ウクライナではクリスマスツリーにクモの巣を飾る。その由来となった心温まる「クリスマスのスパイダー」伝説
 家の中にクモ(蜘蛛)の巣を発見すれば、たいていの家庭では取り除くだろう。だが、ほとんどのクモは家の害虫を捕食してくれる益虫だ。


 ウクライナではクモは幸運の象徴と言われており、ホリデーシーズンになると、クモの巣を取り除かないという習慣があるそうだ。また、クリスマスツリーにクモの巣のオーナメントを飾る習慣もある。

 クモは新年に幸運をもたらすと考えられているのだそうで、その由来は「クリスマスのスパイダー」という心温まる伝説に由来する。

ウクライナに伝わる心温まる伝説「クリスマスのスパイダー」 東欧、特にウクライナではクリスマスツリーにクモ(蜘蛛)やクモの巣のオーナメントを飾る習慣が根付いている。

 クモの巣の色は金や銀などさまざまで、宝石をちりばめたものもあれば、地味なものもある。

 これらの芸術的なクモの巣の装飾は、ハロウィーンの飾りを再利用したものではなく、19世紀後半から20世紀初頭にかけて始まったクリスマスのクモにまつわる伝統の物語に由来したものだ。

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image credit:Wikipedia.org

 いくつかバージョンがあるのだが物語の概要はこんな感じだ。
昔々、貧しいながらも働き者の未亡人と子供たちが狭い小屋に住んでいた。

未亡人は、クモやクモの巣に危害を与えないように常に気をくばるほど心優しい女性だったという。

ある日、小屋の近くで松ぼっくりが落ちて根付いた。子どもたちはクリスマスにツリーができることに胸を躍らせ、一生懸命苗木の世話をした。

クリスマスが近づき、木も成長したが、貧しい一家にはその木に飾りつけをするオーナメントを買う余裕がなかった。


子供たちは、何の装飾もできなかったツリーを悲しそうに眺め、泣きながらクリスマスイブの夜を過ごした。

すると小屋にいたクモが子供たちの悲しむ声を聞き、一晩中クリスマスツリーにクモの巣を張り続けた。

クリスマスを迎えた翌日、目を覚ました子供たちは驚いて大きな声をあげた。

「すごい!すごいよ、お母さん!なんてきれいなんだ!!」

クモの巣は太陽の光を浴びてキラキラと輝き、さらに奇跡が起きた。太陽の光がクモの糸に触れると、本物の金や銀に変わったのだ。

瞬く間にクモの巣が財宝となったことで、未亡人とその子供たちは2度と貧しさで苦労することはなくなったという。


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今日まで語り継がれたクモの巣の贈り物の伝説 貧しい一家に起こった心温まる奇跡の物語は、やがて伝承となり語り継がれ、、東ヨーロッパ中に知られるようになった。

 ウクライナや東ヨーロッパの他の地域で、クリスマスツリーにクモの巣をかける習慣は今日まで続いている。[画像を見る]  特にウクライナの人々は、クリスマスの時期に家の中にいるクモを幸運の象徴と考えており、幸運を願ってクモやクモの巣の形をした飾り物をクリスマスツリーに飾るという。

 もしクリスマスの時期に家の中でクモを見つけたら、ウクライナのクモの物語を少し思い出してみてほしい。あるいは日本の場合、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の方を思い出してもいいかもしれない。

References:The Ukrainian Tradition of Spider Webs and Christmas/ written by Scarlet / edited by parumo

追記(2023/12/09)誤字を訂正して再送します。


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