土葬した人間の遺体が分解するのにどれくらい時間がかかるのか?
 人間が死ぬと、そのまま放置していればすぐに分解がはじまり、細胞がしぼみ、細菌が侵入し始めて、体が壊れ始める。

 適切な防腐処理を施せば腐敗を遅らせることができるのだが、土葬した人体が完全に分解するのに、どれくらいの時間がかかるのだろうか?

土葬された遺体が完全に骨になるまで5年、棺に入れると10年 人体分解のプロセスは、死後数分で始まるが、周辺の温度、土壌の酸性度、棺の素材の違いによって、遺体が骨だけになるのにかかる時間はさまざまに変わってくる。


 テキサス州立大学、法医人類学センター長のダニエル・ウェスコットによると、ごく平均的な棺で埋葬された遺体だと、1年以内に分解が始まっても、完全に骨になるのには10年はかかるという。

 棺に入れずに遺体を直接土に埋めると、昆虫やその他の要因の影響を直接受けるため、だいたい5年以内で骨になると、西カロライナ大学、法医骨学研究所のニコラス・パサラクア准教授は言う。

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人体分解までのプロセス、骨が崩壊するまで数十年 分解の原理は単純だ。『The Cell: A Molecular Approach』によると、死が起こり、酸素を運ぶ血液の流れが止まると、細胞は死ぬ。

 自己分解と呼ばれるプロセスで、細胞は酵素(とくに消化酵素を含む細胞小器官リソソームからの酵素)を放出し、炭水化物やタンパク質だけでなく、細胞そのものも分解していく。

 『Evaluation of Postmortem Changes』によると、腐敗、つまり微生物や真菌、その他の生物による酸素なしの有機物の分解は、死後18時間で皮膚の一部を緑色に変えるという。

 同時に、腹部の微生物が急激に増殖してガスが発生し、体が膨張、臭気が漂う。遺体周辺の温度が高い場合は、腐敗が早く進むため、埋葬までは冷蔵庫で遺体を保存することが多い。

 体が膨張すると、皮膚が剥がれ落ち、水ぶくれやまだら模様ができる。

 死後24~48時間たつと、そうした崩れた皮膚を通して、緑がかった黒い血管が見えることがある。

 やがて膨張が終わると黒色腐敗と言われるプロセスに移行し、内臓や組織が柔らかくなり、昆虫や微生物が残った柔らかい組織を食べつくして、骨だけになる。

 骨の段階になると、分解はかなり遅くなり、完全に骨になった後、骨自体が崩壊するのには、さらに数年から数十年かかると言われている。


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How does a human body decompose? | Body Farm Forensics腐敗を遅らせるための防腐処理 腐敗を遅らせるための防腐処理は、遺体の血管から血液を抜いて、代わりにエンバーミング液を注入する。

 防腐剤であるこの化学薬品は、体を分解する微生物の活動を止める機能がある。エンバーミングは、一般的な処置だが、一部の宗教では体への冒涜とみなされ、禁止されている場合もある。

 「防腐処理が施されていれば、状況がかなり変わる可能性があります」ウェスコットは言う。

 防腐処理をされて、棺で埋葬された場合10年前後が典型的な腐敗のタイムラインだ。そのころになると、組織はすべて消滅して、骨だけが残る。

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防腐処理の質や埋葬場所、棺の種類で分解時間も異なる 防腐処理作業の質も大きく影響する。

 ウェスコットが、15年前に埋葬した防腐処理済みの遺体は、棺が壊れていたために、一部が骨になっていたという。

 また別の例では、わずか1年で掘り出したとき、まるで死んだばかりのような遺体だったのに、カビが発生していたという。

 埋葬場所も影響を及ぼすこともある。酸性の土壌に棺を埋めた場合、分解は早くなり、昆虫などによって、腐敗が促進される。

 ほかにも、思いがけない要因がある。


 屋外では、肥満体の遺体は最初は早く分解されるが、ウジは脂肪よりも筋肉組織を好むため、分解過程の後半ではその速度は遅くなる。

 生前使用された化学療法や抗生物質も、分解過程に関係する細菌の一部を殺すことがあるため、腐敗にかなりの影響を与えることがある。

 棺の内側に使われている繊維の材質も、分解のペースに影響を与えることがある。

 一部の素材は、遺体からしみ出した体液を吸って乾燥させ、ミイラ化を早めることがある。水分をためこむような素材だと、遺体は自分の体液に浸された状態になり、腐敗が早くなるそうだ。

References:How long does it take for a body to decompose? | Live Science / written by konohazuku / edited by / parumo

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