核爆発から生き残るにはどれくらいの距離が必要なのか?
 広島と長崎に原爆が落とされてから77年が経った。当時、その爆発によって多くの人々が亡くなり、生き残った人たちもひどい後遺症に苦しむことになった。


 これは人類史上、戦争で核兵器が使われた唯一の事例である。だが今日、世界にはおよそ1万3000発の核弾頭が存在するのが現実だ。

 万が一、今日や明日にでも核戦争が起きたらどうなってしまうのか?

 あくまでも仮説上の話だが、核兵器が落とされた時、どのくらいの距離にいれば生き残れるのか?また生き残るための方法が、Youtube動画に公開されている。

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What If We Have A Nuclear War?85km圏内で起きる「フラッシュ・ブラインドネス」 1発の核兵器の威力を推定するのはそう簡単ではない。天候、時間、地形、地上で爆発したのか空中で爆発したのかなど、さまざまな要因によって左右されるからだ。

 しかし一般的な話としてなら、あなたが生き残る可能性を予測することはできる。

 つまり核爆発があなたが暮らす地域でどのように広がるのか、身の毛もよだつような相互作用を推測することは可能なのだ。

 動画によれば、核爆発エネルギーの35%は「熱放射」として放出されるという。熱放射はほぼ光速と同じスピードで移動する。だから爆発が起きてまず最初に襲いかかってくるのは、眩いばかりの光と熱だ。

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 その光はあまりの眩さに、数分ほど視力が失われるほど強烈だ。これを「フラッシュ・ブラインドネス」という。


 仮に1メガトン級の核爆弾が使用されたとしよう(広島型原爆の80倍に当たるが、現代の大抵の核兵器よりずっと小型)。

 このサイズの核爆弾が爆発した場合、晴れた日なら21km内の人はフラッシュ・ブラインドネスに陥る。もし晴れた日の夜ならば、その範囲は85kmにまで広がる。

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11kmでI度熱傷、8kmでIII度熱傷 爆発地点の近くでは熱も問題となる。もしも爆発から11km離れていたとすれば、あなたは「I度熱傷」のやけどを負うだろう。これは比較的軽いものだ。10km離れていれば「II度熱傷」を負うことになる。

 しかし8kmしか離れていなかったら「III度熱傷」を負う。これは皮膚組織が破壊され、水膨れができる重い火傷だ。全身の24%以上にこれを負えば、直ちに治療しない限り生死にかかわる。

 が、こうした距離は気候や着ている服によっても変わる。白い服ならば爆発のエネルギーをいくぶんは反射してくれる。
反対に黒い服ならエネルギーを吸収してしまう。

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 そうは言っても爆発のすぐそばにいれば、何を着ていようと大差ないだろう。半径6km圏内で時速255kmの爆風(1メガトン級) 広島に原爆が落とされたとき、爆心地付近の温度は30万度だったと推定されている。火葬場の火葬炉より300倍も高温だ。ゆえに人体などたちまち炭に還元されてしまう。

 爆心地から少し離れた場所なら、熱以外のことも考慮せねばならない。それは爆発によって広がる空気だ。これが急激な気圧の変化となり、建物などを倒壊させる。

 1メガトン級の核爆弾の場合、半径6kmの範囲にある二階建ての建物は、180メートルトンの力と、時速255kmの突風を受ける。半径1km内なら、最高圧力はその4倍、風速は時速756kmに達する。

 実のところ、それだけの圧力であっても人体は耐えることができる。だが倒壊した建物によって、大勢の犠牲者が出ることだろう。


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地球に訪れる核の冬 もしもこれを生き延びたとしても、今度は放射線と死の灰が命を奪いにくる。その影響は、きっとあなたが想像するよりもいつまでも続く。

 たとえば、2019年のシミュレーションによれば、もしもアメリカとロシアとの間で核戦争が勃発したら、大気に巻き上げられる煙と煤のせいで、地球は数日のうちに「核の冬」に包まれるだろうという。

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 また放射性粒子は驚くほど遠くまで移動する。最近の研究では、冷戦中に行われた核実験で放出された放射性炭素の名残が、世界でもっとも深いマリアナ海溝に残っていることを明らかにしている。

 これはあくまで仮の話で、核兵器の拡散と使用を禁じた国際条約も存在する。だが国際法が本当に意味のあるものなら、今回のウクライナ侵攻は起こらなかったはずだ。

 もう少し核の現状について知りたいなら、原子力科学者会報の「核ノート」を調べてみるといいだろう。

written by hiroching / edited by parumo

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