プーチン大統領を暗殺から守るロシアの特殊護衛機関の存在
 ロシアの強硬なウクライナ侵攻に世界中に衝撃が走っている。一刻も早く事態を収束させなければならない。
どうやったらこの暴走を止められるのか?

 米共和党のリンゼー・グラハム上院議員が、ウクライナを守るために「ロシアの誰かが、この男を止めねばならない」と、プーチン大統領の暗殺を唆すような発言をしたが、それは可能なのだろうか?

 防弾ブリーフケースと強力な拳銃を装備したボディガード、本人そっくりな影武者、毒見役。ロシアには、暗殺やクーデターからプーチン大統領の身を守る特別護衛機関「ロシア連邦警護庁(FSO)」が存在する。アメリカで言う所のシークレットサービスだ。

 元KGBのプーチン大統領は、過去5回ともいわれるの暗殺から逃れており、多くの敵がいながらも未だ健在なのは、ロシア連邦警護庁の徹底したガードによるものなのかもしれない。彼らを知ることで、解決の糸口を探ることは可能なのか?

大統領の守りを固めるロシア連邦警護庁のエージェントたち プーチン大統領の警護は、「銃士(Musketeers)」と称されるエージェントで構成される「ロシア連邦警護庁(FSO)」が担う。その起源は1881年にまで遡り、革命家によって父を暗殺されたロシア皇帝アレクサンドル3世が、自身を守るボディガードをつけたのが始まりだ。

 この精鋭がそろう護衛機関の主な情報源は、ロシア国営メディアが運営するサイト「BeyondRussia」である。

 同サイトによると、エージェントは作戦遂行に関する心理に長け、体力に優れ、寒さに強く、暑くても汗をかかないなど、厳選された者たちであるという。

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Russia: Not on my watch! Putin scolds security for pushing veteran during V-Day parade

 大統領の警護にあたるエージェントは、盾として使える特殊なブリーフケースとロシア製9ミリ拳銃「SR-1ベクター」を装備している。

 大統領の警護は入念に計画されたうえで行われる。

 まずプーチン大統領の移動先が決まると、その数ヶ月前に偵察が送られ、現地の市民がどのように反応するか、悪天候や自然災害に見舞われる危険はないかなど、警護に必要な情報が収集される。

 もちろん大統領の滞在先も事前に調査され、リモコンによる爆弾の起爆を防ぐジャミング装置の設置や、携帯電話のような電子機器のモニタリングなど、危険に備えるための段取りが行われる。


 プーチン大統領は重装甲のバンに乗り、物々しい隊列を組んで移動する。この隊列を守るのは、AK-47・対戦車グレネード・携帯用対空ミサイルで武装した特殊部隊だ。

 大統領が公の場に出るときは、すぐそばにボディガードが控えるだけでなく、民衆の中にエージェントが紛れ、その周辺を警備員が囲み、さらに建物の屋根にはスナイパーまでが待機する。4重の環で危険人物の接近を防ぐのである。

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プーチンシークレットサービスの実施| 世界で最も強力な人を守る(パート1)ロシア・ワールドカップでの一幕 2018年、モスクワで開催されたFIFAワールドカップで、エージェントの働きぶりをうかがえる一幕がカメラに映し出されたことがある。

 そのとき、プーチン大統領と親しげに会話を交わしていた総合格闘家コナー・マクレガーが、大統領と並んで写真を撮ろうと、その肩に手を回した。

 YouTubeに投稿された動画では、エージェントがマクレガーをきっと睨みつけて、よせ! と仕草で制止すると、マクレガーがさっと腕を離し、引き攣った表情を浮かべる姿が確認できる。

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Conor McGregor meets Vladimir Putin at 2018 World Cup Final

 ロシア連邦警護庁は、電子的な盗聴、郵便物の開封、家宅捜査、車の差し押さえ、容疑者の拘束・尋問など、任務遂行に必要な幅広い権限を有しているとされる。将来が約束されたエージェントたち エージェントは35歳になると引退するが、その代わりに地域の知事、連邦政府の大臣、特殊部隊の司令官、大統領府の行政官など、新たに有力なポストが与えられることがあるという。

 2018年、ロシアの独立系新聞「ノーヴァヤ・ガゼータ」とジャーナリスト組織「組織犯罪・汚職報告プロジェクト」によって、モスクワ郊外にあるソ連時代の大型養鶏場が私物化され、ロシア連邦警護庁の高官らによって山分けされた事件が伝えられた。

 その高官の中には、1999年にプーチン大統領がヘルシンキを訪問した際、大統領のすぐ脇で警護に当たった3人の元エージェントも含まれていたという。

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ロシア連邦警護庁 photo by iStock
影武者の噂や毒見役まで 2016年、ロシア・ビヨンドはロシア連邦防護庁には「プーチン大統領の影武者」がいるという、以前からささやかれている噂に触れている。


 実際、プーチン大統領は、2000年初頭のチェチェン紛争当時、影武者を使おうと提案されたことがあったことを認めている。ただし、提案される都度、拒否してきたとも、2020年のインタビューで語っている。

 また「Club des Chefs des Chefs(首脳の料理人クラブ)」の創立者ジル・ブラガールによれば、毒殺を防ぐために毒見役もおり、大統領に供される食事はすべてチェックされているという。

 「クレムリンには毒見役がおり、どの料理もチェックされます」とブラガールは語っている。

 これまでに5回の暗殺未遂を全て潜り抜けてきたというプーチン大統領。

 各国の首脳や自身の顧問との会談でさえ、6メートルもの長さのある机で一定の距離を保っている。

 また、2020年4月にモスクワ市内の病院で新型コロナの患者と面会したときは、呼吸器付きの全身防護服を着用していたことからも、常に回りを警戒し、用心深いことがわかるだろう。

 とにかく今の事態を一刻も早く収束させなければならない。一番困難な状況に立たされているのは、ウクライナの一般市民や動物たちだ。

 この侵略行為に心を痛め、抗議活動を行っているロシアの一般市民たちも被害者だ。情報操作され、正義はロシアにあると信じ込まされてしまっている一般市民だってある意味犠牲者だ。戦争で一番辛い思いをするのは、いつだって一般の国民なのだ。


References:Here's how Putin protects himself from assassins and coups / written by hiroching / edited by parumo

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