新種の巨大古代魚の化石を発見。人類の遠い祖先を捕食していた可能性
 今から3億5000万年前、まだ恐竜が地上の王者となるはるか前の時代、ゴンドワナ超大陸の川や湖には獲物を待ち伏せする巨大な肉食魚が存在していたことが、発掘された化石により明らかになった。

 新たに発見された古代魚は体長2.7メートルもあり、これまでに知られているものとしてはデボン紀後期最大の硬骨魚だ。


 その姿は、やや顔の短いアリゲーターガーを思わせ、口の中に5センチもある1対のキバを生やしていた。

 大型の肉食性淡水魚「ハイネリア」の仲間で、つけられた学名が「ハイネリア・ウデレジネ(Hyneria udlezinye)」。南アフリカの先住民の言葉で「他者をくらう者」を意味している。

四肢動物すら獲物としていた上位捕食者 この「ハイネリア・ウデレジネ(Hyneria udlezinye)」の存在を示す最初の手がかりは、南アフリカ南部の街マカンダにほど近い「ウォータールー・ファーム」という発掘現場で1995年に発見された。それは特徴的な波模様のあるウロコの化石だ。

 アルバニー博物館の古生物学者ロバート・ゲス氏らは、その後も調査をつづけ、ついにすべての化石をつなぎ合わせることに成功。その成果は『PLOS One』(2023年2月22日付)で発表されている。

 ハイネリアが捕食動物であることがわかるのは、その骨格の特徴からだ。

 たとえば、ヒレが体の後ろへ向かっているのだが、これは待ち伏せして、エモノが近寄ってきた瞬間、さっと襲いかかるのに適している。

 「ハイネリアは暗い物陰に潜んで、エモノが通過するのを待ち伏せしていたのでしょう」と、ゲス氏は説明している。

 しかも巨大なハイネリアが狙っていたのは、おそらく「四肢動物」であるという。つまりは私たちの遠い祖先を捕食していたわけだ。


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ハイネリアの復元予想図 / image credit:ABelov2014 / WIKI commons CC BY-SA 3.0熱帯だけでなく、寒い地域にも生息していた  じつはハイネリアの仲間はほかにもおり、デボン紀後期にユーラメリカ超大陸の一部だったペンシルベニア州では「ハイネリア・リンデ(Hyneria lindae)」が発見されている。

 今回ウォータールー・ファームで見つかった「ハイネリア・ウデレジネ」の化石は、ハイネリアがゴンドワナ超大陸にも生息していたことを示す初めての証拠だ。

 またハイネリアが属する「トリスティコプテルス科(Tristichopteridae)」の仲間が、ゴンドワナ超大陸の熱帯地域だけでなく全体に生息しており、中には極圏で生きていたものすらいたという裏付けでもある。

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発見されたウロコの化石。ハイネリアの特徴である波のような模様がある / image credit:Robert Gess, Per Ahlberg

 これまでに発見されたトリスティコプテルス科の化石のほとんどは、当時ゴンドワナ超大陸の一部で熱帯だったオーストラリアで発掘されている。

 そのためトリスティコプテルス科は、現在のオーストラリアにあたるゴンドワナ超大陸の熱帯沿岸で誕生したのだろうと推測されている。

 トリスティコプテルス科の仲間は、デボン紀の終わり(約3億5900万年前)の大量絶滅で姿を消し、その直接の子孫は残っていない。

 だがデボン紀のもっと古い時代には私たちとの共通祖先が存在したと考えられている。

 研究チームのパー・アールバーグ氏が語ったところによると、トリスティコプテルスは、私たちの「またいとこ」のような存在なのだそうだ。

References:Late Devonian fish, the 'one who consumes others,' was 8 feet long | Live Science / New species of ancient bony fish discovered in South Africa / written by hiroching / edited by / parumo

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