完璧にシンクロして恒星を公転する6つの太陽系外惑星を発見
 太陽系からそれほど遠くない宇宙に、美しく完璧なシンクロで恒星をめぐる惑星系がある。

 かみのけ座の方向、およそ100光年先にある太陽より少し小さな恒星「HD 110067」は、6つの太陽系外惑星で織りなされる惑星系を構成している。


 このほど、東京大学大学院総合文化研究科の成田憲保教授や福井暁彦特任助教も参加した国際的な研究チームによって、この惑星すべてが共鳴しながらを公転していることが明らかにされた。

 6つの惑星による「軌道共鳴」は、この惑星系が10億年以上前に形成されて以来、ほとんど乱されなかったことを意味する。

 それはいわば、”宇宙の化石”のようなもので、大昔からほとんど変わらない惑星系の原始的な配置を見ることができるそうだ。

 

軌道共鳴。惑星がシンクロする現象 「軌道共鳴」とは、1つの天体を公転する複数の天体が、お互いに重力で影響しあうことで、まるで音楽のリズムのようにピタッとシンクロ(同期)した公転周期を持つようになることだ。

 ある恒星を公転する2つの惑星が、お互いの重力の影響で、片方が1周する間に、もう片方は2周するようなパターンに固定されたとする。


 このようなシンプルな整数比を持つ公転周期が、軌道共鳴の結果である。

 実際の軌道共鳴は、今述べたような1:2の関係とは限らない。例えば、冥王星と海王星は、冥王星が太陽を2周してる間に、海王星は3周する。つまり公転周期の比率は2:3だ。

 さらに木星の衛星でも軌道共鳴が見られる。ガニメデが木星を1周する間に、エウロパは2周、イオは4周する。
つまり1:2:4の比率だ。このような3個以上の天体の公転周期が、シンプルな整数比になることを「ラプラス共鳴」という。

 だが今回のように6つの天体が共鳴するケースは、本当に珍しい。

[画像を見る]

6惑星1年間の軌道運動。6惑星すべての軌道が正確に共鳴しているため、各惑星の軌道は密接に関連している。 / image credit:Dr. Hugh Osborn (University of Bern)6つの惑星の珍しい軌道共鳴 そんなとびきり連携プレーに優れた天体チームは、「かみのけ座」の方角に100光年ほど離れた橙色矮星「HD 110067」で見つかった。


 この星に惑星があることは2020年に判明していた。NASAの宇宙望遠鏡「TESS衛星」がそこを観測した時、2つの惑星が存在するらしいサインが見つかったのだ。

 片方の惑星の公転周期5.642日。だがもう片方の公転周期はよくわからなかった。

 それから2年後、TESS衛星は再度この星の観測を行ったが、やはり惑星の公転周期ははっきりしなかった。

 そこでシカゴ大学のラファエル・ルケ氏をはじめとする国際的チームは、欧州宇宙機関ESAの宇宙望遠鏡「ケオプス」で、この星をさらに詳しく調べてみることにした。


 すると惑星は2つではなく、3つあるだろうことが明らかになったのだ。しかも、それらは共鳴し合っていた。

 「ケオプスがこの共鳴構成を教えてくれたおかげで、ほかの周期をすべて予測することができました。ケオプスの発見がなければ、不可能だったでしょう」(ルケ氏)

 そして最終的に、HD 110067には全部で6つの太陽系外惑星があることが突き止められた。

 それらの大きさは、地球の半径の1.94~2.85倍で、「ミニ・ネプチューン」という惑星タイプ(関連記事)に区分される。

 肝心の公転周期は、内側から順に9.11日、13.67日、20.52日、30.79日、41.06日、54.77日。


 つまり、それぞれのペアは「3:2」「3:2」「3:2」「4:3」「4:3」で共鳴しているということだ。このHD 110067では、一番内側にある惑星が6周する間に、一番外側にある惑星が1周する。

 このように6個の惑星が軌道共鳴しているケースは非常に珍しく、今回のものを含めて3つしか知られていない。

[画像を見る]

原始の配列を残した”宇宙の化石” HD 110067が誕生したのは10億年以上前のことだと考えられている。

 それを公転する惑星がこれほど綺麗にシンクロしているということは、これまでの歴史の中で大事故(惑星軌道の移動、大規模な衝突、恒星の通過など)に遭遇せずに済んだということだ。

 その公転周期は見事に調和しているが、これを乱すのは簡単だ。
その証拠に、共鳴に近い周期のものならいくつも見つかっているが、本当に軌道共鳴しているものはほとんどない。

 だからこそ、HD 110067星系は美しい銀河でもひときわ輝く宝石で、この魅惑的な現象の理解深める素晴らしい研究チャンスなのだ。

[動画を見る]

 『Nature』(2023年11月29日付)に掲載された研究では、次のように述べられている。
HD 110067で現在見られるデリケートな惑星軌道の配置は、この惑星系10億年の歴史において、いかなる暴力的な出来事もなかったことを示している。

それゆえに、原始的な環境における移動メカニズムや原始惑星系円盤の特性を研究する貴重な”化石“となっている
 母星の明るさは観察にちょうどよく、さらにほとんどの惑星に大気があると推測されることから、HD 110067のミニ・ネプチューンはジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の格好の観測ターゲットであるとのこと。

 これを調べることで、ミニ・ネプチューンの性質や、軌道共鳴の連鎖がどこで・どのように・どのような条件下で形成・維持されるのか理解を深める貴重なヒントを得られるかもしれないそうだ。

References:A resonant sextuplet of sub-Neptunes transiting the bright star HD 110067 | Nature / Scientists Discover Six Alien Worlds Perfectly Synchronized : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo

画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。