古代ローマ帝国23代皇帝、ヘリオガバルス(204年- 222年)は14歳で凱旋即位したときに、女王のような衣装を着て現れたことでローマ人を戦慄させたという逸話が残されている。
ヘリオガバルスがトランスジェンダーだったかどうかの議論は、学者の間でも意見が分かれているが、イギリスにあるノース・ハートフォードシア博物館は、今後この皇帝の展示の表示を”彼(He)”ではなく”彼女(She)”あるいは”彼女の(Her)”に変更する予定だ。
これはかつて、ヘリオガバルス皇帝自身が「私を殿下と呼ばないで欲しい。私は淑女なのだから」と言ったと古典文書に記されていることを受けてのことだという。
ローマ皇帝ヘリオガバルスをトランスジェンダーに認定した博物館
博物館の広報はこう語る。
「過去の人物の代名詞をきちんと特定するのに配慮するのは、その人物に礼儀正しく敬意を払いたいという希望からです。ただそれだけのことです」
この博物館には、ヘリオガバルスを描いたデナリウス銀貨が1枚所蔵されていて、ここのLGBTQ+アイテムと一緒に展示されることがよくある。
LGBTQ+慈善団体「ストーンウォール」と相談し、「展示、広報、講演が、できるだけ最新かつ包括的なものになるよう」に配慮したという。
女装や 性的倒錯でローマ人を驚かせたヘリオガバルス
ヘリオガバルス、あるいはエラガバルスとして知られている、マルクス・アウレリウス・アントニヌスは、14歳で即位した西暦218年から、18歳で暗殺される西暦222年までの4年間、ローマ帝国を統治した。
彼は、このわずかな治世の間に、性的錯乱や女装などの悪評で、かなりの物議を醸した人物だった。
ヘリオガバルスと同時代の元老院議員カッシウス・ディオは、この皇帝は5回結婚し、そのうち4回は女性との結婚だったが、1回は元奴隷で戦車御者の男性ヒエロクレスだったと、歴史書に記している。
この最後の結婚で、皇帝は、「妻、愛人、女王と呼ばれた」ともディオは書いている。
ヘリオガバルスはトランスジェンダーなのか?
ヘリオガバルスのジェンダー自認をめぐる議論は長年続いていて、学者の間でも意見が分かれることが多い。
ケンブリッジ大学古典学教授のシュシュマ・マリク氏は語る。
ヘリオガバルスの生涯を理解しようとする際に、私たちが参考にする歴史家たちは、彼に対して非常に敵対的なので、彼らが言っていることを額面通りに受け取ることはできません。ヘリオガバルス自身が自分の言葉で語ったという直接の証拠はないのです
ローマの文献には、政治的な人物を貶め、批判するやり方として、”女のような”、”女々しい”といった単語や言葉使いが使われる例が数多くあります
ヘリオガバルスが化粧をしていた、かつらをかぶっていた、体毛を剃っていたといった記述は、評判の悪い皇帝を貶めるために書かれた可能性があります
マリク博士は、さらにつけ加える。
古代ローマ人は、ジェンダーの流動性をわかっていて、文学の中で代名詞が変更された例もありますが、それは実際に存命の人物のことを表すというより、神話や宗教に関連して使われるのが普通でした
しかし、ノースハーツ評議会エンタープライズ&アーツの幹部メンバーで議員のキース・ホスキンス氏は、ディオの記述は、ヘリオガバルスが明らかに、”彼女”という代名詞を好んだ証拠を示していているという。
このことは、現代において私たちが”彼女”のことを議論するときに反映されるもので、ほかの場所でも標準的な行為だと考えていると述べた。
私たちは、ヘリオガバルスが自分が女性であることがわかっていて、どの代名詞を使うかをはっきりさせていたことは、代名詞が新しいものではないことを示していると考えています
References:UK museum reclassifies Roman emperor as transgender[https://www.theartnewspaper.com/2023/11/21/uk-museum-reclassifies-roman-emperor-as-transgender] / Museum reclassifies Roman emperor as trans woman – BBC News[https://www.bbc.com/news/entertainment-arts-67484645] / A U.K. Museum Claims Roman Emperor Elagabalus Was Transgender[https://web.archive.org/web/20231209163123/https://news.artnet.com/news/north-hertfordshire-museum-claims-roman-emperor-elagabalus-was-trans-2397850] / written by konohazuku / edited by / parumo











