土の中を掘り進んで植物が種を埋めるのを補助し、成長を助ける装置が開発される
 ある植物の種(タネ)は、天然のドリルで土にぐりぐりと穴を掘り種を埋めていく。これをヒントに開発されたのが、種が埋まるのをアシストするドリルキャリア「E-seed」だ。


 『Nature』(2023年2月15日付)で発表された「E-seed」は、ドリルのような構造と3本のヒゲで、植物の種が地中に埋まる手助けをする。

 種が自力で土の中に潜り込めるのなら、いつまでも厳しい環境に放置されたり、鳥などに食べられる心配もない。

 だから植物の成長を助け、植林などによって速やかに自然を回復させられるようになるのだそうだ。

天然のドリルを持ち種を埋める植物をヒントに開発 フウロソウ科の「オランダフウロ」という植物は、乾燥した土地で生きるために、雨が降ると、自分で穴を掘ることができる、天然のドリルのような種をに進化した。

 その種にはバネのように巻かれた細長いヒゲがついている。これが解け始めると、自力で立ち上がり、そのままぐりぐりと地中に潜り込んでいくのだ。

 種が自力で立ち上がる秘密は、バネの後端が完全に巻かれず、しゅっと飛び出していることだ。バネが解けると、この飛び出した部分がつっかえ棒のように種を支えて直立させる。

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3本ヒゲでドリル効果をさらに強化した装置「E-seed」 確かにすごい仕掛けだが、ヒゲは1本しかないので、ときにはうまく立てないこともある。

 カーネギーメロン大学などの研究チームは、だったらヒゲを3本に増やしちゃおうと考えた。

 そして開発されたのが「E-seed」という、種の潜り込みアシスト装置だ。

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E-seed: Autonomous self-burying seed carriers for aerial seeding

 ホワイトオーク製の極薄ベニアで作られたもので、湿気を吸って膨らむことでヒゲが解けて、ドリル機能を発揮する。


 実験で平らな地面にまいてみると、2回雨が降っただけで、80%がしっかり地面に潜り込むことが確認された。天然の種では0%だったそうなので、ドリル機能が大幅に向上したことがわかる。

 これに植物の種を仕込ませておけば、いつまでも厳しい環境に放置してしまうことなく、速やかに地中に潜らせ守ってやることができる。

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E-seedによって埋まり、無事に発芽した野菜の芽 / Credit: Carnegie Mellon University植物の成長を促進させ生態系の回復をアシスト 「幾何学の力で、天然のものより、素材の機能をアップさせることができます。またほかの材料に応用できる汎用性も与えてくれます」と、この研究の共著者であるペンシルバニア大学のヤン・シュ氏は述べている。

 また、この装置は土に潜った後は自然に分解されるのでゴミになることもない。

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湿気を吸ってぐりぐりと地中に潜る「E-seed」の様子。潜った後は自然に分解されるのでゴミになることもない / Credit: Carnegie Mellon University

 E-seedは、木材を薬品洗浄し、型に入れて成形するといった5工程で作ることができる。研究チームは、将来的に産業スケールにまで拡大させたいとのことだ。

 同じく共著者であるアクセンチュア研究所のアンドレア・ダニエレスク氏は、E-seedで種を補助することで、生態系の回復を手助けできるだろう説明する。

 「E-seedのような技術なら、地滑りの予防、外来種の影響の緩和、作業しにくい場所での植林の改善など、現実の問題を解決するのに役に立ってくれるでしょう」

References:
・Seed carriers drill into the soil when exposed to rainfall
Autonomous self-burying seed carriers for aerial seeding | Nature
/ written by hiroching / edited by / parumo

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