三葉虫に第3の目があることが新たに発見される
 カンブリア紀からペルム紀まで約3億年もの間を生き抜いたあ、古代生物のシンボルのような「三葉虫」に、これまで知られていなかった第3の目が見つかったそうだ。

 節足動物の頭部にある単眼の一種「中眼」と呼ばれる第3の目は、現代の昆虫や甲殻類などにも見られるものだが、たくさん化石があり、150年も研究されてきた三葉虫で、これまで発見されなかったのは不思議だ。


 三葉虫の第3の目に関する最新の研究は『Scientific Reports』(23年3月8日付)で報告された。

三葉虫には第3の目「中眼」があることが新たに発見される ちょっと昆虫の目を想像してほしい。多くの人は、たくさんのレンズが集まった「複眼」をイメージするのではないだろうか。これは「側眼」という光刺激を受容する感覚器官だ。

 じつは甲殻類や昆虫といった「節足動物」には、「側眼」のほかに「中眼」というまた別の種類の目がある。

 単眼は1つのレンズでできていて、額の真ん中にある。中眼は光の強さや方向を感じる役割がある。

 これは現代の節足動物にも通じる特徴なのだが、化石で有名な「三葉虫」は、節足動物の仲間であるにも関わらず、なぜかこれが見つからなかった。

 5億4000万年前から2億5000万年前に生きていた三葉虫は、古生代の代表的な生き物で、化石も数多く発掘されている。

 それだけよく研究もされているが、それでも第3の目がこれまで見つからなかったのなら、ないと思われるのは当然だろう。

 ところがじつはあったのだ。

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photo by Pixabay
幼生の額で見つかった3つの点(目) 三葉虫は1万種以上が知られる多様なグループだが、今回ドイツ、ケルン大学などの研究チームが調べたのは、「アウラコプレウラ(Aulacopleura koninckii)」という三葉虫の幼生の化石だ。


 その一部が削られたの頭部の化石の前面に、形も大きさもほぼ同じ、小さな楕円形の点が3つ見つかったのだ。

 各点は平行に並んでおり、まるで扇のように下の方が軽く広がっていた。また輪郭がはっきりと滑らかで、ムラのない茶褐色だった。

 小さな点はどれも均一で同じ特徴があることから、腐敗や化石になるとき偶然できたとは考えにくい。このことから、研究チームは、これまで三葉虫にはないとされた中眼の痕跡だとしている。

 また「キクロピゲ(Cyclopyge sibilla)」という別の三葉虫の「頭鞍(とうあん/頭中央の盛り上がった部分)」でも、3つの中眼が見つかっている。

 こちらの目は、人間に似ていないこともないレンズがあり、アウラコプレウラの目よりも性能が良かったろうと推測されている。

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三葉虫の複眼と中眼
(a) Aulacopleura koninckii(チェコ、シルリア紀/Barrande, 1846)
(b) (a)の複眼
(c) Gerastos cuvieriの複眼(ドイツ、デボン紀中期/Steininger, 1831)
(d)Eldredgeops ranaの複眼(アメリカ、デボン紀中期/Stumm, 1953)
(e)A. koninckii、2匹の幼生
(f)(e)の上の標本の眼の位置を示したもの
(g) 中眼
(h, g) 拡大したもの
(i) 2匹のCyclopyge sibilla、下は幼生(モロッコ、オルドビス紀/Šnajdr, 1982)
(j) (i)の関連標本。
(k, j) 中眼の位置
(l) (j, k)の白い矢印は中眼。黄い矢印は背側器官
(h, l) 挿入図の黒い部分は中眼ではない
(m) A. koninckiiの完全に殻化した頭鞍(挿入図)、中眼は見えない
(n1-4) (l)のC. sibillaの左中眼、異なるコントラストで表示
(o1-4) (l)のC. sibillaの中央の中眼、異なるコントラストで表示
(p1-4) (l)のC. sibillaの右中眼、異なるコントラストで表示
/ image credit:Scientific Reports (2023). DOI: 10.1038/s41598-023-31089-7
なぜこれまで見つからなかったのか? だが、どうしてこれまで三葉虫では中眼が見つからなかったのだろう?

 その理由について研究チームは、三葉虫の中眼は幼生だけのもので、おそらくは薄く透明な「背甲」の下にあったからではないかと推測している。

 この背甲は化石になるときに透明ではなくなってしまう。だから、化石を調べてもそう簡単には見つからなかったというのだ。


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三葉虫に第3の目は進化の位置付けを知るヒントに ちなみに中眼は、もともと「カギムシ(有爪動物)」というムカデのような原始的な動物で発達したものだと考えられている。

 そうした最初の動物たちには中眼が2個ついていた。この特徴は、昔とさほど姿が変わっていない現生のクモ形類動物の仲間にも見られるものだ。

 ところが、カンブリア期前期(5億4000万年前頃)、現在の中国に生息していた「Cindarella eucalla」のような節足動物になると中眼が4つある。そして、現代の昆虫や甲殻類では3つだ。

 このような中眼の数の変遷は、動物の進化樹における位置付けを知る重要なヒントなのだそうだ。

References:Research team finds indirect evidence for existence of dark matter surrounding black holes / written by hiroching / edited by / parumo

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