知的生命体は白色矮星を取り巻くダイソン球に必ず存在すると天文物理学者
 今のところ、知的生命体が築いた地球外文明が存在する証拠は見つかっていない。だがどこかに存在すると信じている科学者は多く、効率的な探し方を模索している。


 カリフォルニア大学ロサンゼルス校の物理学と天文学の名誉教授、ベン・ザッカーマン氏は、彼らを見つけるなら、天の川銀河にいくつもある白色矮星を取り巻く「ダイソン球」を探すべきだと主張する。

 ザッカーマン名誉教授によると、天の川に存在する白色矮星の中には、”最大”で900万もの高度な地球外文明が存在し得ると考えられるそうだ。

ダイソン球とは? どれほど高度に発展した文明であってもエネルギーは必要だ。食糧生産、輸送、紛争、快適な暮らしとあらゆる用途にそれが費やされる。

 今日の地球は78億の人口が年間580兆ジュールのエネルギーを費やしていると言われている。これは、140億トンの石油に相当する。

 そして今のところ太陽系最大のエネルギー源である太陽を活用する技術が未熟であるため、エネルギーの大半は化石燃料によって賄われている。

 もし地球全体をソーラーパネルでおおったとしたら、毎秒10京(1の下にゼロが17個)ジュール以上を発電できる。それでも太陽が放射するエネルギーの大半、毎秒100禾予(こちらは26個)ジュールが失われる。

 1960年に、物理学者フリーマン・ダイソンが、恒星を卵の殻のような巨大な人工構造物でおおってそのエネルギーを余すところなく使う「ダイソン球」の存在を提唱したのはこうした背景がある。

 だが光を100%キャッチしようとしてもダメだ。恒星を中心に維持することができず、潮汐や回転の巨大な負荷で殻がバラバラになってしまうだろうからだ。


 それでもリング状の構造物や、無数の太陽パネルを並べるといったやり方ならできるかもしれない。もし可能なら、恒星の発生するエネルギーすべての利用を可能とする宇宙コロニーの究極の姿と言える。

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恒星の残骸「白色矮星」の近くに知的生命体が存在する とは言え、いかに文明が発展し、ダイソン球のような構造物が作られたとしても、星の寿命から逃れることはできない。

 太陽のような典型的な恒星はいずれ膨張し赤色巨星となり、最後は冷えた恒星の残骸「白色矮星」になる。そのプロセスは、まず恒星内の惑星が焼き尽くされ、白色矮星になると、外側の惑星が熱源を失い凍りつく。

 ゆえに文明は母なる惑星にいつまでもしがみつことはできない。どんな知的生命体も新天地を求めて惑星系から脱出するか、あるいは白色矮星の放射線を利用して生きる術を考案するか、選ばねばならない。

 だがザッカーマン名誉教授は、いくら高度文明とはいえ、新たなダイソン球の建設場所を探すためだけのために、故郷を捨て宇宙に旅に出るとは考えにくいと主張する。

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白色矮星の強烈な重力は、近くの惑星を涙型に歪めている。もし宇宙人が存在するなら、そのような白色矮星の周りを回るダイソン球にいる可能性があるとザッカーマン名誉教授は主張する / image credit:University of Warwick/Mark Garlick

 『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』(2022年4月28日付)に掲載された論文によれば、いずれ恒星が白色矮星になるとしても、その周囲にダイソン球を建造する以外の選択肢しかないのだという。

 これが本当なら、ここから星の寿命とダイソン球の普及率との間に直接的な関係を見出すことができる。ならば白色矮星周囲のダイソン球を探すことで、銀河に存在する高度文明の数を推定することもできるというのだ。


 これまで私たちは天の川に存在するごく一部の白色矮星しか観測していない。それでも十分な数の地球外文明が白色矮星の周囲にダイソン球を作ろうとしたならば、少なくとも1つは見つけられるはずだ。

 まるで見つからなかったとしても、ダイソン球を作れる地球外文明の数の上限を推定することができる。

 無論、宇宙に旅に出るという選択をする地球外文明もあるかもしれないが、天の川の年齢を考えると、彼らは白色矮星の周囲にダイソン球を作ることを選んだ可能性が濃厚だ。

 だから、地球外文明を探すのならこの仮説に沿って行うべきだと、ザッカーマン名誉教授は主張する。

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ダイソン球が放つシグナル とは言え簡単なことではない。ダイソン球が存在するとしても、たくさんの星を捜索しなければならないだろう。またダイソン球が放つ”シグナル”もごく微弱なものである可能性が高い。

 ちなみにそのシグナルには2種類ある。

 一つは白色矮星の陰りだ。ダイソン球が十分大きいか、白色矮星に近ければ、それが星の前を横切る時に光を遮り、白色矮星は暗く見えることだろう。

 これは太陽系外惑星を発見する時にも有効な方法だ。
だがダイソン球の場合、さらに赤外線も観測できるかもしれない。

 ダイソン球は白色矮星の光を吸収して、エネルギーに転換する。それでも100%がエネルギーに転換されることはない。排熱され、そこから赤外線が漏れ出る。これが二つ目のシグナルとなる。

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天の川内に存在する地球外文明は”最大”で900万 意外にも、やたらと赤外線を放つ白色矮星ならすでにいくつも発見されている。だが、それはダイソン球ではなく、白色矮星の周囲に漂う塵のせいだと考えられている。

 残念ながら、これまでダイソン球を伴う白色矮星は見つかっていない。ザッカーマン名誉教授の推定によると、太陽型恒星を公転する居住可能惑星のうち、いずれ白色矮星になる恒星にダイソン球を建設する高度文明が誕生するのは3%以下だ。

 天の川に存在する白色矮星と太陽系外惑星の数を考えると、この銀河内に存在するそうした文明は最大でも900万文明だろうという。

 これは天の川に900万の高度文明がありそうだという意味ではない。あくまでその数ならあり得るという意味、つまり上限が推定されただけだ。


 結局のところ、天の川にどれほどの高度文明が存在するのか誰にもわからない。

 「私を含む科学者の中には、技術的な生命は非常に稀だろうと考える人たちもいます」と、ザッカーマンはで語っている。「天の川でもっとも進んだ文明は私たちという可能性もあります。本当のことは誰にもわかりません。だから探す価値があるのです」

References:The aliens are all hanging out on Dyson spheres circling white dwarfs, physicist argues | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo

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