お手柄!アラスカのクマカメラを見ていたネットユーザーが道に迷ったハイカーを発見し、無事救助される
 米アラスカ州のカトマイ国立公園には、ライブ配信用のウェブカメラがたくさん設置されており、野生のハイイログマが川にサケを狩りに来たり、冬眠にそなえてぶくぶくと太った様子や、他の野生動物の姿を見ることができる。

 あるネットユーザーが、同公園のライブ映像を見ていたところ、濃い霧の中からずぶ濡れの男性が現れたことに気が付いた。

 「カメラに向かって誰かが助けを求めている」とウェブカメラのコメント欄に書き込んだところ、それがきっかけとなり救助隊が出動。男性は無事救われたという。

ネットユーザーがライブ映像で道に迷ったハイカーを発見 アラスカ、カトマイ国立公園のダンプリング山に、ライブカメラが設置されたのは2013年のこと。ここにはハイイログマ(アラスカヒグマ、グリスリーとも)がやってくるため、通称クマカメラとも呼ばれている。

 9月5日、このカメラが道に迷ったハイカーの姿をとらえた。たまたま、このライブカメラを見ていたSNSユーザーのおかげで、救出チームが派遣され、ハイカーは無事助けられたという。

 マイク・フィッツ氏は、カトマイ国立公園でおよそ9年間レンジャーを務めた経験があり、自然ライブカメラネットワークとドキュメンタリーチャンネル「Explore.org」の専属ナチュラリストでもある。

 道に迷ったハイカーの救出に役立ったカメラは、標高670メートル付近に設置されていたものだ。

 ウェブカメラの視聴者は、家にいながらにして山や湖のリアルな姿を眺めたり、クマなどの野生動物が通り過ぎたりするのを見ることができる。今回たまたま、そこにハイカーが映り込んだのだ。

 時刻は、アラスカ時間の午後4時頃のことだったという。 悪天候で濃い霧の中、ライブ映像を見続けていたユーザー この日は悪天候で、視界が悪くて風も強く、激しい雨が降り、霧もかなり濃かったという。

 「驚いたことに、それでも視聴者はカメラを見続けていました」フィッツ氏は語る。「遠くの景色はなにも見えないし、動物が横切る可能性もなさそうでした」

 だがそんな中、カメラに向かって、親指を下げる仕草をしたハイカーを、視聴者が見つけた。その男性はいったんそこを離れたが、また戻ってきて助けを求めたという。

 その日のウェブカメラのコメント欄には、視聴者が男性ハイカーを見つけた瞬間がつづられていた。

 ネットユーザーは、「午後3時半から3時43分の間、かなり苦しんでいる様子の人がカメラに映っていた。助けを求めているようだ」と書いている。

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カトマイ国立公園のダンプリング山に設置されているライブカメラユーザーのコメントで事態を把握、すぐに救助隊に要請 ついにウェブカメラとチャットモデレーターが応答し、警告してくれた視聴者に感謝した。

 そこからは、モデレーターが公園レンジャーに連絡し、その知らせがフィッツ氏のところにも届いた。Explore.orgのメンバーのひとりが、メイン州の自宅にいたフィッツ氏に状況を報告した。

 フィッツ氏は、映像を見て、カメラのオペレーターと協力して、ハイカーの位置を特定できるかどうかを確認した。

「最初に彼を見つけてから、レンジャーが現場に到着するまでの3時間、ずっと映像を見ていることはできませんでした」フィッツ氏は語った。

「彼は時々、カメラの前に現れ、その場に留まっているように見えました」

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ハイカーを無事救助 現場にかけつけたふたりのレンジャーが、このハイカーをキャンプ場まで誘導することができた。

 あの状況なら、道に迷うのも無理はないとフィッツ氏は理解を示す。
ブルックス川から直線距離でわずか2マイルしか離れていなくて、公園のビジターセンターがたまたまキャンプ場にあったとしても、あの状況では、まるで別世界のようだったことでしょう。

山の上では天候がめまぐるしく変わり、ひどく荒れることはよくあります。そうなると、方角を把握するのは至難の技なのです
 フィッツ氏は言う。

 ハイカーがいた場所は、携帯電話の電波がつながらないところだったという。

 およそ400万エーカーの広さをもつカトマイは、国内最大の国立公園のひとつで、イエローストーンとヨセミテ国立公園を合わせたよりも広い。
このエリアにいる場合、間違いなく携帯電話はつながりません。外界と通信する唯一の選択肢は、衛星回線のようなものを利用するしかないのです


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ライブカメラを介して人命救助が行われたのは初めて ウェブカメラを運営しているExplore.orgは、少なくとも180台のカメラを山に設置している。フィッツ氏によると、これらのカメラを介して人命救助が行われたのは初めてだという。
ウェブカメラの視聴者たちが、クマやその他の野生動物の興味深い行動を知らせてくれますが、ヒトが困っているこんな状況は、これまで一度も経験したことがありません。

野生動物の驚くべき生態は見たことがありましたが、知る限り人間に関しては皆無です
 ハイカーが無事救出されると、コメントには祝福のメッセージがあふれた。

 ある視聴者はこうコメントした。
このコミュニティに、優れた読唇術の能力をもつ人たちがたくさんいたことが嬉しい。

私が聞き取れたのは、"助けて"と"迷った"だけだったけど、ほかの人たちはもっと多くの情報を聞き取っていたのね。

このハイカーは、カメラのマイクが音声を拾ってくれると考えたのでしょうけど、それはダメだったようで、彼がカメラに顔を近づけて話すようにしたことが良かったと思う。

びしょ濡れで、寒そうで、とてもかわいそうでした
 フィッツ氏は、ウェブカメラでハイカーを発見したネットユーザー、Explore.orgのメンバー、そして公園のレンジャーなど、救助を可能にしてくれた人たちに感謝している。
ウェブカメラの視聴者は世界中にいて、いつも注意を払ってくれています。

おかげで、カトマイ国立公園のウェブカメラが焦点を当てているアメリカクマやサケについて、さらに詳しく知ることができるのです


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山に入るときは細心の注意を払うよう公園局が忠告 山に入るときは常に準備を怠らないように、と国立公園局は言う。

 国立公園局広報担当のシンシア・ヘルナンデス氏は、国立公園を訪れる人は、準備をしっかり整えることが極めて重要だと述べた。

 地図、コンパス、日焼け止め、帽子、その他の保護アイテムは必需品だという。

References:Live bear cam viewers spot lost Alaskan hiker, help rescue him / Explore.org / written by konohazuku / edited by / parumo

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