
「ロボット弁護士」と呼ばれるこのAIは、スマホアプリではあるが、本物の弁護士のように法廷で被告に寄り添い、交わされる尋問をリアルタイムで聞きながら、ヘッドホン越しにどう答えるべきか助言してくれるという。
世界初、AI弁護士が法廷で弁護に挑む 科学技術誌『New Scientist』によれば、この前代未聞の裁判はスピード違反に関するものだ。
裁判が行われる具体的な場所や被告の名前などは公表されていないが、その人物はAI弁護士が指示した通りに発言することになるという。
AI弁護士アプリを開発したのは、スタートアップの「DoNotPay」社だ。創業者のジョシュア・ブラウダーCEOによると、万が一この裁判で負けた場合、科せられる罰金は同社が全額負担することになるという。
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時間をかけて莫大な判例を学習し、弁護者に最適な助言をもたらす AI弁護士は2015年、延滞料や罰金に悩む消費者に法的なアドバイスを行うチャットボットとして誕生した。それがAI弁護士への道を歩み始めたのは2020年のことだ。
米スタンフォード大学出身のコンピューター科学者であるブラウダーCEOは、さまざま判例で訓練し、AIが真実を貫けるようになるまでにはずいぶん時間がかかったと話す。
「私たちは人々の法的な責任をできる限り軽くしようとしています」「(AIが)事実を捻じ曲げ、恣意的になってしまうのであれば、まずいですからね」
さまざまな判例を学習し、鍛えられたAI弁護士には、本物の弁護士のような思慮深さが備わっている。
まずは法廷の議論にリアルタイムで耳を傾ける。それをきちんと分析したうえで、被告にどう回答するべきか助言するのだという。
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DoNotPay.com CEO Browder on World’s First Robot Lawyer弁護士費用の軽減を目指す ブラウダーCEOによると、最終的な目標は、一部の弁護士に完全にとってかわり、被告の弁護士費用の負担を軽くすることだという。
アメリカは訴訟大国であり弁護士の数も多い。それだけに弁護士の質もピンキリだ。
欧州人権裁判所に立つような良心的な弁護士もたくさんいるでしょうが、ただ書類をコピペするだけで多額のお金を請求する弁護士も数多くいます。将来的にAI弁護士が、ただ法廷で法的なアドバイスをするだけでなく、 「巨大企業と戦い、官僚主義を打ち破り、ボタンを押すだけで誰でも訴えられる」心強い味方になってくれることを期待しているという。
そうした弁護士はとってかわられるでしょうし、そうなるべきです
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弁護人に有利となる事例や法律を導き出す ブラウダーCEOによると、AI弁護士はまずクライアントに現在の問題について質問して、弁護人に有利な事例や、方法がないかをこれまで学習したデータから導き出し検討する。
さらに依頼者に有利な法律の抜け穴がないかを探り出し、それをもとに法的な書類を作成して、しかるべく機関に送ったり、ウェブサイトにアップロードしたりする。
ブラウダーCEOは過去の経験から、法的書類の作成を自動化できることに気がついた。そしてそのためのウェブサイトを立ち上げたことが、今回のAI弁護士につながったそうだ
ちなみにアメリカではスピード違反や駐車違反などでも、訴訟を起こす権利が与えられている。
DoNotPay(支払うべからず)という会社名は法律AIの企業としては奇妙にも思えるかもしれないが、その目標は「今アメリカ人が支払っている2000億ドルの弁護士費用をほぼタダにする」という意味があるのだという。
References:'Robot lawyer' powered by AI will help fight speeding ticket as it takes first case in court / written by hiroching / edited by / parumo
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