巨大昆虫「ジャイアント・ウェタ」が飼育繁殖を経てニュージーランドの自然へ再導入
 世界最大・最重量クラスの昆虫は今、絶滅の危機にある。だがニュージーランドの人々の尽力のおかげで少しずつ野生に戻りつつあるそうだ。


 その昆虫の名は「ジャイアント・ウェタ」。ニュージーランドの固有種で、その中でも最大の「ウェタ・プンガ(Deinacrida heteracantha)」は、恐竜よりも昔からこの地球で生きていた。

 ニュージーランドへの入植者が環境を大きく変えたために激減してしまったが、最近ではこの古い生き物を保全しようという試みがだんだんと実を結びつつあるようだ。

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Wētāpunga coming back from the brinkほぼ絶滅してしまった巨大バッタ「ウェタ・プンガ」 巨大なバッタ目の仲間「ジャイアント・ウェタ」は、11種が知られているニュージーランドの固有種だ。

 ジャイアントの名が示すように普通でも35gに成長する大きな昆虫だが、中で最大の「ウェタ・プンガ(Deinacrida heteracantha)」は体重は70グラム。なんとスズメよりも重たい。

 恐竜よりも古い時代から生きてきたが、人間が入植し、とりわけウェタを捕食する哺乳類が持ち込まれるなど、環境が大きく変わったことで激減。

 ニュージーランド北部ハウラキ湾にあるいくつかの小島を除いて、1840年までにほぼ絶滅してしまった。

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ウェタ・プンガ / image credit:oscarkokako via iNaturalist, CC BY-NC-ND 4.0, cropped and rotatedウェタ・プンガの飼育繁殖プロジェクト 現在、ニュージーランドの法律で保護されているウェタだが、地元のオークランド動物園では、わずかに残った自然のウェタの繁殖プログラムに2012年から取り組んでいる。

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Zoo Tales - A very special insect

 こうした試みは徐々に実を結びつつあり、たとえばつい先日はプロジェクト・アイランド・ソングという保護団体が、300匹のウェタ・プンガを野生にかえすことに成功した。

 「ウェタ・プンガを野生にかえしているのは、それが生態系の本当に重要な一部だからです。それなのに200年もの間、姿を消していました」と、同団体のリチャード・ロビンス氏はRadio Newzealand誌に語っている。


 プロジェクト・アイランド・ソングでは、過去にも別の7種を自然にかえすことに成功しているが、今回の試みはまだ生後4ヶ月の個体だったため、より気を使ったようだ。

 ウェタ・プンガがかえされた場所は、美しい自然と長い歴史で有名なベイ・オブ・アイランズ。ほかの動物に見つかりにくいよう、夜中にシダの葉の上に置かれたそうだ。

 オークランド動物園の職員ドン・マクファーレン氏は、「ウェタ・プンガが本土で最後に記録されたのは1838年のことです」と語る。

 ウェタ・プンガが放されたのは元々の生息地だったので、本当の意味で里帰りと言えるのだそう。ウェタは生態系に重要な役割を果たしている 「無脊椎動物は、自然保護の世界ではあまり注目されません。ですが、健全な生態系には欠かせない存在です。彼らがいなければ何も機能しないのですから」

 バッタは森にフンをすることで、土壌を豊かにするという大切な役割がある。その点、ウェタ・プンガは、体の大きさとの比率で言うと、地球上最大のフンをしてくれるのだそうだ。

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とてつもなく大きいウェタ・プンガのフン / image credit:shaun-lee
via iNaturalist, CC BY 4.0

References:Giant Grasshopper Species Older Than Dinosaurs Reintroduced in New Zealand - The Messenger / written by hiroching / edited by / parumo

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