
惑星すら破壊するスターウォーズに登場するデス・スターの強力なレーザー砲を開発する秘訣が見つかったかもしれない。
アメリカとオーストラリアの研究チームは、レーザーのパワーを従来の9倍にアップさせる技術を開発した。
これを利用すれば、群がるドローンを撃墜し、さらには遠方にある大型兵器すら無力化できる可能性があるという。
米イェール大学やオーストラリア・アデレード大学のチームによるこの研究は、アメリカ空軍から資金援助を受けて進められている。
念頭にあるのはまず軍事利用とみられるが、得られた技術は気象や天文学といった平和な分野にも有用な効果をもたらすと期待されている。
現在のレーザー砲の欠点はビームが散乱してしまうこと スター・ウォーズをはじめSF映画の中では、レーザー砲がデフォルトのような感じになっている。
そんなレーザー砲は現実の世界にも存在する。ただし、現実の技術はSF映画には遠く及ばず、せいぜい空中を飛ぶ小さなターゲットを無力化する程度の威力だ。
そうした兵器は、単一の光の波長を光ファイバーでビームにしたもので、それ故に「単一モード」という。だがこの場合、光が狭い範囲に制限されるため、なかなか出力を上げることが難しい。
そこで複数の光を利用し、マルチモード化する方法が考えられる。これによる幅広のレーザーなら、パワーを3~9倍にアップすることができる。
ただし、これも完全ではない。射出されたビームが散乱して、移動するほどにどんどんパワーが失われてしまうのだ。
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photo by iStock
高出力レーザーを遠方に飛ばす技術を開発 『Nature Communications』(2023年11月13日付)に掲載された今回の研究では、マルチモード・ファイバーから射出されたレーザーの散乱を抑える方法が説明されている。
その技術なら理論上、ターゲットに大きなダメージを与えられるほど高出力でありながら、滑らかで細いビームを遠くまで飛ばせるようになる。
南オーストラリア大学のスティーブン・ウォーレン・スミスとリン・グエンは、次のように説明する。
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刺激ブリルアン散乱(SBS)抑制と出力集束の模式図 / image credit:Nature Communications対ドローン兵器のほか平和利用にも 軍事の分野では以前から強力なレーザーの開発が進められている。例えば、ロッキード・マーティンは今年、500キロワット級レーザーを採用した指向性エネルギー兵器システム計画を発表した。
一方、今回の研究チームは、今のところデス・スター的な破壊兵器を開発しようとは考えていないようだ。
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それでも、その高出力レーザーは、ドローンを破壊したり、使い方によっては大型兵器をも無力化できるという。
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image credit: University of South Australia
それがドローンに効果的とされるのは、コスト的に安上がりだからだ。
安価に開発されるドローンの大群をいちいち弾丸で撃墜するのでは、非常にコストがかかる。だが、レーザー砲なら必要なのは電気だけなので、弾数など気にしなくていい”弾倉”を持つようなものと、研究チームは述べる。
また高出力レーザーは、兵器としてだけでなく、平和利用もできる。
例えば、リモートセンシングとして使えば、従来の技術よりもずっと遠くの場所の風速を測定できる。さらに重力波の検出など、天文学の分野でも一役買ってくれると期待されるとのことだ。
References:Mitigating stimulated Brillouin scattering in multimode fibers with focused output
via wavefront shaping | Nature Communications / High-power fibre lasers emerge as a pioneering technology - News and events - University of South Australia / Scientists uncover the secret to building Star Wars-style laser weapons — but don't worry, we won't have a Death Star anytime soon | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo
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アメリカとオーストラリアの研究チームは、レーザーのパワーを従来の9倍にアップさせる技術を開発した。
これを利用すれば、群がるドローンを撃墜し、さらには遠方にある大型兵器すら無力化できる可能性があるという。
米イェール大学やオーストラリア・アデレード大学のチームによるこの研究は、アメリカ空軍から資金援助を受けて進められている。
念頭にあるのはまず軍事利用とみられるが、得られた技術は気象や天文学といった平和な分野にも有用な効果をもたらすと期待されている。
現在のレーザー砲の欠点はビームが散乱してしまうこと スター・ウォーズをはじめSF映画の中では、レーザー砲がデフォルトのような感じになっている。
そんなレーザー砲は現実の世界にも存在する。ただし、現実の技術はSF映画には遠く及ばず、せいぜい空中を飛ぶ小さなターゲットを無力化する程度の威力だ。
そうした兵器は、単一の光の波長を光ファイバーでビームにしたもので、それ故に「単一モード」という。だがこの場合、光が狭い範囲に制限されるため、なかなか出力を上げることが難しい。
そこで複数の光を利用し、マルチモード化する方法が考えられる。これによる幅広のレーザーなら、パワーを3~9倍にアップすることができる。
ただし、これも完全ではない。射出されたビームが散乱して、移動するほどにどんどんパワーが失われてしまうのだ。
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photo by iStock
高出力レーザーを遠方に飛ばす技術を開発 『Nature Communications』(2023年11月13日付)に掲載された今回の研究では、マルチモード・ファイバーから射出されたレーザーの散乱を抑える方法が説明されている。
その技術なら理論上、ターゲットに大きなダメージを与えられるほど高出力でありながら、滑らかで細いビームを遠くまで飛ばせるようになる。
南オーストラリア大学のスティーブン・ウォーレン・スミスとリン・グエンは、次のように説明する。
質の悪いレーザービームは、伝搬するにつれてあっという間に散逸するため、ターゲットにエネルギーを集中させることができません。
私たちは、ファイバー内の光を制御して、一点に集光させ、細い高品質のビームに変える方法を考案しました
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刺激ブリルアン散乱(SBS)抑制と出力集束の模式図 / image credit:Nature Communications対ドローン兵器のほか平和利用にも 軍事の分野では以前から強力なレーザーの開発が進められている。例えば、ロッキード・マーティンは今年、500キロワット級レーザーを採用した指向性エネルギー兵器システム計画を発表した。
一方、今回の研究チームは、今のところデス・スター的な破壊兵器を開発しようとは考えていないようだ。
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それでも、その高出力レーザーは、ドローンを破壊したり、使い方によっては大型兵器をも無力化できるという。
遠くのターゲットにレーザービームを数秒ほど集中すれば、溶かしたり燃やしたりできるでしょう。
1番効果を発揮するのは、ドローンや迫撃砲のような小さなターゲットですが、センサーや電子機器のような重要なパーツを狙えば、もっと大きなターゲットにも効くでしょう
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image credit: University of South Australia
それがドローンに効果的とされるのは、コスト的に安上がりだからだ。
安価に開発されるドローンの大群をいちいち弾丸で撃墜するのでは、非常にコストがかかる。だが、レーザー砲なら必要なのは電気だけなので、弾数など気にしなくていい”弾倉”を持つようなものと、研究チームは述べる。
また高出力レーザーは、兵器としてだけでなく、平和利用もできる。
例えば、リモートセンシングとして使えば、従来の技術よりもずっと遠くの場所の風速を測定できる。さらに重力波の検出など、天文学の分野でも一役買ってくれると期待されるとのことだ。
References:Mitigating stimulated Brillouin scattering in multimode fibers with focused output
via wavefront shaping | Nature Communications / High-power fibre lasers emerge as a pioneering technology - News and events - University of South Australia / Scientists uncover the secret to building Star Wars-style laser weapons — but don't worry, we won't have a Death Star anytime soon | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo
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