
image credit:Steppe bison / WIKI commons
1984年4月、アラスカで世にも珍しい晩餐会が開かれた。そこでふるまわれたメインディッシュは、なんと5万年前のバイソンの肉である。
その肉は、1979年に永久凍土の中から発見された、更新世を生きた「ステップバイソン」で、最後はライオンによって食い殺されたようだ。
「ブルー・ベイブ」と名付けられたそのバイソンの首の組織は、極めて保存状態がよかった。それを目にした科学者たちが食べてみようという誘惑に抗えないほどに…
保存状態の良い5万年前のステップバイソンのミイラを発見 1979年7月、アメリカのアラスカ州フェアバンクス北部で、ステップバイソンのオスのミイラが発見された。
この個体は体内のリンが土壌の鉄と反応してビビアンナイト(リン酸塩鉱物)が生成されたことにより、身体が青みがかった色をしていることから「ブルー・ベイブ」と名付けられた。
当初、コラーゲンの分析から3万6000年前のバイソンとされていたが、より最近の調査で5万年前までさかのぼることが判明している。
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アラスカ州立大学博物館(アメリカ)で展示されているステップバイソンのミイラ / image credit:Bernt Rostad / CC BY 2.0首肉を角切りにし、シチューにして食べた科学者たち この風変わりな晩餐会は、「ブルー・ベイブ」の発掘に尽力した古生物学者デール・ガスリーの自宅で催された。
更新世を生きたブルー・ベイブは、極寒のアラスカの地で死亡すると速やかに冷凍保存されたため、筋肉組織はビーフジャーキー並みに保存状態がよく、脂肪や骨髄も残されていた。
そんな滅多にない食材の味に、好奇心旺盛な科学者が興味を抱かずにいられるわけがなかった。
その時のことをガスリーはこう記している。
ちょっとした工夫で料理の味は救われたかもしれないが、ブルー・ベイブのお腹の中身はどうにもならなかった。
大昔に冷凍保存される前に腐敗したのは明らかだった。その首筋にはライオンに噛まれたらしき、歯の破片が残されていた。
しかし、バイソンの首の筋肉が切り取られたおかげで、そこの組織は速やかに冷凍され、5万年後に解凍しても新鮮さが保たれていた。
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ウシ科バイソン属に分類されるステップバイソンは、更新世後期に絶滅したが、現生種と絶滅種の大半のバイソン属の祖先となった。その体高は2mを超えた / image credit:WIKI commons / CC BY-SA 4.0果たしてそのお味は? 1984年4月6日、この晩餐会には十数人のとても幸運なゲストだけが招かれたようだ。
解凍すると、紛れもない牛肉の香りがしたそうだ。かすかな土の匂いとキノコの香りが混じって、不快ではなかったという。
5万年前の肉を食べてお腹を壊したりしないのだろうか? と気になる人もいるだろうが、どうやら大丈夫だったようだ。
味は素晴らしく、誰一人体調を崩すこともなかったそうだ。
科学者の好奇心が文明の発達に大きな役割を果たしているのは事実だ。
時に彼らは体を張ってムチャなことをしたりするのだが、超低温で冷凍保存すれば5万年も肉は持つという事実は、来るべきサバイバル時代に向けて、ちょっとしたアドバイスになったりならなかったりするかもだ。
References:In 1984, Scientists Ate 50,000-Year-OId Bison In A Stew | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo
追記:(2022/10/19)タイトルを一部訂正して再送します。
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1984年4月、アラスカで世にも珍しい晩餐会が開かれた。そこでふるまわれたメインディッシュは、なんと5万年前のバイソンの肉である。
その肉は、1979年に永久凍土の中から発見された、更新世を生きた「ステップバイソン」で、最後はライオンによって食い殺されたようだ。
「ブルー・ベイブ」と名付けられたそのバイソンの首の組織は、極めて保存状態がよかった。それを目にした科学者たちが食べてみようという誘惑に抗えないほどに…
保存状態の良い5万年前のステップバイソンのミイラを発見 1979年7月、アメリカのアラスカ州フェアバンクス北部で、ステップバイソンのオスのミイラが発見された。
この個体は体内のリンが土壌の鉄と反応してビビアンナイト(リン酸塩鉱物)が生成されたことにより、身体が青みがかった色をしていることから「ブルー・ベイブ」と名付けられた。
当初、コラーゲンの分析から3万6000年前のバイソンとされていたが、より最近の調査で5万年前までさかのぼることが判明している。
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アラスカ州立大学博物館(アメリカ)で展示されているステップバイソンのミイラ / image credit:Bernt Rostad / CC BY 2.0首肉を角切りにし、シチューにして食べた科学者たち この風変わりな晩餐会は、「ブルー・ベイブ」の発掘に尽力した古生物学者デール・ガスリーの自宅で催された。
更新世を生きたブルー・ベイブは、極寒のアラスカの地で死亡すると速やかに冷凍保存されたため、筋肉組織はビーフジャーキー並みに保存状態がよく、脂肪や骨髄も残されていた。
そんな滅多にない食材の味に、好奇心旺盛な科学者が興味を抱かずにいられるわけがなかった。
その時のことをガスリーはこう記している。
アイリック・グランクヴィスト(剥製師)によるブルーベイブ研究のヤマ場とお祝いをかねて、彼とビョルン・クルテン(ゲスト講師)のためにバイソン・シチューの晩餐会を開いた
ミイラの首の一部を小さく角切りにし、スープと野菜の鍋で煮込んだんだ
夕食にブルーベイブを食べた。肉はよく熟成されていたが、まだ少し硬く、シチューに鮮烈な更新世の香りを添えていた。そこにいた誰もがあえて無視しようとは思わなかっただろう首肉のシチューにした理由について、ガスリーは「首肉のステーキはあまり良いアイデアとは思えませんでした」「でも野菜とスパイスをたっぷり入れれば、そうは悪くなりませんからね」と語っている。
ちょっとした工夫で料理の味は救われたかもしれないが、ブルー・ベイブのお腹の中身はどうにもならなかった。
大昔に冷凍保存される前に腐敗したのは明らかだった。その首筋にはライオンに噛まれたらしき、歯の破片が残されていた。
しかし、バイソンの首の筋肉が切り取られたおかげで、そこの組織は速やかに冷凍され、5万年後に解凍しても新鮮さが保たれていた。
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ウシ科バイソン属に分類されるステップバイソンは、更新世後期に絶滅したが、現生種と絶滅種の大半のバイソン属の祖先となった。その体高は2mを超えた / image credit:WIKI commons / CC BY-SA 4.0果たしてそのお味は? 1984年4月6日、この晩餐会には十数人のとても幸運なゲストだけが招かれたようだ。
解凍すると、紛れもない牛肉の香りがしたそうだ。かすかな土の匂いとキノコの香りが混じって、不快ではなかったという。
5万年前の肉を食べてお腹を壊したりしないのだろうか? と気になる人もいるだろうが、どうやら大丈夫だったようだ。
味は素晴らしく、誰一人体調を崩すこともなかったそうだ。
科学者の好奇心が文明の発達に大きな役割を果たしているのは事実だ。
時に彼らは体を張ってムチャなことをしたりするのだが、超低温で冷凍保存すれば5万年も肉は持つという事実は、来るべきサバイバル時代に向けて、ちょっとしたアドバイスになったりならなかったりするかもだ。
References:In 1984, Scientists Ate 50,000-Year-OId Bison In A Stew | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo
追記:(2022/10/19)タイトルを一部訂正して再送します。
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