
ドイツのルートヴィヒ・マクシミリアン大学(LMU)の研究チームは、古代バビロニアの楔形文字の難しい文章を解読できるAIシステムを開発した。
「Fragmentarium」というこのアルゴリズムは、ギルガメッシュ叙事詩を含む、人類がこれまでに書いたもっとも古い物語の断片をつなぎ合わせて解読することができるという。
LMUでは、2018年から、現存しているバビロニアの楔形文字の石板すべてをデジタル化するプロジェクトを行っている。
断片でしか残されてない古代の文献をAIで解読 古代バビロニアのテキストを解釈する上で問題なのは、文字が粘土板に書かれていることだ。
今日、こうした粘土板は数え切れないほど存在していて、みんなバラバラの断片でしか残っていない。しかも、これら断片はそれぞれ、ロンドンの大英博物館や、バグダッドのイラク博物館など、大陸を遠く隔てた場所に散在している。
こうした困難に加え、文章はシュメール語とアッカド語のふたつの複雑な書体系で書かれているため、編集作業はますます困難なものになっている。
これまでは、書かれている文字を紙にコピーして解読し、そのコピーをほかのものと比較して、どの断片がつながっているのか、パズルのようにひとつひとつ丹念に割り出していた。
だが、ドイツのルートヴィヒ・マクシミリアン大学(LMU)の研究チームが開発したAI「Fragmentarium」を利用すると、こうした作業が断然簡単になる。
これまでデジタル化されている2万2000のテキストの断片から、AIが画像をふるいにかけ、人間がやったら通常は数ヶ月かかる作業を、たった数秒のうちに体形的に組み合わせることができるのだ。
「これまではなかった、断片の巨大なデータベースツールです。バビロニア文学を再構築するのに不可欠なもので、遥かに早く作業を進めることができるでしょう」LMUのアッシリア学研究所(古代近東文学)教授のエンリケ・ヒメネスはプレスリリースで語っている。
[画像を見る]
ギルガメシュ叙事詩の元となるアッカド語のタブレット XI /
image credit:British Museum / WIKI commonsギルガメッシュ叙事詩の断片を解読、バビロン市を称えた賛歌も確認 2022年11月、「Fragmentarium」は、紀元前2100年にさかのぼる世界最古の現存する文学作品、ギルガメッシュ叙事詩の断片を解読した。
この叙事詩のもっとも有名な場面は、創世記に出てくるノアの箱舟の物語の起源だと考えられている、壊滅的な大洪水が描写されている箇所だ。
もうひとつのビッグな発見は、「Fragmentarium」のおかげでバビロン市を称えた賛歌が確認されたことだ。
「この文章はとてもすばらしい。町の様子が目に浮かぶようです。バビロンに春がやってくることを歌っているのです」ヒメネスは説明する。
「これまで、バビロニア文学には都市を寿ぐ賛歌はありません。今、新たに15の断片が見つかっていますが、「Fragmentarium」がなければ、再構築までに30~40年はかかったでしょう」
賛歌の内容は次のようなものだ。
追記(2023/1/17)誤字を訂正して再送します。
References:Playing with the source of world literature - LMU Munich / AI Deciphers Ancient Babylonian Texts And Finds Beautiful Lost Hymn | IFLScience / written by konohazuku / edited by / parumo
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「Fragmentarium」というこのアルゴリズムは、ギルガメッシュ叙事詩を含む、人類がこれまでに書いたもっとも古い物語の断片をつなぎ合わせて解読することができるという。
LMUでは、2018年から、現存しているバビロニアの楔形文字の石板すべてをデジタル化するプロジェクトを行っている。
断片でしか残されてない古代の文献をAIで解読 古代バビロニアのテキストを解釈する上で問題なのは、文字が粘土板に書かれていることだ。
今日、こうした粘土板は数え切れないほど存在していて、みんなバラバラの断片でしか残っていない。しかも、これら断片はそれぞれ、ロンドンの大英博物館や、バグダッドのイラク博物館など、大陸を遠く隔てた場所に散在している。
こうした困難に加え、文章はシュメール語とアッカド語のふたつの複雑な書体系で書かれているため、編集作業はますます困難なものになっている。
これまでは、書かれている文字を紙にコピーして解読し、そのコピーをほかのものと比較して、どの断片がつながっているのか、パズルのようにひとつひとつ丹念に割り出していた。
だが、ドイツのルートヴィヒ・マクシミリアン大学(LMU)の研究チームが開発したAI「Fragmentarium」を利用すると、こうした作業が断然簡単になる。
これまでデジタル化されている2万2000のテキストの断片から、AIが画像をふるいにかけ、人間がやったら通常は数ヶ月かかる作業を、たった数秒のうちに体形的に組み合わせることができるのだ。
「これまではなかった、断片の巨大なデータベースツールです。バビロニア文学を再構築するのに不可欠なもので、遥かに早く作業を進めることができるでしょう」LMUのアッシリア学研究所(古代近東文学)教授のエンリケ・ヒメネスはプレスリリースで語っている。
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ギルガメシュ叙事詩の元となるアッカド語のタブレット XI /
image credit:British Museum / WIKI commonsギルガメッシュ叙事詩の断片を解読、バビロン市を称えた賛歌も確認 2022年11月、「Fragmentarium」は、紀元前2100年にさかのぼる世界最古の現存する文学作品、ギルガメッシュ叙事詩の断片を解読した。
この叙事詩のもっとも有名な場面は、創世記に出てくるノアの箱舟の物語の起源だと考えられている、壊滅的な大洪水が描写されている箇所だ。
もうひとつのビッグな発見は、「Fragmentarium」のおかげでバビロン市を称えた賛歌が確認されたことだ。
「この文章はとてもすばらしい。町の様子が目に浮かぶようです。バビロンに春がやってくることを歌っているのです」ヒメネスは説明する。
「これまで、バビロニア文学には都市を寿ぐ賛歌はありません。今、新たに15の断片が見つかっていますが、「Fragmentarium」がなければ、再構築までに30~40年はかかったでしょう」
賛歌の内容は次のようなものだ。
アラトゥ川、これまでのところ、世界中の200人の研究者が、自分の研究のために「Fragmentarium」のプラットフォームをオンラインで使っているが、2023年2月現在、「Fragmentarium」は一般でも無料で使用できるという。
知恵の主ヌディムドによって創造された
平原に水を注ぎ、葦を濡らし、
その水をラグーンと海に注ぐ。
彼の野には花が咲き乱れ、緑が萌え、
牧草地は新鮮な穀物で輝く。
彼のおかげでとうもろこしは山積みになり、
草は多くの生き物たちのための牧草地として高く育つ。
人類にふさわしい富と壮麗さで、
すべては輝かしい豊かさに覆われている
世界中の誰もが、「Fragmentarium」を使うことができるようになります。解読されていない、こうした古代文字の断片がまだまだたくさんあるのですから
追記(2023/1/17)誤字を訂正して再送します。
References:Playing with the source of world literature - LMU Munich / AI Deciphers Ancient Babylonian Texts And Finds Beautiful Lost Hymn | IFLScience / written by konohazuku / edited by / parumo
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