
ホモ・ナレディ復元予想図 / image credit:Cicero Moraes (Arc-Team) et al. WIKI commons
死者を埋葬するという文化は我々人類に根付いているが、現生人類の祖先よりも10万年以上前に、埋葬を行っていたヒト族がいたことが判明した。
南アフリカの古生物学者たちが、世界最古と思われるヒト族の埋葬地を発見した。
そんな彼らの遺骨が、明らかに意図的に埋葬されていたのだ。つまり、埋葬という象徴的な行為を最初に行ったのは、ホモ・サピエンスが最初ではなかった可能性があるということだ。
ホモ・サピエンスより10万年以上前に埋葬を行っていたホモ・ナレディ 著名な古生物学者リー・バーガー氏率いる研究チームが、ヨハネスブルグ近くのユネスコ世界遺産、「人類のゆりかご」の洞窟地下30メートル地点で、人類の遠い祖先ホモ・ナレディの遺骨を数体発見した。
ホモ・ナレディは、暫定的にヒト属に分類されたヒト族の絶滅種である。石器時代の原人で、木に登るのが得意だったとされている。
「ホモ・ナレディのこの埋葬は、ホモ・サピエンスの埋葬の痕跡よりも、少なくとも10万年も前のもので、人としての世界最古の埋葬だ」研究者は論文の中で述べている。
通常、死者を埋葬するなど、複雑な「意味をこめる」行為が可能になったのは、脳が大きくなったおかげだと考えられている。人類の進化に大きな疑問を投げかける発見 そのため、この発見は、人類の進化に関するこれまでの理解に疑問を投げかけるものとなった。
これまでに発掘されている最古の埋葬例は、中東やアフリカで発見されたもので、およそ10万年前のホモ・サピエンスの遺骨が含まれていた。
今回、バーガーらが南アフリカで発見した遺骨は、発表されるやいなや、物議をかもしている。これまで最古とされている埋葬例よりも、ずっと古く、少なくとも紀元前20万年にさかのぼるものだからだ。
[画像を見る]
ホモ・ナレディの埋葬行為を発見した古生物学者リー・バーガー氏
ホモ・ナレディは、類人猿と現生人類の中間地点にいる原始的な人種で、身長は150cm、脳の大きさは果物のオレンジほどしかない。
複雑なことができないはずのホモ・ナレディが、埋葬という行為を行っていたとしたら、これは重要な発見だ。
曲げることのできる指とつま先をもち、道具を扱える手と歩くことができる足をそなえていたホモ・ナレディは、人類の進化の道がまっすぐの直線だったという概念をすでにくつがえしたことになる。
ホモ・ナレディは、2013年に初めてその骨が発見されたライジング・スター洞窟にちなんで名づけられた。
[画像を見る]
アフリカ大陸の「人類のゆりかご」で回収されたホモ・ナレディの骨の断片 / image credit:Lee Roger Berger research team / WIKI commons遺体を安置する行為は脳の大きな人類に限ったことではなかった可能性 新たな研究の中心である楕円形の埋葬地は、2018年に始まった発掘調査中に発見された。
その場所は、明らかに意図的に掘って作られ、少なくとも5人分の遺骨を埋葬できるようになっていた。
「この発見は、遺体を安置するという行為が、ホモ・サピエンスや脳が大きな他の人類に限ったことではなかったことを示しています」
ホモ・ナレディが、複雑な感情表現や認知行動が可能だったことを示す証拠は、これだけではないという。
[画像を見る]
ホモ・ナレディの頭蓋骨の復元ホモ・ナレディは考えられている以上に進歩的だった可能性 洞窟内の柱のわざわざ滑らかにした表面に、未完成のハッシュタグのような記号など、幾何学模様のような図形が刻まれていた。偶然についたものではなく、明らかに意図的に描かれている。
「これは、目には見えない象徴的な行為を発達させたのは現生人類だけの特徴ではなく、そうした行為を発明したことさえないのかもしれないということを意味しているのです」バーガーは語っている。
こうした発表は、古生物学界の一部をかき乱す可能性がある。57歳のバーガーは、科学的な厳密さに欠け、結論を急ぐと言われて非難されたこともある。
2015年の最初の発見で、ナショナル・ジオグラフィックの支持を得たバーガーが、ホモ・ナレディには、その脳の大きさ以上の能力があると発表したとき、多くが尻込みした。
「当時の科学者にとって、それはあまりに受け入れがたいことでした。私たちは、すべてをこの大きな脳に結びつけて考えているからです」
[画像を見る]
ホモ・ナレディの埋葬形式をイメージした図 / image credit: Lee Berger
「私たちは、それが真実ではないことを世界に伝えようとしているのです」
さらなる分析が必要ではあるが、この発見は、人類の進化についての理解を変えるという。
論文の共著者、プリンストン大学人類学教授のアグスティン・フエンテス氏は語る。
「埋葬、意味づけ、芸術さえも、これまで考えられていたよりもはるかに複雑でダイナミックな、現生人類以外の歴史がある可能性があります」
ミズーリ大学の人類学者、キャロル・ウォード氏は、「さらに確認が進めば、この研究はかなり潜在的な重要性をもつことになります」と語る。
「このような遺体の処理の仕方に、意図的な埋葬以外の説明がつくかどうか、まるで異なるほかの説を排除できるかどうか、同業者による念入りな査読の結果を楽しみにしています」
また、論文では壁の記号がのちの人類によって描かれた可能性を排除できないことを認めているのをウォードは指摘している。
発表された論文
・Evidence for deliberate burial of the dead by Homo naledi
・241,000 to 335,000 Years Old Rock Engravings Made by Homo naledi in the Rising Star Cave system, South Africa
References:World's oldest-known burial site found in S.Africa: scientists / written by konohazuku / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
死者を埋葬するという文化は我々人類に根付いているが、現生人類の祖先よりも10万年以上前に、埋葬を行っていたヒト族がいたことが判明した。
南アフリカの古生物学者たちが、世界最古と思われるヒト族の埋葬地を発見した。
絶滅種のヒト族「ホモ・ナレディ」は、ホモ・サピエンスの遠い先祖ではあるが、脳はずっと小さく、複雑な行為はできないとこれまで考えられていた。
そんな彼らの遺骨が、明らかに意図的に埋葬されていたのだ。つまり、埋葬という象徴的な行為を最初に行ったのは、ホモ・サピエンスが最初ではなかった可能性があるということだ。
ホモ・サピエンスより10万年以上前に埋葬を行っていたホモ・ナレディ 著名な古生物学者リー・バーガー氏率いる研究チームが、ヨハネスブルグ近くのユネスコ世界遺産、「人類のゆりかご」の洞窟地下30メートル地点で、人類の遠い祖先ホモ・ナレディの遺骨を数体発見した。
ホモ・ナレディは、暫定的にヒト属に分類されたヒト族の絶滅種である。石器時代の原人で、木に登るのが得意だったとされている。
「ホモ・ナレディのこの埋葬は、ホモ・サピエンスの埋葬の痕跡よりも、少なくとも10万年も前のもので、人としての世界最古の埋葬だ」研究者は論文の中で述べている。
通常、死者を埋葬するなど、複雑な「意味をこめる」行為が可能になったのは、脳が大きくなったおかげだと考えられている。人類の進化に大きな疑問を投げかける発見 そのため、この発見は、人類の進化に関するこれまでの理解に疑問を投げかけるものとなった。
これまでに発掘されている最古の埋葬例は、中東やアフリカで発見されたもので、およそ10万年前のホモ・サピエンスの遺骨が含まれていた。
今回、バーガーらが南アフリカで発見した遺骨は、発表されるやいなや、物議をかもしている。これまで最古とされている埋葬例よりも、ずっと古く、少なくとも紀元前20万年にさかのぼるものだからだ。
[画像を見る]
ホモ・ナレディの埋葬行為を発見した古生物学者リー・バーガー氏
ホモ・ナレディは、類人猿と現生人類の中間地点にいる原始的な人種で、身長は150cm、脳の大きさは果物のオレンジほどしかない。
複雑なことができないはずのホモ・ナレディが、埋葬という行為を行っていたとしたら、これは重要な発見だ。
曲げることのできる指とつま先をもち、道具を扱える手と歩くことができる足をそなえていたホモ・ナレディは、人類の進化の道がまっすぐの直線だったという概念をすでにくつがえしたことになる。
ホモ・ナレディは、2013年に初めてその骨が発見されたライジング・スター洞窟にちなんで名づけられた。
[画像を見る]
アフリカ大陸の「人類のゆりかご」で回収されたホモ・ナレディの骨の断片 / image credit:Lee Roger Berger research team / WIKI commons遺体を安置する行為は脳の大きな人類に限ったことではなかった可能性 新たな研究の中心である楕円形の埋葬地は、2018年に始まった発掘調査中に発見された。
その場所は、明らかに意図的に掘って作られ、少なくとも5人分の遺骨を埋葬できるようになっていた。
「この発見は、遺体を安置するという行為が、ホモ・サピエンスや脳が大きな他の人類に限ったことではなかったことを示しています」
ホモ・ナレディが、複雑な感情表現や認知行動が可能だったことを示す証拠は、これだけではないという。
[画像を見る]
ホモ・ナレディの頭蓋骨の復元ホモ・ナレディは考えられている以上に進歩的だった可能性 洞窟内の柱のわざわざ滑らかにした表面に、未完成のハッシュタグのような記号など、幾何学模様のような図形が刻まれていた。偶然についたものではなく、明らかに意図的に描かれている。
「これは、目には見えない象徴的な行為を発達させたのは現生人類だけの特徴ではなく、そうした行為を発明したことさえないのかもしれないということを意味しているのです」バーガーは語っている。
こうした発表は、古生物学界の一部をかき乱す可能性がある。57歳のバーガーは、科学的な厳密さに欠け、結論を急ぐと言われて非難されたこともある。
2015年の最初の発見で、ナショナル・ジオグラフィックの支持を得たバーガーが、ホモ・ナレディには、その脳の大きさ以上の能力があると発表したとき、多くが尻込みした。
「当時の科学者にとって、それはあまりに受け入れがたいことでした。私たちは、すべてをこの大きな脳に結びつけて考えているからです」
[画像を見る]
ホモ・ナレディの埋葬形式をイメージした図 / image credit: Lee Berger
「私たちは、それが真実ではないことを世界に伝えようとしているのです」
さらなる分析が必要ではあるが、この発見は、人類の進化についての理解を変えるという。
論文の共著者、プリンストン大学人類学教授のアグスティン・フエンテス氏は語る。
「埋葬、意味づけ、芸術さえも、これまで考えられていたよりもはるかに複雑でダイナミックな、現生人類以外の歴史がある可能性があります」
ミズーリ大学の人類学者、キャロル・ウォード氏は、「さらに確認が進めば、この研究はかなり潜在的な重要性をもつことになります」と語る。
「このような遺体の処理の仕方に、意図的な埋葬以外の説明がつくかどうか、まるで異なるほかの説を排除できるかどうか、同業者による念入りな査読の結果を楽しみにしています」
また、論文では壁の記号がのちの人類によって描かれた可能性を排除できないことを認めているのをウォードは指摘している。
発表された論文
・Evidence for deliberate burial of the dead by Homo naledi
・241,000 to 335,000 Years Old Rock Engravings Made by Homo naledi in the Rising Star Cave system, South Africa
References:World's oldest-known burial site found in S.Africa: scientists / written by konohazuku / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
編集部おすすめ