
放牧された羊に囲まれたウェールズの秘密の場所には、4億6200万年前の古代生物の化石が大量に残されていたそうだ。
「キャッスルバンク」と呼ばれるその場所には、当時の古生物の目と脳すらキレイに保存されており、これまで見たこともない新種も多かったという。
このほど『Nature Ecology and Evolution』(2023年5月1日付)に掲載された新しい研究では、この化石堆積層全体の調査結果について説明している。
それによると、キャッスルバンクは、カンブリア爆発で誕生した不可思議な生物たちが、その後どのように進化したのか知ることができる、世界でも稀な場所なのだそうだ。
オルドビス紀の貴重な生物の化石の宝庫「キャッスルバンク」 英国ウェールズのキャッスルバンクでは、滅多に残らない軟体海洋生物の化石が大量に見つかっており、世界的に有名なカナダの「バージェス頁岩」や中国の「清江生物相」を思わせる。
だがキャッスルバンクが世界的にも珍しいのは、バージェス頁岩と清江生物相よりも少々新しい時代のものであるからだ。
後者2つは約5億年前のカンブリア紀の地層なのに対して、キャッスルバンクはそれより5000万年新しい。
カンブリア紀は多種多様な生物が爆発的に登場(カンブリア爆発)し、現在知られる動物の「門(ボディプラン)」がすべて出揃ったとされる時代だ。
それに続くオルドビス紀(4億8830万年~4億4370万年前)もまた、生物の爆発的な多様化(生物大放散事変)が進んだ興味深い時代である。
はたしてカンブリア紀の生物は、その後の時代でどのように進化したのか? それを知る手がかりはこれまでほとんどなかったが、キャッスルバンクにはまさにそれを伝える化石が存在するのだ。
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カンブリア紀の動物メガケイラ類の化石。黒い線は腸だ / image credit:Joe Bottingキャッスルバンクで保存状態の良い化石を多数発見、ほとんどが新種 キャッスルバンクからは170種以上の化石が発見されている。しかも、そのほとんどがこれまで知られていなかった新種と考えられるという。
発見された化石の一例として、”奇妙奇天烈動物”として有名な「オパビニア」などカンブリア紀後期の生物や、その後に進化したフジツボやエビ、あるいは6本足の昆虫に似たはっきり種がわからない生物などが挙げられる。
さらには三葉虫の消化器官や、やはり種がわからない節足動物の目や脳、蠕虫や海綿などの化石も見つかったとのことだ。
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(A)priapulid(海虫)と思われるもの、(B)管の中で生活する軟体生物 tubicolous / image credit:NIGPAS化石保護のためにキャッスルバンクの場所は秘密 発見者でウェールズ国立博物館の名誉研究員でもあるジョゼフ・ボッティング氏は、「答えられない疑問がたくさんあり、この場所はこれから何十年も新しい発見をもたらしてくれるでしょう」と、ウェールズ国立博物館が出したプレスリリースで語っている。
キャッスルバンクは、まだ新型コロナでロックダウンされていた2020年、ボッティング氏とルーシー・ミューア氏の自宅(2人は古生物学者夫妻だ)の近くで見つかった。
詳しい場所は、化石を保護するために公表されていないが、羊が放牧されている小さな採石場であるとのこと。
2人は羊たちに見守られながら、100日以上かけて慎重に化石の発掘を進めた。幸いにも「羊たちは邪魔することなく、むしろ興味深げに眺めていた」とのことだ。
ちなみに化石というと恐竜のような巨大生物のものを想像しがちだが、キャッスルバンクで見つかったものは、ほとんどが最大でも0.25センチと小さなものだったそう。
またそこは幼い動物の保育所のような場所だった可能性があり、一番普通にみられた三葉虫(Ogyginus corndensis)は幼体のみだったそうだ。
だがこの点についてははっきりしておらず、キャッスルバンクの化石のほとんどが小さいのは、ただ単にそこに生息していた生物の特徴だった可能性もあるとのことだ。
References:462 million-year-old fossilized eyes and brains uncovered in 'secret' Welsh fossil site / written by hiroching / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
「キャッスルバンク」と呼ばれるその場所には、当時の古生物の目と脳すらキレイに保存されており、これまで見たこともない新種も多かったという。
このほど『Nature Ecology and Evolution』(2023年5月1日付)に掲載された新しい研究では、この化石堆積層全体の調査結果について説明している。
それによると、キャッスルバンクは、カンブリア爆発で誕生した不可思議な生物たちが、その後どのように進化したのか知ることができる、世界でも稀な場所なのだそうだ。
オルドビス紀の貴重な生物の化石の宝庫「キャッスルバンク」 英国ウェールズのキャッスルバンクでは、滅多に残らない軟体海洋生物の化石が大量に見つかっており、世界的に有名なカナダの「バージェス頁岩」や中国の「清江生物相」を思わせる。
だがキャッスルバンクが世界的にも珍しいのは、バージェス頁岩と清江生物相よりも少々新しい時代のものであるからだ。
後者2つは約5億年前のカンブリア紀の地層なのに対して、キャッスルバンクはそれより5000万年新しい。
カンブリア紀は多種多様な生物が爆発的に登場(カンブリア爆発)し、現在知られる動物の「門(ボディプラン)」がすべて出揃ったとされる時代だ。
それに続くオルドビス紀(4億8830万年~4億4370万年前)もまた、生物の爆発的な多様化(生物大放散事変)が進んだ興味深い時代である。
はたしてカンブリア紀の生物は、その後の時代でどのように進化したのか? それを知る手がかりはこれまでほとんどなかったが、キャッスルバンクにはまさにそれを伝える化石が存在するのだ。
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カンブリア紀の動物メガケイラ類の化石。黒い線は腸だ / image credit:Joe Bottingキャッスルバンクで保存状態の良い化石を多数発見、ほとんどが新種 キャッスルバンクからは170種以上の化石が発見されている。しかも、そのほとんどがこれまで知られていなかった新種と考えられるという。
発見された化石の一例として、”奇妙奇天烈動物”として有名な「オパビニア」などカンブリア紀後期の生物や、その後に進化したフジツボやエビ、あるいは6本足の昆虫に似たはっきり種がわからない生物などが挙げられる。
さらには三葉虫の消化器官や、やはり種がわからない節足動物の目や脳、蠕虫や海綿などの化石も見つかったとのことだ。
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(A)priapulid(海虫)と思われるもの、(B)管の中で生活する軟体生物 tubicolous / image credit:NIGPAS化石保護のためにキャッスルバンクの場所は秘密 発見者でウェールズ国立博物館の名誉研究員でもあるジョゼフ・ボッティング氏は、「答えられない疑問がたくさんあり、この場所はこれから何十年も新しい発見をもたらしてくれるでしょう」と、ウェールズ国立博物館が出したプレスリリースで語っている。
キャッスルバンクは、まだ新型コロナでロックダウンされていた2020年、ボッティング氏とルーシー・ミューア氏の自宅(2人は古生物学者夫妻だ)の近くで見つかった。
詳しい場所は、化石を保護するために公表されていないが、羊が放牧されている小さな採石場であるとのこと。
2人は羊たちに見守られながら、100日以上かけて慎重に化石の発掘を進めた。幸いにも「羊たちは邪魔することなく、むしろ興味深げに眺めていた」とのことだ。
ちなみに化石というと恐竜のような巨大生物のものを想像しがちだが、キャッスルバンクで見つかったものは、ほとんどが最大でも0.25センチと小さなものだったそう。
またそこは幼い動物の保育所のような場所だった可能性があり、一番普通にみられた三葉虫(Ogyginus corndensis)は幼体のみだったそうだ。
だがこの点についてははっきりしておらず、キャッスルバンクの化石のほとんどが小さいのは、ただ単にそこに生息していた生物の特徴だった可能性もあるとのことだ。
References:462 million-year-old fossilized eyes and brains uncovered in 'secret' Welsh fossil site / written by hiroching / edited by / parumo
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