
今をときめくゼロエミッションカー、従来のディーゼル車やガソリン車とは一線を画すクリーンな車として世界規模で浸透中のEVが、70年以上も前にしかも日本で開発されていた、だと?
このたび海外のSNSで注目を集めていたのは「日本では1949年に1回の充電で200kmも走行する電気自動車が開発されていた」という投稿だ。
戦後まもなくハイスペックな電気自動車が日本で開発されていたことに、疑いを持つユーザーもいたのだが、実際のところはどうなのだろう?ファクトチェックサイト『Snopes』が検証を行った。
日本が1949年に1回の充電で200km走るEVを開発してた? この情報の出所を探ったところ、一番古かったのは2013年に投稿されたものだ。
In 1949, the Japanese developed an electric car that traveled 200 km on a single charge.
— What The F*** Facts (@WhatTheFFacts) October 2, 2013
日本は1949年に1回の充電で200kmも走る電気自動車を開発していた2015年、写真付きで同じ内容のものが「興味深い事実」として投稿された。
更に最近、ガソリン価格の高騰や電気自動車の人気の高まりから再び注目され拡散されていったようだ。だいたい合ってた。戦後まもなく開発された電気自動車 この情報の真偽を確かめる為、ファクトチェックサイト『Snopes』は検証を行うことに。Fun Fact Friday: The Japanese developed an electric car way back in 1949 that could travel 200 km on a single charge. pic.twitter.com/iJPH1t73ct
— KARS (@KARSShiloh) January 16, 2015
その結果、おおむね事実だったが、いくつかの不確かな情報が含まれているのがわかった。
事実と判明したのは「日本の自動車メーカーが、第二次世界大戦後まもなく電気自動車を開発・販売していたこと」だ。
この車を開発した自動車メーカー「東京電気自動車」の主要なメンバーは、第二次世界大戦中に軍用機を製造していた航空機メーカー「立川飛行機」の従業員だった。
その後「たま電気自動車」に改称した同社は、その後、プリンス自動車工業となり、1966年に日産と合併した。
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image credit:baku13, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
当時余っていた電力で動く車を開発。走行距離は96kmだった 日産によると、これらの電気自動車は第二次世界大戦の終結から2年後の1947年(1949年は誤り)から展開したという。
また当時の日本は石油、物品、食料の深刻な不足に苦しめられていた一方で、家電が少なく、電力の大量消費者がほとんどいなかったため、供給できる電力に余裕があったという。
この車(E4S-47型)は「走行距離96km(約60マイル)、最高速度35km/h(約22 mph)を達成し」1951年までタクシー車両として人気があったという。つまり投稿の走行距離「200km」の部分も誤りだった。
ただし1949年に発売された、セダンタイプの「EMS-49型 たまセニア号」では、1回の充電で200kmの走行が可能になってる。なので写真はE4S-47型だが、EMS-49型と混同した可能性もある。
【参考】電気自動車分野における日産のリーダーシップのルーツ
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The roots of Nissan’s leadership in Electric Vehicles電気で走った当時の「たま」が現代に復元 上にもあるように戦後の石油不足に悩まされた日本では、新興企業が電気自動車を大量生産していたそうだ。現代では不足することもある電力に余裕があったからこそ、運用できたものだったのだ。
ちなみにこれらの電気自動車は、開発主の東京電気自動車が命名した「たま」という通称で親しまれていた。
その後長らく走行不能の状態だったが、2010年の日産の新型LEAF販売を機に復元されたそうだよ。
【参考】復元された最初のEV「たま電気自動車」
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復元された60年前のEVを解説
日本政府は2030年にガソリン車禁止を打ち出している。だが日本ってこんな昔から電気自動車の開発を手掛けていたわけで、EV主流の時代になってもいろいろ大丈夫な気がしてきた。
というかEV車って充電時間がガソリン入れるのに比べて長いのがネックのような気がするけど、それすらもなんとかしてくれそう、かな?
References:snopes / wikipediaなど /written by D/ edited by parumo
追記(2022/04/21)本文を一部修正して再送します。
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