サイコパスは音楽に込められた感情を理解し、共感するのが難しいという研究結果
 音楽には作り手の思いが込めてあり、様々な感情を共有し、体験する強力な手段の1つだ。

 しかし、ペンシルベニア大学の最新の研究によると、サイコパスの特性を持つ人々は、音楽を通じて伝えられる感情を認識し、共感するのが難しいこととが明らかとなった。


 つまり多くの人が心を打つといわれるような曲も、実際には心に響いていないのだ。

 サイコパスが他者の感情を読み取り、それに共感することが苦手であるらしいことはすでに知られていたが、今回の結果はこのことを裏付けているとのことだ。

サイコパスの心に音楽は響くのか? 一般的に言われているサイコパスとは、個人の特性や行動を説明するための用語であり、必ずしも精神疾患であるとは限らない。

 サイコパスな気質としてよく知られているのが、良心、罪悪感、道徳観念、倫理観の欠如や、自己中心的で、共感力に欠ける点だ。

 サイコパスは、感情の制御を司る脳領域が普通の人とは違う。そのせいで、彼らは感情的なサインを読み取ることが苦手なのだという。(実際には感情はあるが目的のため無視しているという説もある)。

 一方、音楽はその旋律やリズムによって作曲者の感情を伝え、人の心を大きくゆり動かす力がある。
 そんな音楽は、感情をうまく感じられないサイコパスの耳にどう聞こえているのだろう? 彼らもまた音楽にのせられた感情に、心を揺さぶられることがあるのだろうか?

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サイコパスは音楽に込められた感情が理解できない この謎を解くために、ペンシルベニア大学の研究チームは次のような実験を行った。

 まず参加者(約800人)に「穏やかさ」「悲しみ」「恐怖」といった感情を伝える音楽を聴かせる。

 そのうえで、各曲が伝えている感情やそれに対する感想などについて答えてもらう。これとあわせて、参加者のサイコパス傾向を調べるための質問もした。


 実験結果を分析したところ、サイコパス的な傾向がある人ほど、音楽が伝える感情を読み取り、これに共感するのが下手であることがわかったという。

 たとえば、ある楽曲がどんな感情を表現しているのか正しく回答できず、またそれを聴いて感動することもない。

 とりわけ「恐怖を感じさせる音楽」や「テンポの遅い音楽」では、こうした傾向がよく観察されたそうだ。

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感情処理機能の欠如と関連性 こうした音楽に心が響かないというサイコパスの特徴は、やはり彼らの特徴である感情処理機能の欠陥を反映したものと考えられるという。

 音楽はただ楽しいだけでなく、心身の障害を回復させたり、問題行動を改善させたりと治療(音楽療法)に使われることもある。

 だが、サイコパス的傾向が強い人の場合、今回確認された特徴のために、音楽療法があまり効かない可能性もあるとのことだ。

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ただし、さらなる詳細な研究が必要 なお、どんな研究にもつきものだが、この研究も完全ではない。

 たとえば今回の研究において、サイコパス傾向の診断は、ネット上の自己申告による回答のみに基づいて行われている。そのため、参加者のサイコパス・レベルは必ずしも正確ではない可能性がある。

 それでも、音楽とサイコパスの感情処理との関係について、重要な知見を含む結果であるとのことだ。

 この研究は『Cognition and Emotion』(2023年4月27日付)に掲載された。

References:Psychopathic individuals struggle to recognize and resonate with the emotion in music, study finds / written by parumo

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