
およそ1000年前、グリーンランド南端に定住したバイキングは、太陽のない冬や過酷な環境にもかかわらず、何世紀もわたって繁栄していた。
だが結局、グリーンランドのバイキングたちは、15世紀には廃墟や遺骨を残したままぷっつりと姿を消した。
北の果ての彼らの社会の崩壊につながった出来事について、謎だけが残されることになった。
その原因について、小氷河期のせいだと指摘する研究者たちは多い。だが、新たなる研究によると、東部入植地の存続を危うくしたのは、気温の変化ではなく、乾燥状態が急激に進行し、干ばつになったことが大きな原因だという。
バイキングがグリーンランドから消えたのは寒さが原因ではない? これまでの研究では、最盛期には2000人ものヴバイキングが生活していた東部入植地が放棄された理由として、気温の低下が原因だと考えられていた。彼らがいなくなった時期と、気候が冷え込んだ時期が一致するからだという。
だが、バイキングの遺跡についての過去の研究は、おもに東部入植地よりも600マイル以上北の、より標高の高い場所で集められた気温と気候の記録に依存している。
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かつて調査された地域は、バイキングが定住するのが難しい地域だった / image credit:CastanedaIsland
一方、ラウン大学のBoyang Zhao氏率いる研究チームは、かつての北欧人の農地に隣接した湖から、数世紀にわたる気温と水中気候のデータを集め、入植地の地域気候の歴史を初めて明らかにした。
「この研究を始めたそもそもの理由は、まだ答えが出ていない謎だからです」Zhao氏は言う。
この湖は、北欧人がいた農地跡に隣接し、入植地カシアスーク からおよそ6キロ離れたところにある。
「大家族、あるいはいくつかの家族がここに住んでいたと考えています」Zhao氏は言う。「おそらく彼らは、この湖の水を飲み水や農業のために使っていたのでしょう」
研究者たちは、かつて中世のバイキングを支えた、この湖の底に堆積している植物の残骸に、2000年にわたるこの入植地の気温や水に関する情報が秘められているのを発見した。
その結果は、東部入植地が小氷河期の間、北部のほかのサンプル地域と同じような寒冷気候を体験していないことを示していた。
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堆積物のサンプル採取 / image credit:CastanedaIsland干ばつの影響が明らかに 研究チームは、入植地が終わりを迎える頃に干ばつがあった証拠を見つけた。これは、この集落が農耕から海産物に依存する食生活に移行し始めたという、これまでの考古学証拠の裏づけに役立った。
グリーンランドの北欧人は、気候変動、経営の失敗、経済破綻、社会構造など、さまざまな問題に直面していた可能性もある。
しかし、現場の証拠は、干ばつが遠い入植地の最終的な消滅の大きな原因になったことを示している。
この新たな研究は、数世紀前にさかのぼる謎に光を当てただけでなく、グリーンランド南端のコミュニティが、再び干ばつにみまわれている現代にもつながるものだ。
この地域の大気や海洋の複雑な力学が、過去10年間に頻発している干ばつの原因として、人為的な気候変動だけをはっきり名指しするのは難しい。
バイキングがやってくる何千年も前から先住民族が住んでいた、グリーンランドのコミュニティの過去と現在の苦難を結びつける興味深い洞察を提供してくれている。
この研究結果は『Science Advances』に報告された。
>References:Rewriting the History Books: Why the Vikings Left Greenland : UMass Amherst / Drought helped push the Vikings out of Greenland, new study finds | Live Science / written by konohazuku / edited by / parumo
追記(2022/04/10)本文を一部修正して再送します。
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だが結局、グリーンランドのバイキングたちは、15世紀には廃墟や遺骨を残したままぷっつりと姿を消した。
なぜ、彼らはいなくなったのか?
北の果ての彼らの社会の崩壊につながった出来事について、謎だけが残されることになった。
その原因について、小氷河期のせいだと指摘する研究者たちは多い。だが、新たなる研究によると、東部入植地の存続を危うくしたのは、気温の変化ではなく、乾燥状態が急激に進行し、干ばつになったことが大きな原因だという。
バイキングがグリーンランドから消えたのは寒さが原因ではない? これまでの研究では、最盛期には2000人ものヴバイキングが生活していた東部入植地が放棄された理由として、気温の低下が原因だと考えられていた。彼らがいなくなった時期と、気候が冷え込んだ時期が一致するからだという。
だが、バイキングの遺跡についての過去の研究は、おもに東部入植地よりも600マイル以上北の、より標高の高い場所で集められた気温と気候の記録に依存している。
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かつて調査された地域は、バイキングが定住するのが難しい地域だった / image credit:CastanedaIsland
一方、ラウン大学のBoyang Zhao氏率いる研究チームは、かつての北欧人の農地に隣接した湖から、数世紀にわたる気温と水中気候のデータを集め、入植地の地域気候の歴史を初めて明らかにした。
「この研究を始めたそもそもの理由は、まだ答えが出ていない謎だからです」Zhao氏は言う。
気候変動の観点からでは、この地域の再構築は実際あまり多くできていません。そこで、私たちは現地を再訪しようと思いました。バイキングが居住していた場所の池の堆積物を調べる 東部入植地独特の気候史を掘り下げるため、研究チームは3年を費やして、レイク578の堆積物を収集した。
この地域から直接、より詳細で最新の気候史の記録を提供し、気候変動とバイキングの消滅の間になんらかの関係があるかどうかを確認するためです
この湖は、北欧人がいた農地跡に隣接し、入植地カシアスーク からおよそ6キロ離れたところにある。
この地域には最大の北欧人集落があり、有名なバイキングの探検家"赤毛のエイリーク"の家があったところでもある。
「大家族、あるいはいくつかの家族がここに住んでいたと考えています」Zhao氏は言う。「おそらく彼らは、この湖の水を飲み水や農業のために使っていたのでしょう」
研究者たちは、かつて中世のバイキングを支えた、この湖の底に堆積している植物の残骸に、2000年にわたるこの入植地の気温や水に関する情報が秘められているのを発見した。
その結果は、東部入植地が小氷河期の間、北部のほかのサンプル地域と同じような寒冷気候を体験していないことを示していた。
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堆積物のサンプル採取 / image credit:CastanedaIsland干ばつの影響が明らかに 研究チームは、入植地が終わりを迎える頃に干ばつがあった証拠を見つけた。これは、この集落が農耕から海産物に依存する食生活に移行し始めたという、これまでの考古学証拠の裏づけに役立った。
実際にこの地域で、小氷河期の兆候を見たわけではありません。でも、乾燥傾向にあったことはわかりました。ただし干ばつ以外の原因も排除はできない Zhao氏は、この新たな発見は、バイキングが入植地を捨てた原因についてのほかの説を排除するものではないと強調する。
これが地元の農耕従事者に大きなプレッシャーとなって、農業(基本的に牧草栽培)に大きな打撃を与え、結果的に生活を変えざるをえなくなったのです。
乾燥が進むにつれ、十分な作物がとれなくなり、ますます海産物を食料として探さなくてはならなくなったのでしょう
グリーンランドの北欧人は、気候変動、経営の失敗、経済破綻、社会構造など、さまざまな問題に直面していた可能性もある。
しかし、現場の証拠は、干ばつが遠い入植地の最終的な消滅の大きな原因になったことを示している。
この新たな研究は、数世紀前にさかのぼる謎に光を当てただけでなく、グリーンランド南端のコミュニティが、再び干ばつにみまわれている現代にもつながるものだ。
この地域の大気や海洋の複雑な力学が、過去10年間に頻発している干ばつの原因として、人為的な気候変動だけをはっきり名指しするのは難しい。
バイキングがやってくる何千年も前から先住民族が住んでいた、グリーンランドのコミュニティの過去と現在の苦難を結びつける興味深い洞察を提供してくれている。
この研究結果は『Science Advances』に報告された。
>References:Rewriting the History Books: Why the Vikings Left Greenland : UMass Amherst / Drought helped push the Vikings out of Greenland, new study finds | Live Science / written by konohazuku / edited by / parumo
追記(2022/04/10)本文を一部修正して再送します。
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