
アマゾンの奥地には、「ダークアース」と呼ばれる謎めいた暗黒の土が点在している。最新の調査によれば、それはアマゾンの先住民が大昔から営んできた暮らしの痕跡であるそうだ。
研究者らはブラジル、アマゾンの先住民の協力のもと調査を実施した。その結果、不毛なアマゾンで作物を育てるために、彼らの祖先が大昔から肥やしをまいて、土を黒く豊かにしてきたことが明らかとなったのだ。
そうした土には炭素がたっぷりと閉じ込められており、温暖化に取り組む現代社会にとっても大切な知恵が隠されているかもしれないという。
アマゾンの奥地に点在するダークアース、暗黒の土 緑豊かなアマゾンの熱帯雨林だが、その土は意外なほど不毛だ。その一方で、そこかしこに「テラ・プレタ」と呼ばれる真っ黒な土が点在している。
一般的にこうした黒い土は、人間がそこで暮らしていた痕跡とされているが、それが自然にできたものなのか、それとも住民が意図的に作ったものなのか定かではない。
そこで今回、2000年代初頭からアマゾンの先住民と協力してきた米マサチューセッツ工科大学やフロリダ大学の研究チームは、クイクロ族と一緒に謎めいた暗黒の土の正体を探っている。
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A) 今回調査されたクイクロ族の村。右上の図は村(赤い星)とテラ・プレタ(黒点)の位置を示す。B) 現在クイクロ族が暮らす村。白丸はかつての村の跡。 C) セタ遺跡。
その証拠に、彼らが今暮らしている「クイクロII村」の近くには大昔の村の遺跡も残っており、考古学的な調査によってそれらに文化的なつながりがあることが確認されている。
今、クイクロII村の人口は数百人ほど。部族の仲間を養うために、彼らはキャッサバなどを栽培して生活している。
面白いのは、村の周辺よりも人が暮らしている内側の方が土が肥沃であることだ。
これはやせたアマゾンで生きるクイクロ族の工夫だ。村のいたるところに、排泄物や生ゴミなどが山盛りになっている。
これらが十分熟成したら、やせた土に混ぜ合わせて畑にする。こうしてできるのが黒い土だったのだ。
「地面に灰をまいたり、木の根元に炭をまいたりと、意図的にやっています」(フロリダ大学 モーガン・シュミット氏)
またクイクロ族への聞き取り調査でも、彼らが村の習慣的によって意図的に黒い土を作っていることが裏付けられている。
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テラ・プレタを作り出す営み:A) キャッサバの加工 B) 肥だめ C) 作物栽培 D) 囲炉裏の灰と炭 E) 各写真が撮影された位置 F) キャッサバの残りを散布 G) 木の周りへの灰と炭の散布 H) 畑やゴミ捨て場の焼却 I) ゴミや生ごみの焼却 / image credit:Schmidt et al., Science Advances, 2023
さらに現代の村と遺跡の土を比べてみたところ、こうした特徴はどちらにも当てはまることが明らかになっている。
今も昔も人が暮らす村の内側の土は、周辺の土に比べて有機炭素が豊富で、酸性度も低いのだ。
とりわけリン・カリウム・カルシウムといった元素は、村の内側の方が10倍以上も豊富だった。
「これらはどれも人間などの動物や植物に含まれるもので、アマゾンで悪名高い土壌のアルミニウムの毒性を緩和してくれます」(シュミット氏)
つまりこうした習慣が今だけの話ではなく、昔からずっと意図的に続けられてきたということだ。
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肥沃な土壌の位置を示す古代の村の概念モデル / image credit:Schmidt et al.、Science Advances、2023古代の人々の知恵が気候変動対策のヒントに ちなみに村の遺跡の一つ「セク」には、4500トンの土壌炭素が蓄えられていると推定されている。一方、現代のクイクロII村の”肥だめ”の炭素は110トンだった。
「大昔アマゾンで暮らしていた人々は土にたっぷりと炭素を蓄え、その多くが現在も残っています。それこそが、温暖化を和らげるために私たちが望んでいることです」(マサチューセッツ工科大学 サミュエル・ゴールドバーグ氏)
アマゾン先住民の知恵を世界で広く実践することができたら、地球を熱くする炭素を土の中に閉じ込めておくこともできるかもしれないそうだ。
この研究は『Science Advances』(2023年9月20日付)に掲載された。
References:Recipe For "Dark Earth" Finally Uncovered in The Amazon's Depths : ScienceAlert / Dark Earth Deciphered: Ancient Amazonians Intentionally Created Fertile “Dark Earth” / written by hiroching / edited by / parumo
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研究者らはブラジル、アマゾンの先住民の協力のもと調査を実施した。その結果、不毛なアマゾンで作物を育てるために、彼らの祖先が大昔から肥やしをまいて、土を黒く豊かにしてきたことが明らかとなったのだ。
そうした土には炭素がたっぷりと閉じ込められており、温暖化に取り組む現代社会にとっても大切な知恵が隠されているかもしれないという。
アマゾンの奥地に点在するダークアース、暗黒の土 緑豊かなアマゾンの熱帯雨林だが、その土は意外なほど不毛だ。その一方で、そこかしこに「テラ・プレタ」と呼ばれる真っ黒な土が点在している。
一般的にこうした黒い土は、人間がそこで暮らしていた痕跡とされているが、それが自然にできたものなのか、それとも住民が意図的に作ったものなのか定かではない。
そこで今回、2000年代初頭からアマゾンの先住民と協力してきた米マサチューセッツ工科大学やフロリダ大学の研究チームは、クイクロ族と一緒に謎めいた暗黒の土の正体を探っている。
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A) 今回調査されたクイクロ族の村。右上の図は村(赤い星)とテラ・プレタ(黒点)の位置を示す。B) 現在クイクロ族が暮らす村。白丸はかつての村の跡。 C) セタ遺跡。
赤点は土のサンプルが採取された地点/ image credit:Schmidt et al., Science Advances, 2023 アマゾンの先住民、クイクロ族が作り上げた肥沃な土だった ブラジルの先住民の1つ「クイクロ族」は、アマゾン川の主な支流であるシングー川の源流で長い間ずっと生きてきた部族だ。
その証拠に、彼らが今暮らしている「クイクロII村」の近くには大昔の村の遺跡も残っており、考古学的な調査によってそれらに文化的なつながりがあることが確認されている。
今、クイクロII村の人口は数百人ほど。部族の仲間を養うために、彼らはキャッサバなどを栽培して生活している。
面白いのは、村の周辺よりも人が暮らしている内側の方が土が肥沃であることだ。
これはやせたアマゾンで生きるクイクロ族の工夫だ。村のいたるところに、排泄物や生ゴミなどが山盛りになっている。
これらが十分熟成したら、やせた土に混ぜ合わせて畑にする。こうしてできるのが黒い土だったのだ。
「地面に灰をまいたり、木の根元に炭をまいたりと、意図的にやっています」(フロリダ大学 モーガン・シュミット氏)
またクイクロ族への聞き取り調査でも、彼らが村の習慣的によって意図的に黒い土を作っていることが裏付けられている。
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テラ・プレタを作り出す営み:A) キャッサバの加工 B) 肥だめ C) 作物栽培 D) 囲炉裏の灰と炭 E) 各写真が撮影された位置 F) キャッサバの残りを散布 G) 木の周りへの灰と炭の散布 H) 畑やゴミ捨て場の焼却 I) ゴミや生ごみの焼却 / image credit:Schmidt et al., Science Advances, 2023
さらに現代の村と遺跡の土を比べてみたところ、こうした特徴はどちらにも当てはまることが明らかになっている。
今も昔も人が暮らす村の内側の土は、周辺の土に比べて有機炭素が豊富で、酸性度も低いのだ。
とりわけリン・カリウム・カルシウムといった元素は、村の内側の方が10倍以上も豊富だった。
「これらはどれも人間などの動物や植物に含まれるもので、アマゾンで悪名高い土壌のアルミニウムの毒性を緩和してくれます」(シュミット氏)
つまりこうした習慣が今だけの話ではなく、昔からずっと意図的に続けられてきたということだ。
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肥沃な土壌の位置を示す古代の村の概念モデル / image credit:Schmidt et al.、Science Advances、2023古代の人々の知恵が気候変動対策のヒントに ちなみに村の遺跡の一つ「セク」には、4500トンの土壌炭素が蓄えられていると推定されている。一方、現代のクイクロII村の”肥だめ”の炭素は110トンだった。
「大昔アマゾンで暮らしていた人々は土にたっぷりと炭素を蓄え、その多くが現在も残っています。それこそが、温暖化を和らげるために私たちが望んでいることです」(マサチューセッツ工科大学 サミュエル・ゴールドバーグ氏)
アマゾン先住民の知恵を世界で広く実践することができたら、地球を熱くする炭素を土の中に閉じ込めておくこともできるかもしれないそうだ。
この研究は『Science Advances』(2023年9月20日付)に掲載された。
References:Recipe For "Dark Earth" Finally Uncovered in The Amazon's Depths : ScienceAlert / Dark Earth Deciphered: Ancient Amazonians Intentionally Created Fertile “Dark Earth” / written by hiroching / edited by / parumo
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