
無音とは音がないことをいう。なのに人はそれを聴いているという興味深い研究結果が報告された。
アメリカ、ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームは、人間にないはずの音を聴かせるという、矛盾しているようにも思える奇妙な実験を行った。
その結果、人は無音を聴いていることが判明したのだ。
これまで哲学者たちは、人が「音の不在」を知覚できるのかどうか議論を交わしてきた。
『PNAS』(2023年7月10日付)に掲載されたこの研究は、その答えが「イエス」であるという証拠なのだという。
人は無音を知覚し、それを聴いている 無音とは、文字どおり音がないことだ。音がないものを聴いていることなど、どうやって証明すればいいのだろう?
ジョンズ・ホプキンス大学のチームが考案した冴えたアイデアは、音の錯覚を利用するというものだ。
たとえば、ビープ音が鳴ったとしよう。もし短く2回連続で鳴るパターンと、1回だけ長く鳴るパターンがあったとすると、どちらが長く聴こえるだろうか?
これは「ワン・イズ・モア錯覚」と知られるもので、鳴っている長さが同じだったとしても、じつは後者、1回だけの長いビープ音のほうが長く感じられる。
研究チームは、そのビープ音を無音に置き換えてみた。つまり生活音の中に、2回連続の短い無音と、1回長い無音状態を作ったのだ。
もしワン・イズ・モア錯覚の時と同じような錯覚が生じるなら、人は無音を”聴いている”ということになる。
[画像を見る]
photo by iStock
無音を知覚しているかどうかを試す実験 このワン・サイレンス・イズ・モア錯覚実験無音版では、1000人の被験者にレストラン内のガヤガヤとした人の喧騒を聴いてもらった。
だが、この喧騒は突然途切れて、しんと静まり返る。この静寂(無音)のパターンを短い2回連続のものと、1回の長いものにしたとき、どちらが長く感じられるだろうか?
7回にわたるテストの結果はワン・イズ・モア錯覚と同じだった。無音の合計時間は変わらないのに、1回の長い無音のほうが長く感じられたという。
以下の動画は実際にこの実験に用いた音声のサンプルだ。
再生後48秒くらいで画面に「Sequence One...」と表示された後、2回連続の短い無音が、再生後56秒くらいで画面に「Sequence Two...」と表示された後、1回の長い無音状態が作られている。合計すると1回目も2回目も無音の長さは同じである。
1回目と2回目、どちらの無音が長く感じるかを確認することができる。
[動画を見る]
The sound of silence? Researchers prove people hear it脳は無音を音と同じように処理しているのか? ワン・イズ・モア錯覚の時と同じような錯覚
これは脳が無音を音と同じように処理していることを示しているという。
研究チームのイアン・フィリップス教授は、「聴覚が音を処理するときの錯覚や効果は、無音でも起きるのです」と説明する。
これは人が”ないもの”、つまり不在を知覚できるという証明なのだという。
また今回の成果は、私たちが不在を知覚するのかどうかを調べる方法を確立したという点でも重要であるようだ。
[画像を見る]
photo by iStock
騒音がない状況ではどうなるのか?さらなる研究が進められる予定 だが、わからないことはまだある。
今回の実験では、騒音が突然消えてから訪れる静寂について調べられた。ではそのような騒音がない状況ではどうなのだろうか?
あるいは音の不在だけでなく、目に見えるものの不在はどうだろう?
研究チームはこれからも、こうした不在の知覚の研究を続ける予定であるそうだ。
References:The perception of silence | PNAS / The sound of silence? Researchers prove people hear it / written by hiroching / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
アメリカ、ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームは、人間にないはずの音を聴かせるという、矛盾しているようにも思える奇妙な実験を行った。
その結果、人は無音を聴いていることが判明したのだ。
これまで哲学者たちは、人が「音の不在」を知覚できるのかどうか議論を交わしてきた。
『PNAS』(2023年7月10日付)に掲載されたこの研究は、その答えが「イエス」であるという証拠なのだという。
人は無音を知覚し、それを聴いている 無音とは、文字どおり音がないことだ。音がないものを聴いていることなど、どうやって証明すればいいのだろう?
ジョンズ・ホプキンス大学のチームが考案した冴えたアイデアは、音の錯覚を利用するというものだ。
たとえば、ビープ音が鳴ったとしよう。もし短く2回連続で鳴るパターンと、1回だけ長く鳴るパターンがあったとすると、どちらが長く聴こえるだろうか?
これは「ワン・イズ・モア錯覚」と知られるもので、鳴っている長さが同じだったとしても、じつは後者、1回だけの長いビープ音のほうが長く感じられる。
研究チームは、そのビープ音を無音に置き換えてみた。つまり生活音の中に、2回連続の短い無音と、1回長い無音状態を作ったのだ。
もしワン・イズ・モア錯覚の時と同じような錯覚が生じるなら、人は無音を”聴いている”ということになる。
[画像を見る]
photo by iStock
無音を知覚しているかどうかを試す実験 このワン・サイレンス・イズ・モア錯覚実験無音版では、1000人の被験者にレストラン内のガヤガヤとした人の喧騒を聴いてもらった。
だが、この喧騒は突然途切れて、しんと静まり返る。この静寂(無音)のパターンを短い2回連続のものと、1回の長いものにしたとき、どちらが長く感じられるだろうか?
7回にわたるテストの結果はワン・イズ・モア錯覚と同じだった。無音の合計時間は変わらないのに、1回の長い無音のほうが長く感じられたという。
以下の動画は実際にこの実験に用いた音声のサンプルだ。
再生後48秒くらいで画面に「Sequence One...」と表示された後、2回連続の短い無音が、再生後56秒くらいで画面に「Sequence Two...」と表示された後、1回の長い無音状態が作られている。合計すると1回目も2回目も無音の長さは同じである。
1回目と2回目、どちらの無音が長く感じるかを確認することができる。
[動画を見る]
The sound of silence? Researchers prove people hear it脳は無音を音と同じように処理しているのか? ワン・イズ・モア錯覚の時と同じような錯覚
これは脳が無音を音と同じように処理していることを示しているという。
研究チームのイアン・フィリップス教授は、「聴覚が音を処理するときの錯覚や効果は、無音でも起きるのです」と説明する。
これは人が”ないもの”、つまり不在を知覚できるという証明なのだという。
また今回の成果は、私たちが不在を知覚するのかどうかを調べる方法を確立したという点でも重要であるようだ。
[画像を見る]
photo by iStock
騒音がない状況ではどうなるのか?さらなる研究が進められる予定 だが、わからないことはまだある。
今回の実験では、騒音が突然消えてから訪れる静寂について調べられた。ではそのような騒音がない状況ではどうなのだろうか?
あるいは音の不在だけでなく、目に見えるものの不在はどうだろう?
研究チームはこれからも、こうした不在の知覚の研究を続ける予定であるそうだ。
References:The perception of silence | PNAS / The sound of silence? Researchers prove people hear it / written by hiroching / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
編集部おすすめ