AIは人間以上に自分を「人間」と証明することが得意である
 将棋や囲碁で名人を打ち負かすなど、“人間ならでは”とされた分野でAIが人間を凌駕するようになって久しい。

 だが最近では、AIは生身の人間よりも、自分が人間であること証明するのに長けているという。


 それは、ネット上のサービスを利用する際、自分がコンピュータではなく生身の人間であることを証明するために用いられる認証システム「CAPTCHA(キャプチャ)」だ。

 カリフォルニア大学アーバイン校をはじめとする研究チームが、AIボットにCAPTCHA認証をやらせてみたところ、ロボットであるにもかかわらず楽々突破、速さも正解率も人間よりも高いことが明らかになったそうだ。

人間であることを証明する認証システム「CAPTCHA」

 「CAPTCHA」とは、「コンピュータと人間を見分けるための完全自動公開チューリングテスト(Completely Automated Public Turing test to tell Computers and Humans Apart)」の頭文字をとったもの。

 どこかのサイトにアクセスしようとしたら、数枚の写真が表示されて「自転車をすべてクリックしてください」とか、ぐにゃぐにゃした文字が何と書いてあるのか入力せよとか、求められたことがあるだろう。

 そうした作業は人間ならパッとこなせるが、AIやロボットにはなかなかできないため、利用者が本当に人間であることを確かめるために採用されている。

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 だが、今回発表された研究結果によれば、それももう過去の話なのかもしれない。AIボットは人間よりも人間であることを証明するのに優れている カリフォルニア大学アーバイン校をはじめとするチームはまず、Alexaランキングで人気上位200にランクインしていたウェブサイトにあたり、一番よく使われているCAPTCH証を調べてみた。

 すると圧倒的に多く使われていたのが、グーグルの「reCAPTCHA」だった。

 この認証では、まず「私はロボットではありません」という宣言にクリックしてもらう。もしもこれであなたが人間であると確信できなかった場合、先ほど説明したような画像ベースのテストを解くよう求めてくる。

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 そこで研究チームは参加者1400人にこのテストを解いてもらい、クリアするまでの時間と正答率を調べてみた。

 それによると人間がテストを解くのにかかる時間は3.1~4.9秒、正答率は71~85%ほど。
ところが、同じテストをAIボットはたった1.4秒で解き、しかも正答率は100%だったのだ。

 なお、ぐんにゃり歪んだ文字を使ったCAPTCHAでは、人間はさらに成績が下がり、クリア時間は9~15.3秒で、正答率は50~84%だった。

 たしかにあのぐんにゃり歪み文字は私も苦手だ。

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CAPTCHAが有効なのはもう過去の話 こうした結果から、AIの人間であることを証明する力は、速さの点でも正しさの点でも、人間より優れていると言えそうだ。

 研究チームによれば、こうしたAIの性能を考えれば、現在使われているCAPTCHA認証はボットの不正アクセスを防ぐという目的を果たしていないとのこと。

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 「このような小さな画像テストなどで、人間とボットを簡単に区別することはもうできません」と、研究チームの一員であるアンドリュー・サールズ氏は語っている。

 この研究の査読前論文は現在『arXiv』(2023年7月22日投稿)で閲覧することができる。

References:An Empirical Study & Evaluation of Modern CAPTCHAs / Robots Are Better At Proving They're Humans Than Humans Are | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo

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