ミケランジェロのダビデ像、右手に武器を隠し持っていたとする説
 ミケランジェロのダビデ像は、ゴリアテを倒した聖書の英雄を表わした傑作である。だが、その右手に秘密の武器を隠し持っていたとする、議論を呼びそうな研究がある。


 ダビデ像の右手が武器の一部と思われる円筒形のものを握っていることが指摘されたのだ。その武器は投石器だという。

ダビデ像は右手に投石器を握っていた? 「血管が浮き出た右手が、古代から17世紀まで使われていた武器の一部を握っている」美術史家のセルジオ・リサリティとフランチェスコ・ヴォッシラは著書『L’Altro David』の中でこう書いている。

 その武器とは、石を遠くへ飛ばすときに使われる武器「投石器」だとというのだ。

「端に革ひもがとりつけられていて、パチンコのような携帯用投石器として使われたのでしょう」古典民族学者のエイドリアン・メイヤーは語る。

 聖書によると、ダビデは自分の羊飼い杖と、5つの石、投石器を携えて、ゴリアテとの戦いに臨んだという。

 これら道具のうち、ダビデ像に刻まれているのは投石器だけだ。ダビデは左手でつぶてを入れる袋を持ち、肩の上に引っ掛けている。

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 背中から下に下ろした右手にかけて、かなり長い投石器の革ひもがたすきがけになっていて、右手に握っている謎の物体につながっているように見える。

「右手の中のものは、振り上げて石を飛ばすための竿(さお)を取りつける取っ手ではないかと考えています」リサリティは言う。

 右手と左手、つまり竿と投石器をつなぎ合わせて、ミケランジェロはダビデに投石器のセットを装備させたというのだ。

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当時の芸術作品に何度か登場する投石器 「ダビデ像は大聖堂のてっぺんに建てる」というのが最初の構想だった。


 見る人からは、右手に竿、左手に袋を持っているだけにしか見えないため、武器については謎のままだった。
もともとフィレンツェ大聖堂のために依頼された像には、竿はぴったりでした。聖書に描かれている羊飼いの少年の描写と合っていたからでしょう
 最大飛距離180メートルを誇る投石器は、ローマ時代から知られていて、西暦4世紀の軍事作家ベゲティウスによって初めて言及された。

 ミケランジェロ(1475~1564年)が、ダビデ像を彫り始めたのは1501年のこと。

 投石器は、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452~1519年)のデッサンにも何度か登場するし、ロレンツォ・ギベルティ(1378~1455年)もサン・ジョヴァンニ洗礼堂の東の入り口にある「天国への門」に、ゴリアテに勝利するダビデを刻んでいる。

 研究者たちは、この彫刻がギベルティの作品を高く評価していたミケランジェロに影響を与えたのではないかと推測している。

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ロレンツォ・ギベルティの天国の門 photo by iStock
 だが、竿に取っ手が取りつけられることはなかった。シニョリーア広場の正面玄関の脇に、この高さ5メートルの大理石の男性裸像が建てられることが決まったためと思われる。

 「羊飼いの杖では、イタリア発の公共モニュメントとなったこの像の政治的な意味とはそぐわなかったからでしょう」

 共和制の自由の象徴となったダビデ像は、1504年9月8日、シニョリーア広場で初めて公開され、1873年に現在のアカデミア美術館に移されるまで、風雨にさらされたままになっていた。投石器の竿説に疑問を唱える学者も 右手に持っているのは投石器の竿であるという説に疑問を唱える学者もいる。アメリカの美術史家リン・キャターソンは、ダビデは投石器の取っ手部分を持っているだけだと言っている。

「彫刻の非常に脆い部分である指を保護するための支えの役目を果たすものです」

 フィレンツェ美術館の管理者、クリティーナ・アシディーニも、投石器の取っ手説を支持していて、取っ手は動物の角でできているとしている。


「この謎の物体に関して、数多くの憶測があります。ダビデがゴリアテの頭に投げつけるための石だという説もあります。500年たっても、ミケランジェロのダビデ像は、さまざまな疑問や解釈を生み出し続けているのです」

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Michelangelo's David statue 3D model for real-time engines.
References:Michelangelo's David holding secret weapon? / written by konohazuku / edited by parumo

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