
海の沿岸に生きる生物の中には、外敵から身を守るために、カモフラージュしている生物がいる。しかしそんな彼らのカモフラージュの効果が、照明の進歩のおかげで薄れつつあるそうだ。
エネルギー効率のいいLED照明などの世界的な普及は、視覚を利用した生物の営みを破壊する恐れがあり、生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されている。
新たな研究では、夜間の人工光技術が進歩し、広域を照らすことで、周囲の風景に紛れていたはずの生き物たちが目立たせ、捕食されやすくなっているという。
照明の進歩が隠れた貝を暴き出す 英プリマス大学とプリマス海洋研究所による『Applied Ecology』(2022年3月25日付)に掲載された研究は、夜間の照明が沿岸部に生息する生物のカモフラージュ機能に与える影響を検証した初めてのものだ。
研究の中心人物であるプリマス大学のオーク・マクマホン氏は、「最新の照明はカモフラージュの効果を低下させて、エサになる生物を目立たせています」と説明する。
例えば、沿岸部でよく見かける「タマキビ貝」の仲間は、古いタイプの照明なら問題なく隠れることができた。ところが、最新の広帯域照明では捕食動物にはっきりと見えてしまい、長期的には大きな捕食リスクにさらされると考えられるのだという。
自然環境研究評議会から助成された今回の研究は、夜間の照明が増加しており、それが沿岸部の環境に与える影響を浮き彫りにしている。
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カモフラージュの効果を失い、広帯域の照明の下(右)で目立つLittornid snail / image credit:University of PlymouthLED・メタルハライドでカモフラージュ効果が激減 今回の研究では、それぞれ独特な色をしたタマキビ科の貝3種をいくつかの照明で照らし、その目立ちやすさを検証した。
検証対象となった照明は、20世紀に利用された狭帯域の「低圧ナトリウムランプ」、今日普及している広帯域の「高圧ナトリウムランプ」「LED(発光ダイオード)」「メタルハライドランプ」、そして「太陽と月の自然光」だ。
その結果、低圧ナトリウムランプでは特に違いはなかったが、LED・メタルハライドの場合、黄色い貝は茶色やオリーブ色のものよりも目立ちやすくなることがわかったという。
研究の主執筆者であるプリマス大学のトーマス・デービス博士はこう語る。
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夜の街を明るく照らす広帯域照明 / image credit:University of Plymouth光害の影響を防ぐために私たちができること 南極と北極の間にある地表の23%は、夜も照明によって照らされている。
この割合は2012~16年にかけて2.2%の割合で増加した。この事実は控えめに言っても、緊急に対策が必要であることを示している。
今回の研究では、そのための対策もいくつか提案されている。
たとえば、「光量を落とす」「光を遮蔽して周囲への影響を緩和する」「需要のピーク時には半夜間照明を利用する」「帯域を調整して生態系への影響を最小限にする」などだ。
なお、直感的には昔ながらの狭帯域照明を使えば、光の影響を抑えられるように思えるが、そう単純な話でもないようだ。
今回の研究グループは、可視光ならどの帯域であっても多かれ少なかれ生態系に影響する可能性が高いと指摘する。
夜の照明によって影響を受けるのは、カモフラージュで身を隠す生物だけではない。人間も寝るときは暗くしないと、健康に悪影響を及ぼすという研究結果も報告されている。
References:Losing the cover of darkness | EurekAlert! / written by hiroching / edited by / parumo
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エネルギー効率のいいLED照明などの世界的な普及は、視覚を利用した生物の営みを破壊する恐れがあり、生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されている。
新たな研究では、夜間の人工光技術が進歩し、広域を照らすことで、周囲の風景に紛れていたはずの生き物たちが目立たせ、捕食されやすくなっているという。
照明の進歩が隠れた貝を暴き出す 英プリマス大学とプリマス海洋研究所による『Applied Ecology』(2022年3月25日付)に掲載された研究は、夜間の照明が沿岸部に生息する生物のカモフラージュ機能に与える影響を検証した初めてのものだ。
研究の中心人物であるプリマス大学のオーク・マクマホン氏は、「最新の照明はカモフラージュの効果を低下させて、エサになる生物を目立たせています」と説明する。
例えば、沿岸部でよく見かける「タマキビ貝」の仲間は、古いタイプの照明なら問題なく隠れることができた。ところが、最新の広帯域照明では捕食動物にはっきりと見えてしまい、長期的には大きな捕食リスクにさらされると考えられるのだという。
自然環境研究評議会から助成された今回の研究は、夜間の照明が増加しており、それが沿岸部の環境に与える影響を浮き彫りにしている。
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カモフラージュの効果を失い、広帯域の照明の下(右)で目立つLittornid snail / image credit:University of PlymouthLED・メタルハライドでカモフラージュ効果が激減 今回の研究では、それぞれ独特な色をしたタマキビ科の貝3種をいくつかの照明で照らし、その目立ちやすさを検証した。
検証対象となった照明は、20世紀に利用された狭帯域の「低圧ナトリウムランプ」、今日普及している広帯域の「高圧ナトリウムランプ」「LED(発光ダイオード)」「メタルハライドランプ」、そして「太陽と月の自然光」だ。
その結果、低圧ナトリウムランプでは特に違いはなかったが、LED・メタルハライドの場合、黄色い貝は茶色やオリーブ色のものよりも目立ちやすくなることがわかったという。
研究の主執筆者であるプリマス大学のトーマス・デービス博士はこう語る。
技術が発達するにつれて、狭帯域の照明から、生活や移動を安全確実に照らしてくれる広帯域照明へと移り変わりました。共著者であるプリマス海洋研究所のティム・スミス博士は、こう付け加える。
しかし北境圏と南極大陸に挟まれた地域の4分の1では、夜になると光に汚染されます。今後5年ほどで、街灯市場の85%はLEDになるだろうとの予測もあります。
今回の研究は、こうした変化によって今現在人間と動物が受けている影響が、今後も繰り返されるだろうことを示しています
24時間照らせるようになったことで、過去1世紀のうちに都市の風景が一変し、いわゆる「アーバンシーン(”都市新世”の意)が到来しました。
1970年代、80年代に街を照らしていたオレンジ色の光は、エネルギー効率に優れた広帯域LEDに変わり、私たちはより正しく色を認識できるようになりました。
ですが、こうした進歩は自然界に予期せぬ影響を与えています。自然は人間が作り出した人工的な変化にますます早く適応するよう強いられているのです。
こうした技術の普及による最悪の結果を予防できるよう、私たちはその使い方を学ばねばなりません
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夜の街を明るく照らす広帯域照明 / image credit:University of Plymouth光害の影響を防ぐために私たちができること 南極と北極の間にある地表の23%は、夜も照明によって照らされている。
この割合は2012~16年にかけて2.2%の割合で増加した。この事実は控えめに言っても、緊急に対策が必要であることを示している。
今回の研究では、そのための対策もいくつか提案されている。
たとえば、「光量を落とす」「光を遮蔽して周囲への影響を緩和する」「需要のピーク時には半夜間照明を利用する」「帯域を調整して生態系への影響を最小限にする」などだ。
なお、直感的には昔ながらの狭帯域照明を使えば、光の影響を抑えられるように思えるが、そう単純な話でもないようだ。
今回の研究グループは、可視光ならどの帯域であっても多かれ少なかれ生態系に影響する可能性が高いと指摘する。
夜の照明によって影響を受けるのは、カモフラージュで身を隠す生物だけではない。人間も寝るときは暗くしないと、健康に悪影響を及ぼすという研究結果も報告されている。
References:Losing the cover of darkness | EurekAlert! / written by hiroching / edited by / parumo
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