
数学者たちの間で、数十年も謎なままだった9番目の「デデキント数」がついに発見されたそうだ。「デデキント数」については本文の方で説明する。
スーパーコンピューター「ノクトゥア2( Noctua 2)」の力を借りて弾き出されたその数 D(9)は、「286 386 577 668 298 411 128 469 151 667 598 498 812 366」実に42桁におよぶとんでもない数だ。
23桁におよぶ8番目のデデキント数が発見されたのは1991年のこと。数学者にとってはそれ以来、32年ぶりの大発見となる。
デデキント数とは? 「デデキント数」とは、ある条件を満たす数の集まりを研究する「組合せ論」という数学分野で重要となる数だ。その名は、その定義を1897年に考案したドイツの数学者リヒャルト・デーデキントにちなんだものだ。
デデキント数の厳密な概念は、数学にくわしくない人間にとってはかなり難解だ。そこでこれを理解するために、サイコロを想像してもらいたい。
しかもこのサイコロは、1つの角で絶妙なバランスをとって、ピタッと立っている。
ここで、その角を「白」か「赤」のどちらかで色塗りすることにする。ただし、1つだけ絶対に守らねばならないルールがある。それは「赤い角と辺でつながったその上の角は、白で塗ってはいけない」というものだ。
このルールにしたがったとき、サイコロはいったい何パターンで塗れるだろうか?
この色塗りできるパターンの数がデデキント数だ(実際はもっと数学的な定義なので、興味がある人は調べてみよう)。
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(左から右へ)点のサイコロならデデキント数は2。線のサイコロなら3。平面のサイコロなら6、立方体の普通のサイコロなら20だ。デデキント数はどんどん増えていく / image credit:public domain/wikimedia
わかりやすいようにサイコロといったが、このサイコロは3次元の立方体である必要はない。
2次元の平面のようなサイコロでもいいし、1次元の線や、なんなら0次元の点のサイコロでもいい。その逆に4次元以上の理解不能な形状をしたサイコロでもかまわない。
点のサイコロなら答えは簡単、デデキント数は2だ。線のサイコロなら3、平面のサイコロなら6だ。
ここまでは小さな数だが、この先はどんどん数が大きくなってくる。
たとえば、ごく普通の立方体のサイコロならデデキント数は20、1991年に当時最強のスーパーコンピューター「クレイ2」を使って発見された8番目の数は23桁もある。
つまり新しいデデキント数を発見するのは、桁違いに難しくなっていくのだ。
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photo by Pixabay
42桁におよぶ9番目のデデキント数 パーダーボルン大学とルーヴェン・カトリック大学の研究チームは今回、高度に特殊化された並列演算ユニットを搭載するスーパーコンピューター「ノクトゥア2( Noctua 2)」の力を借りた。
そして32年ぶりに発見された9番目のデデキント数 D(9)は、冒頭で述べた通り42桁の巨大な数だった。
今回の新しいデデキント数探しは、ルーヴェン・カトリック大学のPatrick De Causmaecker氏が考案した「P係数」という数学的手法が使われたという。
これは強力な数式で、普通のノートPC上で計算させれば、23桁ある8番目のデデキント数ですらほんの8分で弾き出すことができる。
ところが、同じやり方で9番目のデデキント数を求めようとする数十万年もかかってしまう。だからこそスーパーコンピューターの出番だったわけだ。
どうやらぶつぶつ独り言を言いながら、黒板や紙に複雑な数式を書き殴る数学者のイメージは、もはや古いものであるようだ。
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photo by iStock
実際、つい最近もコンピューターモデリングによって「絶対に繰り返されない不思議なタイル」が発見さている。
今回の発見は、9月にノルウェーで開催される「International Workshop on Boolean Functions and their Applications」で発表されるとのことだ。
References:Ninth Dedekind number discovered: Scientists solve long-known problem in mathematics / written by hiroching / edited by / parumo
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スーパーコンピューター「ノクトゥア2( Noctua 2)」の力を借りて弾き出されたその数 D(9)は、「286 386 577 668 298 411 128 469 151 667 598 498 812 366」実に42桁におよぶとんでもない数だ。
23桁におよぶ8番目のデデキント数が発見されたのは1991年のこと。数学者にとってはそれ以来、32年ぶりの大発見となる。
デデキント数とは? 「デデキント数」とは、ある条件を満たす数の集まりを研究する「組合せ論」という数学分野で重要となる数だ。その名は、その定義を1897年に考案したドイツの数学者リヒャルト・デーデキントにちなんだものだ。
デデキント数の厳密な概念は、数学にくわしくない人間にとってはかなり難解だ。そこでこれを理解するために、サイコロを想像してもらいたい。
しかもこのサイコロは、1つの角で絶妙なバランスをとって、ピタッと立っている。
ここで、その角を「白」か「赤」のどちらかで色塗りすることにする。ただし、1つだけ絶対に守らねばならないルールがある。それは「赤い角と辺でつながったその上の角は、白で塗ってはいけない」というものだ。
このルールにしたがったとき、サイコロはいったい何パターンで塗れるだろうか?
この色塗りできるパターンの数がデデキント数だ(実際はもっと数学的な定義なので、興味がある人は調べてみよう)。
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(左から右へ)点のサイコロならデデキント数は2。線のサイコロなら3。平面のサイコロなら6、立方体の普通のサイコロなら20だ。デデキント数はどんどん増えていく / image credit:public domain/wikimedia
わかりやすいようにサイコロといったが、このサイコロは3次元の立方体である必要はない。
2次元の平面のようなサイコロでもいいし、1次元の線や、なんなら0次元の点のサイコロでもいい。その逆に4次元以上の理解不能な形状をしたサイコロでもかまわない。
点のサイコロなら答えは簡単、デデキント数は2だ。線のサイコロなら3、平面のサイコロなら6だ。
ここまでは小さな数だが、この先はどんどん数が大きくなってくる。
たとえば、ごく普通の立方体のサイコロならデデキント数は20、1991年に当時最強のスーパーコンピューター「クレイ2」を使って発見された8番目の数は23桁もある。
つまり新しいデデキント数を発見するのは、桁違いに難しくなっていくのだ。
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42桁におよぶ9番目のデデキント数 パーダーボルン大学とルーヴェン・カトリック大学の研究チームは今回、高度に特殊化された並列演算ユニットを搭載するスーパーコンピューター「ノクトゥア2( Noctua 2)」の力を借りた。
そして32年ぶりに発見された9番目のデデキント数 D(9)は、冒頭で述べた通り42桁の巨大な数だった。
今回の新しいデデキント数探しは、ルーヴェン・カトリック大学のPatrick De Causmaecker氏が考案した「P係数」という数学的手法が使われたという。
これは強力な数式で、普通のノートPC上で計算させれば、23桁ある8番目のデデキント数ですらほんの8分で弾き出すことができる。
ところが、同じやり方で9番目のデデキント数を求めようとする数十万年もかかってしまう。だからこそスーパーコンピューターの出番だったわけだ。
どうやらぶつぶつ独り言を言いながら、黒板や紙に複雑な数式を書き殴る数学者のイメージは、もはや古いものであるようだ。
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実際、つい最近もコンピューターモデリングによって「絶対に繰り返されない不思議なタイル」が発見さている。
今回の発見は、9月にノルウェーで開催される「International Workshop on Boolean Functions and their Applications」で発表されるとのことだ。
References:Ninth Dedekind number discovered: Scientists solve long-known problem in mathematics / written by hiroching / edited by / parumo
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