バンクシーはなぜ誰にも見つからず作品を仕上げることができるのか?
 イギリスを拠点とする正体不明のアーティスト「バンクシー」は、街中の壁などに人知れずグラフィティ作品を残すことで知られる、ストリートアーティストだ。

 長年の創作活動にもかかわらず、なぜバンクシーは誰にも見つからないのか? バンクシーの『Great British Spraycation』シリーズの元所有者が、彼が人知れず作品を制作するその巧妙な手口を明かしている。


 かねてからバンクシーは個人ではなく、じつは集団なのではないかという噂があったが、所有者の証言は噂の正しさをうかがわせるものだ。

いつのまにか落書きされていた馬小屋のミニチュア 昨年、イギリス、イーストアングリア州のさまざまな町に突如として数点のバンクシー作品が出現した。

 そのうちの1つが、グレート・ヤーマスにある模型テーマパーク「メリベール・モデル・ビレッジ(Merrivale Model Village)」にあった茅葺(かやぶき)屋根の馬小屋のミニチュアだ。

 「バンクシー」「とことんやれ(go big or go home)」と書かれた小さな落書きが特徴の作品である。

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 作品はいつの間にかそこにあり、「メリベール・モデル・ビレッジ」の元オーナー、フランク・ニューサム氏は訪問客に指摘されて初めて気付いたという。

 だが、それから1年後、防犯カメラの記録を調べたニューサム氏は、バンクシーが誰にも知られずに作品を制作する巧妙な手口を、BBCに語り出した。

 「彼らは下調べをしていたはずだ」「夜間は周囲に防犯カメラがあるので、侵入者がいればすぐわかるんだ。バンクシーは白昼堂々やってのけたのさ」1台のドローンと2つのグループ すべての始まりは、ビレッジ上空を1台のドローンが飛んでいたことだったという。

 「釣り用の網でどうにかそいつを捕獲することができた。そいつが墜落してガラスが飛散したことの方が心配だった」とニューサム氏は言う。

 おそらくバンクシーはドローンでビレッジ全体を確認していたのだろう。ニューサム氏はちょうどその時の防犯カメラの映像を確認してみることにした。


 「2つのグループが来ていたんだ。ビーチ用のクールボックスを持った3人の若者。それから少年少女のグループ。コロナ規制があったのでマスクを着用していた」

 どうもグループの一部は陽動が任務であったようだ。

 「彼らは売店で写真を撮られるのを嫌がっていた。それからビレッジの反対側で騒動が起きた。グループの連中が騒ぎ始めたんだ」

 「それでスタッフの気がそれた隙を狙って、別の仲間が描いたんだろう」

 じつはバンクシーは個人ではなく、アーティスト集団であるという噂がある。

 防犯カメラを分析したニューサム氏の証言は、その説を裏付けている。そうでなければ、これまで製作現場を誰にも見られずに作品を残すことなどできなかったに違いないだろう。

バンクシーの作品[画像を見る] ● ニューサム氏は最初それがバンクシーの作品だとは信じられなかったそうだ。
本物とは思わなかったが、万が一ということもあるので、放置できなかった。

それでみんなが交代で見張りをして、確認が取れてから、安全なところに運んだんだ。


毎晩現場から持ち帰って、朝になったら別のルートで戻すなんてことをやったよ


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 なんと、その場で2400万円で買い取ると申し出た人物もいたという。しかもその人物は2時間後に戻ってきて、さらに倍額を提示してきたそうだ。

 だが本作品についた価格はそれどころではなかった。今年初めに開催されたオークションでは、最終的に1億2900万円で落札されている。

 健康上の理由からすでにビレッジから退職したニューサム氏は、「まるで映画のような出来事だった」と語っている。

 なお彼はペストコントロール(バンクシー作品の認証機関)に「なぜ自分たちだったのか?」と問い合わせてみたが、何も教えてもらえなかったとのことだ。

References:The Clever Tactic Banksy Used To Do His Art In Secret Without Anyone Noticing / written by hiroching / edited by / parumo

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