdest wonders of the euarthropod stem group | Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences / “Weird Wonder” – A Century Later, Researchers Describe Second Opabiniid Ever Discovered / written by hiroching / edited by parumo
追記:(2022/02/14)画像の説明文を一部訂正して再送します。
(2022/07/05)本文を一部訂正して再送します。
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多種多様な地球の生物群がほぼ出揃ったとされるカンブリア紀には、「カンブリアンモンスター」と呼ばれる奇妙な生物が登場した。
アノマロカリスやハルキゲニア、マーレラにウィワクシアなどなど、ユニークな生物が盛りだくさんだ。
5つ目の頭部からハサミのついた吻が伸び、両脇にいくつものヒレとエラがある「オパビニア類」もその1種である。
これまでオパビニア類に属する種は、唯一「オパビニア・レガリス」だけとされてきた。だがこのほど、1世紀以上ぶりに新たなオパビニア類が発見された。
2番目のオパビニア類の仲間は、これまでアノマロカリスと同じ「ラディオドンタ類」に分類されていた「ウタウロラ・コモサ(Utaurora comosa)」だ。
これまではラディオドンタ類に分類されていたウタウロラ・コモサ 新たにオパビニア類と認定されたウタウロラ・コモサは、米ユタ州にある5億年前の地層(カンブリア紀ウィーラー層)から発見された。
その調査結果が報告された2008年当時、化石の特徴からラディオドンタ類に分類され、現在にいたっていた。
アノマロカリスをはじめとするラディオドンタ類(放射歯目)は、その名称の由来となった放射状の歯を特徴とする奇妙な姿の生物だ。
一方、オパビニア類は、生物として初めて後ろ向きの口を発達させたグループだ。それ以外にも、全身分節化の萌芽とされる背中の節の溝や、付属肢の萌芽とされる側面のヒレなど、興味深い特徴がある。
両グループは合わせて「ディノカリダ綱(dinocarids)」という単系統グループを形成するとされており、ウタウロラにはラディオドンタ類とオパビニア類両方の特徴がある。
しかし今回の研究に参加したハーバード大学のスティーブン・ペイツ氏は、学生時代にウタウロラの標本を目にしたとき、ラディオドンタ類とは違うのではと感じていたという。
[画像を見る]
5億年前の地層から発見されたウタウロラ・コモサの化石 / image credit: Stephen Pates et al., Proceedings Of The Royal Society B(2022)分類が変更されウタウロラ・コモサはオパビニア類に これまでのところ、前部と目の構造がきちんと保存されたウタウロラの化石は見つかっていない。
これは重要なことだ。なぜならオパビニア類の大きな特徴が、5つの目と頭部の吻だからだ。その代わりに、背中に沿った体節の溝や1対のノコギリ状の尾ビレはよく保存されている。
そこでペイツ氏らは系統学的な分析法で、ウタウロラを節足動物やラディオドンタ類などの化石43点と現生11種の標本を比較。その結果、ウラウロラがもっとも近いのはオパビニア類であることが明らかになった。
幸いなことに、ここ10数年でいくつか新たなラディオドンタ類の化石が発見され、生物種の系統学的ツールも充実した。両グループのわずかな違いを確認できるようになったのは、そのおかげだ。
形態だけで考えるなら、ウタウロラはラディオドンタ類かもしれない。だが今回の分析では、ウタウロラがオパビニア類である可能性は68%裏付けられた一方、ラディオドンタ類である可能性は0.04%しか裏付けられなかったという。
[画像を見る]
5億年前の地層から発見されたウタウロラ・コモサの化石 / image credit: Stephen Pates et al., Proceedings Of The Royal Society B(2022)
これまで、唯一無二のオパビニア類に分類されていた、「オパビニア・レガリス」はカナダ、ブリティッシュコロンビア州のカンブリア紀バージェス頁岩で発掘された。
一方、ウタウロラもまたカンブリア紀の地層から発見されたが、オパビニア・レガリスより数百万年後の時代の生物であることがわかっている。
ペイツ氏によると、このことはオパビニア・レガリスはオパビニア類唯一の種ではなく、実際には複数の種が存在していると考えられるという。
[動画を見る]
オパビニア・レガリス
この研究は『Proceedings of the Royal Society B Biological Sciences』(2022年2月9日付)に掲載された。
古代生物って本当に魅力的で、興味深い造形が多いから、今後も様々な発見を待ちのぞむと共に新たな真実が解明されるといいね。
References:New opabiniid diversifies the weirdest wonders of the euarthropod stem group | Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences / “Weird Wonder” – A Century Later, Researchers Describe Second Opabiniid Ever Discovered / written by hiroching / edited by parumo
追記:(2022/02/14)画像の説明文を一部訂正して再送します。
(2022/07/05)本文を一部訂正して再送します。
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