シャチの間で流行りのゲームなのか?人間のボートを襲う事件が相次ぐ
 シャチは最も賢い動物の一種であり、高い知性と社会的行動を組み合わせることで、予期せぬ行動を起こすことがある。

 ヨーロッパ沿岸で、ここ数年、シャチが人間のボートを襲って船を操作するラダー(舵)を壊す事件が相次いでいるという。


 ラダーを壊すことを集中的に行っているシャチたち。流行の遊びなのだろうか?その理由は専門家でもはっきりわからないという。

 この奇妙な襲撃事件は、ポルトガルやスペインから、フランスの沿岸に広がっているらしい。死傷者はいないが、複数のボートが損害を受け、一隻が沈没したそうだ。

シャチが次々と人間のボートの舵を破壊 シャチのボートに対する攻撃は数年前から繰り返されている。

 最新の事件は、この8月始め、エスター・クリスティン・ストークソン(27)さんと父親が、世界一周の旅にのチャレンジするため、モロッコ西のマデイラ島へ向かっていたときのことだ。

 フランスの海岸沖で、彼らの11.2メートルのヨットが、シャチの群れに取り囲まれた。およそ15分後、シャチたちは泳ぎ去ったが、ヨットのラダー(舵)が壊されて、4分の1しか残っていなかったという。

 父子はなんとかフランスの海岸に戻ることができたが、ヨットを修理しなくてはならないはめになった。

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映像は2020年に撮影されたものなぜシャチたちは破壊行動を?流行の遊びの一種なのか? なぜ、シャチがラダーを狙うのか、その理由は専門家でもわからない。

 だが、今回のフランス沖での襲撃は、これまでのスペインやポルトガル付近での襲撃よりも北で起こっている。

 距離が離れているので、襲撃しているのは、複数のシャチの群れの可能性がある。
と語るのは、スペインを拠点とする鯨類研究団体「CIRCE Con​​servacion Information and Research」で、代表兼コーディネーターを務めるルノー・ド・ステファニス氏だ。

 シャチは社会的な動物で、ときに人間でいう"気まぐれ"によく似た、一時的な流行を追うような行動をとることがあるのだという。

 例えば1987年、アメリカ、ピュージェット湾で、シャチが死んだサケを帽子のように頭に乗せて泳ぐ姿が目撃されている。

 2004年の Biological Conservation誌の論文によると、この流行は、一頭のメスのシャチが始め、ほかのふたつの群れの間でも広まったという。

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頭に死んだサケを乗せて泳ぐシャチ / image credit:OCEAN WISE RESEARCH

 およそ6週間後、シャチたちはこの気まぐれはやめてしまい、翌年の夏、数頭がこの行為を復活させようとしたが、もう流行ることはなかったとのことだ。人間と同じようにシャチやイルカにもトレンドがある シャチと同様、やはり社会的動物であるイルカにも、このような"トレンド"がある。

 2018年に発表された研究では、南オーストラリアの野生のイルカが、一時的にリハビリセンターに収容されていた一頭の子イルカのせいで「テールウォーク」を新たなトレンドとして流行らせたという。

 このイルカは、人間の手で保護されていたときに、なにかの訓練を受けたわけではないが、どうやら、飼育されているほかのイルカが、体の大部分を水面から垂直に出して、尾びれを使って後方に歩くような動作をする「テールウォーク」をしているのを目撃するチャンスがあったようだ。

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Tail Walking - Dolphin Dock

 このイルカにタグをつけて、ポート・リバー河口に放した数年後、この地域にいるイルカたちが、自発的にテールウォークを始めた。

 この流行は、10年以上続き、トレンドを持ち帰ったイルカが死んだ頃をピークに、2014年に自然消滅したという。

 一方、太平洋のシャチが最近、カニ漁で使う網カゴで遊ぶようになったと、ブリティッシュコロンビア州の研究機関Bay Cetologyのジャレッド・タワーズ氏は言う。

 それにしても、なぜ彼らが、船のラダーを襲うのかはわからない。
もしかしたら、船のスクリュープロペラから発生する、水の振動や水圧などの感覚が好きなのかもしれない。

References:Orcas attack boats off coast of Spain and Portugal, leaving scientists stumped : NPR / written by konohazuku / edited by / parumo

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