
極寒の海の中で、死を覚悟した漁師に救いの手を差し伸べたのは、1頭のアザラシだった。
人懐こいアザラシは男性のそばを離れず、一緒に泳ぎ続けてくれた。アザラシの励ましのおかげで男性は、石油プラットフォームまで5時間かけて泳ぎ、無事救助された。『abc7』などが伝えている。
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Boater who fell into the ocean off Santa Barbara coast swam FIVE HOURS to an oil rig nudged by seal漁師がボートから転落 カリフォルニア州サンタバーバラ海峡で、1月のある深夜にウニ漁をしていたスコット・トンプソンさんは、強い波に襲われバランスを崩し、ボートから海へ転落した。
Tシャツと短パン姿だったスコットさんは、急いでボートに戻ろうとしたが、ボートはモーターを動かしたままの状態だったため遠くに進んでしまい、追いつくことができなかった。
深夜の極寒の海に取り残されたスコットさんは、遠ざかっていくボートを見て呆然自失となった。妻や子供たちの姿が頭に浮かんだという。
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後のメディア取材で、スコットさんは当時の心境をこのように語っている。
大変なことになったと思いました。このまま自分はここで死ぬのかとも思いましたが、娘や息子、そして妻を残して死ぬわけにはいかない。何としてでも家に帰らなければ、と思いました。そこで、どうすべきか必死に考えていた時、大きな水しぶきの音がしたんです。アザラシと出会い、泳ぐ決意をする スコットさんは、サメが近付いて来たのかと思い、恐怖におののいた。
だが、そこにいたのは1頭の小さなゼニガタアザラシだった。水面から頭を出してスコットさんの方をキョトンとした表情で見ていたという。
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なんだか、そのアザラシが犬のように思えて、こっちにおいでと思わず呼びかけました。アザラシと共に5時間泳ぎ続け、ついに施設に到達 真っ暗な海の中で、スコットさんにとってそのアザラシは唯一の救いで、自分を励ましてくれているように感じた。
アザラシは私を見て上下に揺れ、水中に姿を消しましたが、再び水面に現れ、近くに寄ってきました。
そして、スコットさんは岸へ泳ぐよりも近い石油プラットフォーム(海上石油掘削施設)まで泳ぐことを決意した。
アザラシはその間ずっと、スコットさんと一緒に泳ぎ続けてくれた。スコットさんはアザラシに話しかけたり、歌を歌ったり、冗談をいったりしながら気を保ち続けた。
そしてついに、約5時間かけてゲイル海上石油掘削施設へと辿り着いた。
施設の職員はスコットさんを救出すると、応急処置を施し、沿岸警備隊に連絡。その後、病院に搬送されたスコットさんは低体温症の治療を受けた。
石油プラットフォームに辿り着く頃には、周りが明るくなり始めていました。今回の救助に携わった海兵隊員のポール・アマラルさんは、次のように述べた。
生きて助けを求めることができた時には、空を見上げて泣き声を出して叫びそうになったほどでした。
アザラシが仲間となり、励ましてくれたからこそ、自分は生き延びることができたのです。(スコットさん)
月も出ていない真っ暗な海を、Tシャツと短パンで長時間泳ぐことを想像しただけで、恐怖です。彼がこの試練を乗り越えたことはまさに奇跡としか言いようがありません
ちなみに、スコットさんのボートはサンタ・クルーズ島から約8km東に位置するアナカパ島で発見され、回収された。California man survives frigid five-hour night swim with a friendly seal as his guide https://t.co/xDg4DfKw0l pic.twitter.com/DA6n9nm4Ij
— New York Post (@nypost) February 18, 2022
アザラシは海の犬ともいわれており、人懐っこいアザラシがダイバーと友好関係を結ぶこともある。
スコットさんの奇跡の生還は、アザラシと出会えたことが大きかったかもしれない。暗く寒い海の中でその孤独をずっと癒し続けてくれたのだから。
written by Scarlet / edited by parumo
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