
土星最大の衛星「タイタン」にはメタンの湖が存在するが、そこには時折「魔法の島」が出現する。
新たな研究によれば、それは「凍りついた多孔質(ハチの巣のように表面にたくさんの空洞がある状態)の有機固体」が浮かんだものである可能性が高いそうだ。
タイタンのたっぷりとした大気には、さまざまな有機物が含まれている。それが集まって凍りついた塊がメタンやエタン湖に落下しても、普通なら沈んでしまう。
ところが、『Geophysical Research Letters』(2024年1月4日付)に掲載された研究によれば、ある一定の条件を満たしたとき、軽石のようにしばらくの間浮かんでいることができる。それが魔法の島の正体だと考えられるという。
それは同時に、タイタンの湖や川が異常になめらかである理由も説明しているかもしれない。
土星最大の衛星タイタンに出現する魔法の島とは? 土星最大の衛星「タイタン」は、地球以外の太陽系では唯一、たっぷりとした大気があり、地表に常に液体が存在することがわかっている天体だ。それゆえに生命の発見も期待されている。
ただし液体といっても水ではなく、メタンやエタンなのだが、その地表には湖や川がある。
魔法の島(マジック・アイランド)とは、2013年にカッシーニ探査機によってはじめて観察されたメタン湖の島らしきものだ。
カッシーニのレーダー画像には、北極にある「リゲイア海」のそれまで何もなかったところに、なにやら島らしきものが写っていたのだ。
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カッシーニ探査機によって、タイタン北極のリゲイア海に出現した「魔法の島」が観測された / image credit:NASA/JPL-Caltech/ASI/USGS; left and right, NASA/ESA, T. Cornet, ESA
それ以来、科学者たちはその正体を突き止めようとしてきた。
そしてこれまでの研究からは、波がただ島のように見えるだけの幻説や、浮遊する固体や窒素ガスの気泡説などが提唱されている。
米テキサス大学サンアントニオ校のユー・シンティン氏らが注目したのは、タイタンの大気・湖・地表に堆積した固体物質だ。
それらの関係に、魔法の島の正体を解き明かすヒントが隠されているのではと考えられた。有機物の氷塊はメタン湖で溶けなかった 彼女が疑ったのは、水面にしばらくだけなら浮かんでいられる軽石のように、魔法の島もまたメタンの湖につかの間だけ浮かんでいる有機物ではないかということだ。
地球より50%も分厚いタイタンの豊富な大気には、さまざまな有機分子が密集している。
それらは互いにくっついて集まっては、凍りついて地表に落下する。中には異常なほど滑らかな湖や川に落ちるものもあるだろう。
そうしたメタン湖に落ちた有機物はどうなるのか? すぐに沈んでしまうのか、それとも浮かぶのだろうか?
ユー氏らはそれ知るために、まずタイタンの有機物の氷塊がメタン湖で溶けるのかどうか検証してみた。
そして判明したのは、そこに落ちた氷塊はおそらく簡単には溶けないだろうということだ。なぜならメタン湖はすでに有機物がたっぷり含まれているからだ。
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衛星タイタンの風景を描いたアーティストのイメージ図。霞んだ大気、暗い砂丘、地球の湖や海に似た鏡のような湖や海が描かれている / image credit:NASA/JPL多孔質構造ならば湖に浮くことも可能 問題は、それが浮かぶのか?だ。しかも魔法の島が出現するには一瞬浮かぶ程度ではダメで、沈む前にしばらくは浮いてくれる必要がある。
タイタンの湖や川は主に液体のメタンとエタンだ。どちらも表面張力が弱いために、固体が浮きにくい。
それを裏付けるように、ユー氏らが考案したモデルは、ほとんどの固体がそこに浮かぶには、密度が高すぎることを示唆していた。
だがもしも、アニメのチーズのようにあなだらけの多孔質構造ならば、どうにかなるかもしれない。
有機物の氷塊が十分に大きく、あななどの割合もまた適切であれば、液体メタンはゆっくりとしか染み込まないので、しばらくは浮かんでくれるに違いない。
氷塊の1つ1つは小さすぎて、それだけでは浮かばない。だが、それが集まったものが岸のそばに落ちれば、ちょうど地球の氷河が崩落するように砕けて、湖を漂うかもしれない。
もしそうならば、それは魔法の島のように見えることだろう。
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赤外光で見たタイタンの海のひとつを照らす太陽光 / image credit: NASA / JPL-Caltech / University of Arizona / University of Idaho
この研究では、もう1つのタイタンの謎を解き明かしてくれるかもしれない。その湖や川は、波の高さがわずか数ミリしかない、異常に滑らかなものだ。
今回の研究によるならば、凍った固体が湖や川を層のようにおおうことで、異常なほどの滑らかさが生まれると考えられるそうだ。
References:Titan’s “magic islands” likely honeycombed hydrocarbon icebergs - AGU Newsroom / Titan's 'magic islands' are likely to be honeycombed hydrocarbon icebergs, finds study / written by hiroching / edited by / parumo
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新たな研究によれば、それは「凍りついた多孔質(ハチの巣のように表面にたくさんの空洞がある状態)の有機固体」が浮かんだものである可能性が高いそうだ。
タイタンのたっぷりとした大気には、さまざまな有機物が含まれている。それが集まって凍りついた塊がメタンやエタン湖に落下しても、普通なら沈んでしまう。
ところが、『Geophysical Research Letters』(2024年1月4日付)に掲載された研究によれば、ある一定の条件を満たしたとき、軽石のようにしばらくの間浮かんでいることができる。それが魔法の島の正体だと考えられるという。
それは同時に、タイタンの湖や川が異常になめらかである理由も説明しているかもしれない。
土星最大の衛星タイタンに出現する魔法の島とは? 土星最大の衛星「タイタン」は、地球以外の太陽系では唯一、たっぷりとした大気があり、地表に常に液体が存在することがわかっている天体だ。それゆえに生命の発見も期待されている。
ただし液体といっても水ではなく、メタンやエタンなのだが、その地表には湖や川がある。
魔法の島(マジック・アイランド)とは、2013年にカッシーニ探査機によってはじめて観察されたメタン湖の島らしきものだ。
カッシーニのレーダー画像には、北極にある「リゲイア海」のそれまで何もなかったところに、なにやら島らしきものが写っていたのだ。
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カッシーニ探査機によって、タイタン北極のリゲイア海に出現した「魔法の島」が観測された / image credit:NASA/JPL-Caltech/ASI/USGS; left and right, NASA/ESA, T. Cornet, ESA
それ以来、科学者たちはその正体を突き止めようとしてきた。
そしてこれまでの研究からは、波がただ島のように見えるだけの幻説や、浮遊する固体や窒素ガスの気泡説などが提唱されている。
米テキサス大学サンアントニオ校のユー・シンティン氏らが注目したのは、タイタンの大気・湖・地表に堆積した固体物質だ。
それらの関係に、魔法の島の正体を解き明かすヒントが隠されているのではと考えられた。有機物の氷塊はメタン湖で溶けなかった 彼女が疑ったのは、水面にしばらくだけなら浮かんでいられる軽石のように、魔法の島もまたメタンの湖につかの間だけ浮かんでいる有機物ではないかということだ。
地球より50%も分厚いタイタンの豊富な大気には、さまざまな有機分子が密集している。
それらは互いにくっついて集まっては、凍りついて地表に落下する。中には異常なほど滑らかな湖や川に落ちるものもあるだろう。
そうしたメタン湖に落ちた有機物はどうなるのか? すぐに沈んでしまうのか、それとも浮かぶのだろうか?
ユー氏らはそれ知るために、まずタイタンの有機物の氷塊がメタン湖で溶けるのかどうか検証してみた。
そして判明したのは、そこに落ちた氷塊はおそらく簡単には溶けないだろうということだ。なぜならメタン湖はすでに有機物がたっぷり含まれているからだ。
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衛星タイタンの風景を描いたアーティストのイメージ図。霞んだ大気、暗い砂丘、地球の湖や海に似た鏡のような湖や海が描かれている / image credit:NASA/JPL多孔質構造ならば湖に浮くことも可能 問題は、それが浮かぶのか?だ。しかも魔法の島が出現するには一瞬浮かぶ程度ではダメで、沈む前にしばらくは浮いてくれる必要がある。
タイタンの湖や川は主に液体のメタンとエタンだ。どちらも表面張力が弱いために、固体が浮きにくい。
それを裏付けるように、ユー氏らが考案したモデルは、ほとんどの固体がそこに浮かぶには、密度が高すぎることを示唆していた。
だがもしも、アニメのチーズのようにあなだらけの多孔質構造ならば、どうにかなるかもしれない。
有機物の氷塊が十分に大きく、あななどの割合もまた適切であれば、液体メタンはゆっくりとしか染み込まないので、しばらくは浮かんでくれるに違いない。
氷塊の1つ1つは小さすぎて、それだけでは浮かばない。だが、それが集まったものが岸のそばに落ちれば、ちょうど地球の氷河が崩落するように砕けて、湖を漂うかもしれない。
もしそうならば、それは魔法の島のように見えることだろう。
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赤外光で見たタイタンの海のひとつを照らす太陽光 / image credit: NASA / JPL-Caltech / University of Arizona / University of Idaho
この研究では、もう1つのタイタンの謎を解き明かしてくれるかもしれない。その湖や川は、波の高さがわずか数ミリしかない、異常に滑らかなものだ。
今回の研究によるならば、凍った固体が湖や川を層のようにおおうことで、異常なほどの滑らかさが生まれると考えられるそうだ。
References:Titan’s “magic islands” likely honeycombed hydrocarbon icebergs - AGU Newsroom / Titan's 'magic islands' are likely to be honeycombed hydrocarbon icebergs, finds study / written by hiroching / edited by / parumo
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